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【ネタバレ注意】ミステリと言う勿れに登場する犯人の感想1件目

未読の人が最初に知っておくべきことは、これはアフロでなくパーマだということです(いやみんな知ってる)

1件目の感想

100ページ程度で読み終わる導入編だが、最初から型がバッチリできあがっている。

・主人公は殺人事件の容疑をかけられて警察から取り調べを受けるのだが、ここはどうでもいい。大事なのはここからだ。

・主人公は取調べしている人の話を聞いていく中で、会話しながら警察一人ひとりの人柄を洗い出していく。そして、その中で少しずつ「アレ?この人ちょっとやばい人なのでは?」というのを浮かび上がらせていく。

1件目でいうとまず怪しい人がこのように浮かび上がってくる。

ただしこれはミスリード。あれこれ話が進む内に犯人が見つかり、犯人を問い詰めると「怪しいやつよりずっとやべーやつでした」というのがわかる。

という構成だ。

こうやって「久能整という変なやつがいる」というところからスタートして、「会話劇の中から登場人物のやばい人間性が浮かび上がってくる」というのがこの作品の王道パターンである。犯行方法の推理はメインではなく、「やべーやつを描くこと」がメインなのだ。「最初は普通に見えてた人の中に実は異常者が紛れていました」というゾワゾワっとする気持ち悪さがこの作品の醍醐味だ。

田村由美の作家性=人の被ってる仮面を剥がすのが作者の性癖になってるのは確定的に明らか


田村由美という作者は、この「やばい人間」を描くのがとても上手な人間である。この作者には明確に「人には多面性がある」という強い信念があると感じる。そして人の仮面を暴き、精神を裸にさせることが田村由美の性癖なのだろう。

BASARAは二人主人公制で、まさに二人の主人公はふたりとも己を偽っており、その二人が決定的な場面で仮面を剥がされるシーンがクライマックスとなっている。多分このシーン描いてる時の作者は心のなかで絶頂していたと思われる。他にも最初味方だと思ってたやつが変態サディストでしたとか、逆に余裕ぶってたやつが実はヘタレでしたとかのオンパレードである。

7SEEDSでも、一人ひとりが自分のアイデンティティや信念を丁寧に壊されていく姿を描く。アイデンティティが変わらない人物は作中でどんどん死亡させられるからその徹底ぶりがすごい。

そんな田村由美の性癖が最大限詰まった作品がこの「ミステリと言う勿れ」だ


今までは仮面を剥がした後、その人間が成長していく姿を描いていく必要があったから、面白いけれど話が冗長だった。

しかしミステリなら性癖部分だけを詰め込むことができる。人のやべーところを覗き見する下世話な快感だけを味わうことができるというわけだ

人間は、自分の身の回りに異常者がいるのを嫌うが、一方でネットの向こうやフィクションの中では異常者が大好きである。特に個性がない我々凡人はこれがないと生きていけないほどに異常者を求めている。

なぜなら異常者を見て、そいつを嫌ったり見下したり嘲笑したりすることで初めて自分が普通で良かったと安心できるからだ。下劣な精神性と言われればそうかも知れないが、それをフィクションで消費するのに何の問題があるだろうか。

そうやって毎日やべーやつが晒し者にされているのを見て喜んでる我々下劣なネット民にとって、この作品はそういう欲求をインスタントに、しかもネットよりも高いレベルで満たしてくれる逸品であるといえる。

更にいうとまともな人間を探偵役にしてしまうと、あまりにも悪趣味であることがバレるから、ツッコミどころ満載の変なやつを主人公にする周到なケアがなされている。至れり尽くせりというやつだ。

間抜けなオタクはその煙幕にまんまと引っかかってこの作者の性癖に気づかないし、極上のB級グルメを味わうこともできていない。大変にもったいないと言える。

というわけで、この作品を楽しむ時、久能整の方に視線誘導されている間抜けなオタクたちは、この作品が「負の性欲」とでもいうべき、人間が密かに持っている下劣な欲望をこれでもかと満たしてくれる性癖もりもりのマンガであることに早く気づくべきであろう。探偵役は探偵役で面白いが、一話単位で見るなら犯人の異常性こそを楽しむべきである。

ということで、ここからは犯人の話をしたいと思います。


といっても、この漫画は会話劇が面白い=やりとり全体を楽しむ作品なので、他人の感想とかよまずに、自分で買って読むことを強く推奨します。

楽しみ方さえ分かれば、自分で読んだほうが絶対面白いよ。

なんと、今なら4巻まで無料です!

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