『一庶民の感想』19 今がさびしいから

 失恋の傷も癒えた。過度に後ろ向きであることはなくなったが、通常運転の自分は基本的にネガティブだ。大きな恋がだめになった後、その傷をなんとか立て直す期間があって、それが終わればまた新しく、誰かを好きになるのだろうと思っていた。しかしどうやら違うらしい。

 30歳を過ぎてしまえば、ときめきはなくなる。それはそれで良いのだけれど、ああ、もうこの先恋なんて、誰かを好きになることなんてないんだろうな、という確信に近い諦観が生まれる。

 この先ずっと、一人で生きることに慣れなきゃな。そう思う。

 安心感も子供も愛も夢もどこか他人事で、忙しい仕事が終わったふとした隙間に、さびしさが流れ込む。昔の恋人を思い出し、今更愛しく感じる。

 今がさびしいから、微かでも恋人と触れ合った、愛を感じた瞬間がどうしようもなく愛おしい。

 戻れぬ日々を思い出して、音楽を聴く毎日だ。

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