数学

123456790:失われた8

 12345679という数は、12345679×9=111111111という性質で良く知られている。数字の並びに8がないことから、”missing 8”などとも呼ばれている。ここでは、何故8がないのかという一つの理由と、123456790等の他の性質を紹介する。

12345679

 12345679は、以下の計算で有名である。
12345679×9 = 111111111
 同様に、
12345679×18 = 222222222
12345679×27 = 333333333
12345679×36 = 444444444
12345679×45 = 555555555
12345679×54 = 666666666
12345679×63 = 777777777
12345679×72 = 888888888
12345679×81 = 999999999

 1,2,3,4,5,6,7,9と、8がないため、英語では”missing 8”等と呼ばれて有名である。ためしに8を入れてみると、
123456789×9 = 1111111101
となってしまう。「は、8だけじゃなくて0もないから(震え声)…」という意見もあろうが、12345679×81 = 999999999から分かるように、この計算の元ネタは次式である。

 1/81=0.012345679 012345679…
  ×9 = 1/9 = 0.111111111 111111111…

要するに、ないのは8だけだ。

なぜ8がないのか

 これについて考えてみよう。1/81は1/9 = 0.111…の1/9だ。少し式を変形してみると、

画像1

ここで、誰もが知っている級数

画像2

より、xに0.1を代入すると、

画像3

となる(8があることに注意)。

 だが実際に計算してみると、
 0.01
 0.002
 0.0003
 0.00004
 0.000005
 0.0000006
 0.00000007
 0.000000008
 0.0000000009
 0.00000000010
 0.000000000011
+ …
―――――――――
 0.012345679012…

と、8が消えてしまう。要するに、…789+1=…790となってしまうだけのことだ。つまり、8が悪いのではなく、繰り上りに負けた9が悪いのだ。

 無理やりな議論のようだが、この議論によって、新たに以下のことが予想できる。

・1/(9×9)=1/81だけでなく、1/(99×99)=1/9801でも同じようなことが起きるのではないか?

 正解だ。1/9801を計算してみると、以下のようになる。
1/9801
=0.00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 99 00 01 02 03 04 05 …

 これは「失われた98」と言えるだろう。

注)
1/(999×999)=1/998001
=0.000 001 002 003 004 005…994 995 996 997 999 000 001 002 003 004 005…
という、「失われた998」までは実際に計算して確かめた。

123456790の平方根

 類似した話題として、123456790の平方根は面白い値になるということが知られている。実際に計算してみると、

 √123456790
=11111.1111055555555541666666659722222217881944441406249997721…
となる。

 確かに同じ数が並ぶ、特徴的な値になっている。

何故同じ数が並ぶのか

 これを考えるために、0.012345679の平方根を計算してみよう。
 √0.012345679
= 0.111111111055555555541666666659722222217881944441406249997721…

 10000000000倍の違いなので、小数点が移動するだけであることに注意。さて、この0.012345679はどのような数かというと、上で述べたように殆ど1/81に近い数である。正確にいうと、1/81の小数点以下の循環部分を除いた数だ。つまり、(1/81)―(1/81×1/10000000000)である。

画像4

式を変形すると、

画像5

求めたいのはこの平方根であったから、

画像6

となる。

 ここで誰もが大好きな級数

画像7

より、xに1/10000000000を代入すると、求める値は
 0.11111111111111…
-0.0000000000055555555555555…
-0.0000000000000000000001388888888888888…
-0.000000000000000000000000000000006944444444444444…
-…
となり、同じ数字が並んだ数から別の数字が並んだ数を引くので、結果も数字が並ぶことになる。

またまた無理やりな議論のようだが、この議論によって、新たに以下のことが予想できる。

・123456790だけでなく、123456790123456790でも同じようなことが起き、より数字が並ぶるのではないか?

 正解、と言いたいがちょっと惜しい。0を加えなければいけない。
√1234567901234567900を計算してみると、以下のようになる。
 √1234567901234567900
=1111111111.111111110555555555555555555416666666666666666597222222222222222178819444444444444414062499999999999977213541666666666648763020833333333318786621093749999987877739…

0を付けなければいけないのが美しくないと感じるなら、0.012345679012345679を計算すればいいだろう。
 √0.012345679012345679
=0.1111111111111111110555555555555555555416666666666666666597222222222222222178819444444444444414062499999999999977213541666666666648763020833333333318786621093749999987877739…

 √0.012345679012345679012345679
=0.11111111111111111111111111105555555555555555555555555554166666666666666666666666665972222222222222222222222221788194444444444444444444444140624999999999999999999999772135416666666666666666666487630208333333333333333333187866210937499999999999999878777398003472222222222222119183010525173611111111111022122701009114583333333333255468474494086371527777777708897325727674696180555555494055151939392089843749999944649…

√0.012345679012345679012345679012345679
=0.11111111111111111111111111111111111105555555555555555555555555555555555554166666666666666666666666666666666665972222222222222222222222222222222221788194444444444444444444444444444444140624999999999999999999999999999999772135416666666666666666666666666666487630208333333333333333333333333333187866210937499999999999999999999999878777398003472222222222222222222222119183010525173611111111111111111111022122701009114583333333333333333333255468474494086371527777777777777777708897325727674696180555555555555555494055151939392089843749999999999999944649636745452880859374999999999999949838733300566673278808593749999999954264727421104907989501953124999999958076…

くらいまでは、暇つぶしに計算しても良いだろう。

(2020.2.22)

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