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長い眠りののちに

CD:「Good Dreams」 The Roosterz(1984年/コロムビア)
(2018年発売のUltimate High Quality CD再発盤によせて)

以前どこかに書いたことかもしれないが、私自身、不義理なことにルースターズ解散(とりあえず1988年としておく)以降、音楽に対して隠遁生活というか、ほとんど縁のない暮らしを送っていたのであった。

ところが一昨年(2018年)ふと何かの拍子に、久々にちょっと立ち返ってみようかしらんと思い立ったタイミングが、偶然にもこのUHQCDによるルースターズの一連のアルバムの再販と重なった。「Good Dreams」はこのシリーズで真っ先に入手した3枚のうちの1枚。(利用した通販サイトでは3枚買うと若干の割引があった。)数えれば実に30年ぶり。その間こんなにもたくさんのベスト盤や再発盤、BOXセット、トリビュート盤が世に出ていたとは。ずいぶんと長い眠りから目覚めたかのような再聴となった。

さて、一番のお目当ては「Nürnberg」と「Hard Rain」。双方ともレコードで(あるいはカセットテープに落として)聴いていた頃、大好きな曲だったのだが、あらためて聴いても当時の印象がそれほど変わらないことにちょっとほっとした。(引き出しを片付けていたら、学生時代の憧れの先輩の昔の写真がふと出てきて、よく見てみると、当時お熱を上げていたほど格好よくも何ともなかった、みたいなことは免れたわけだ。)

「Nürnberg」は暴発しまくるドラムと、斬り込んでくるような派手なキーボードにしてヤラレる。いかがわしい裏通りのあやしげなナイトマーケットに足を踏み入れたような雰囲気がいい。

後者の「Hard Rain」は、何といっても雨の街を行く情景描写が素晴らしい。声が淡々と景色を描けば、弦は歌うように情の色を写し出す。時間を超える佳曲である。だが、かつてと今日とのHard Rainの頻度や程度の大きな変化には、やはり時の隔たりを感じる。

なお今回、意外にも「All Alone」(サンハウス「ふっと一息」)が深く心に残った。歳をとってこの日常に慣れきってしまったせいか、世の中の矛盾とか理想とかに対する思いが瑞々しく、大変眩しいものに感じられた。蝶のイメージもとてもいい。若い頃にはおそらくこんな感想は持ち得なかっただろう。後年、大江慎也がソロで英語バージョンを歌っていたように思うが(記憶違いだったら申し訳ない)、個人的には本盤の方を推す。

【Good Dreams】
1, ゴミ 2, Good Dreams 3, C.M.C. (Health-Mix) 4, Hard Rain 5, Drive All Night (Club-Mix)  6, Nürnberg~ニュールンベルグでささやいて~ 7, カレドニア(Re-Mix) 8, All Alone

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