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山本直樹「レッド」1巻 上がり調子の時の左翼活動家は、落ち目になったときの左翼活動の攻撃性が内側に向けられた時の怖さをまだ知らない


1969年1月 安田講堂に1000名近い学生が立てこもり、東京大学入試が中止した。ここが学生運動のピークだったという。

この物語もその1969年からスタートする。つまり「もう学生運動が下り坂に入ったところから」だ。あえて上がり調子だった時のことを描かない。

とにかく読んでいてかなりしんどい作品だ。「赤狩り」の方は、途中まではしんどいが最終的に出口がある。しかしこちらの終着点は地獄しかない。体感的にはこちらの方が読み進めるのがしんどい。

数年かけて、メンバーがどんどん消耗していき、イライラして自暴自棄になり、そしてその攻撃性を内側に向けて仲間を殺したり、やけっぱちになって過激な行動を行ったりして大義を失っていく様を淡々と描き続けていく。

最終的には1972年2月にあさま山荘事件が起きることとなる。


この題材を淡々と描くというところが逆に怖い。

1巻~3巻の間はまだよかった。革命者連盟は落ち目とはいえ士気は高く毎日のようにイベントがあった。まるでレバナス民のようにお互い励まし合うだけの余裕がまだあった。 8巻とか「終章」とかになるにつれて、どんどん何も起きなくなり、士気が低下した中で、ただ状況への恨みだけが積み重なり、その攻撃性が仲間に向けて向かっていく。この状況が最も恐ろしいのだ。。。

今左翼活動をやってる人たちは全員これを読んで「なぜこの人たちはこうなったのか」「自分たちはこの人たちと同じ道をたどらない確信を持てるか
」あたりをちゃんと考えたほうが良いだろうと思う。

ちなみにこの手の人たちが一番勘違いしがちなこととして、「この活動にはいれば自分たちも弱者ではなく強者になれる」というものがある。これは大いなる勘違い。こうい活動に参加するということは「秩序」とか「基本的人権の保障」がないということを理解・覚悟した上でやろうね。
反体制の集団はまったく平等ではなく、恩恵は上層部の一部が独占し、それ以外の人は特に何も得られない。正義感を満たせる以外の報酬はまずない。そしてむしろ普通よりよほど階級主義的であり、下っ端はただの使い捨てのゴミみたいな存在であり、さんざん利用されたあげく足手まといになったら粛清される。下っ端の立ち位置はもとの社会に属してるよりもっとひどくなる。



というわけで、とにかく濃すぎる1巻からゆっくり読んでいく。

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