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渋く光る魅力あり【評価★★★★☆】

CD:「Rock’N’Roll Gypsies」 花田裕之(1995年/東芝EMI)
(2019年1月投稿のAmazon CDレビュー(削除済)を加筆修正)

安直な物言いで申し訳ないが、このアルバムは、とても、いい。

ぱっと見の派手さはないが、渋く光るいぶし銀のような魅力がある。磨かれすぎず、かといって黒く錆びてくすむがままにされるでもない。程よく手が入れられ、時を経るに従っていよいよ味が深まり、独特のヴィンテージ感が増していく。安くはないが、気取らない。肌馴染みのいい、こなれた感じの銀の装身具を想起させる。ジャケットフォトに写るごつい指輪がいい例かもしれない。

気取らない、とはいっても装身具は装身具、要するに飾りであり、何らかの用をなす実用品ではない。オスがメスを魅きつけるクジャクの羽根と同様に、自分を誇示する道具だったり、ある意味プライドそのものだったり、またはその象徴だったりする。

しかし、動物と違い、人間というのは不思議なもので、派手だから、きれいだから、大きいから、目立つから、といった理由からだけではなく、かえって地味だったり、わびさびていたり、渋かったりのゆえに、粋というか、美というか、魅力を感じることがあるように思う。

銀のユビワ、ちょっと古びたみたいなヤツ、カッコいい、とか、このアルバム、どこか手強い感じだけど実は渋味がすごくいい、とかいうのは、このケースかもしれない。指にからむそのシルバーの小片に、あるいは、この薄っぺらなプラスティックの円い板に、凝縮された矜持が、逆説的に確かな存在感をもって示されているのだ。ずっしりとした重みの、濃く密な鈍色(にびいろ)の光で、音で、真正面からもう逃げようがないほどストレートに。

何の役にも立たない、腹の足しにもならない、たかが飾りと侮るなかれ。クジャクのオスだって、命を張ってその羽根に自身の存在を賭けているのだから。人間だったら尚更だ。

続きはこちら→追記編・渋く光る魅力あり【評価★★★★☆】


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