『一庶民の感想』 12 青春は終わったんだ
ぼくは今、31歳だ。最近思うことがある、ぼくの青春は終わってしまったんだと。
31歳という年齢は絶妙だ。周りの友人たちは仕事が忙しくなり、家庭を持ったり、子どもができたりで、昔より疎遠になる。10代、20代をともに過ごしてきた友達たち。夜遅くまで夢を語り、女を語り、くだらない話で死ぬほど笑えた旧友たちとのあの日々。安い焼酎と安いウィスキー、ビール、発泡酒、煙草にパチンコ、スロット、野球と麻雀、民法の授業、大人の店、コンビニの喫煙所、安酒場とピッチャーに注がれたレモンサワー、漫画、アニメ、スマホのリズムゲーム、下世話な噂話と下ネタ、高円寺のダーツバー、向ヶ丘遊園の居酒屋、グラウンドの緑、ファールボール、宅飲み、3点ユニットバスの部屋、バイト先の不倫事情、初めての海外旅行、初めてのデート、ラブホテル、パンクロック、深夜のドライブ…。当時はクソ喰らえと思っていた出来事が、今ではとてつもなく懐かしい。思い出しては、泣きたいようなセンチメンタルにとらわれる。二度とは戻ってこないあの日々。
31歳になってぼくは、色々なものを失った。今のところ、新しいものが入ってくる予兆もない。昔とおんなじで相変わらず恋人もできないし、金もない。自分だけ昔の思い出の中に閉じ込められてしまったようだ。こんな感傷的な話ができる友達だって、今じゃなかなか会えない。
人生のステージの進み具合は一定じゃない。遅い早いもあるし、止まってしまうときもある。進みたくても進めないとき、進んでも進んでも同じところに戻ってしまうとき、誰しもきっとそんな時がある。進め、進めと祈っても、道よ開け、扉よ開けと叫んでも、全然ダメなときもある。話を聞いてくれる友達も恋人も家族も、周りにいないときだってある。そんなときぼくは、終わってしまった青春の思い出に縋ってしまう。
音楽が青春の思い出と感傷を呼び起こす。イヤホンから流れるandymoriの曲を聴きながら、ぼくは今日も耐え忍ぶ。終わってしまった青春を懐かしむことによって、旧友の顔を思い浮かべ、懐かしい日々を回想することによって、今生きていることを確かめる。
「これから先、ぼくはどうなるのだろう?このまま一人で、昔を懐かしんだまま死ぬのかな?」
そんな言葉が何度も何度も頭を巡る。青春時代に叶えると決めた夢も目標も、まだ胸の中にある。でもそれは、長い間風雨にさらされて、継続は力なりという格言が書かれたノートも、夢は必ず叶える!と力強く誓ったあの晩も、今ではくしゃくしゃになって濡れてしまった紙のように、ちょっと触れれば破れてしまいそうだ。
ぼくはこれからどうすればいいんだろう?
andymoriが、銀杏BOYZが、高橋優が、amazarashiが、青春時代に聴いたあの曲たちが、今もぼくの耳元で鳴っている。
ぼくの青春は終わったんだな、イヤホンを外すといつもそう思う。音楽だけが昔と変わらない音を立てている。
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