数学

1089 :ひっくり返る数

 1089は、1089×9=9801という、所謂「引っくり返る」性質で知られている。ここでは、1089や類似の性質を持つ数、並びに他の面白い性質について紹介する。

1089

 1089は、以下のように「引っくり返る」計算で有名である。
1089×9=9801
 では、他にこのような数はないか?と考えるのは当然であるが、掛ける数(今の場合は9)で場合分けすると、それほど苦労なく見つけることが出来る。4桁の数で探してみよう。

 9を掛ける場合:
abcd×9=dcba
aが2以上では、9を掛けた結果が5桁になってしまうので、a=1。d=9も明らか。よって、
1bc9×9=9cb1
bが2以上であっても9を掛けた結果が5桁になってしまうので、
10c9×9=9c01 または 11c9×9=9c11 のいずれかが正しい。ところで、右辺の数は当然9で割り切れなければならない(9を掛けた結果なので)。9で割り切れる数は、各桁の合計が9で割り切れる、という有名な性質から、これらは
1089×9=9801 または 1179×9=9711 となるが、実際に計算して正しいのは1089×9=9801だけである。
 8を掛ける場合:
abcd×8=dcba
やはりa=1でないと8を掛けた結果が5桁になってしまうので、
1bcd×8=dcb1
となるが、dがどんな数であっても8を掛けた結果の一の位が8にはなり得ないので、不可。
 7を掛ける場合:
やはりa=1でないと7を掛けた結果が5桁になってしまうので、
1bcd×7=dcb1
となるが、dに7を掛けた結果の一の位が1になるにはd=3の場合だけだが、掛けた結果の右辺のdは7以上でなければいけないので不可。

と続けていくと、2178×4=8712しかない。

 ところでよく見ると、2178は1089の2倍の数である。実際、1089の倍数を計算してみると、
1089×1=1089
1089×2=2178
1089×3=3267
1089×4=4356
1089×5=5445
1089×6=6534
1089×7=7623
1089×8=8712
1089×9=9801
と、×1と×9、×2と×8、×3と×7、×4と×6が見事に逆順になっていることが分かる。

5桁以上の場合は?

 より大きな数(5桁以上)でこのようなものはないだろうか。実は、以下のような数が知られている。
 1089の他、10989,109989,1099989,…等が同様の性質を持つ。
10989×1=10989 109989×1=109989 1099989×1=1099989
10989×2=21978 109989×2=219978 1099989×2=2199978
10989×3=32967 109989×3=329967 1099989×3=3299967
10989×4=43956 109989×4=439956 1099989×4=4399956
10989×5=54945 109989×5=549945 1099989×5=5499945
10989×6=65934 109989×6=659934 1099989×6=6599934
10989×7=76923 109989×7=769923 1099989×7=7699923
10989×8=87912 109989×8=879912 1099989×8=8799912
10989×9=98901 109989×9=989901 1099989×9=9899901 …etc.

10989のその他の性質

 さて、この1089の中に9が一つ入った10989は、多くの人が気が付いたように、1/91の小数の循環節である。
1/91=0.010989 010989 010989 …
 無限小数の循環節から巡回数を作れることは、別記事で述べた↓。

 即ち、n/91の無限小数の循環節から、巡回数と引っくり返る数の両方が得られることになる。例を挙げよう。91は7の倍数なので、
13/91(=1/7)=0.142857 142857 …
65/91(=5/7)=0.714285 714285 …
52/91(=4/7)=0.571428 571428 …
78/91(=6/7)=0.857142 857142 …
26/91(=2/7)=0.285714 285714 …
39/91(=3/7)=0.428571 428571 …
と、よくある循環節であるが、これを引っくり返した循環節を持つ小数がn/91の中に存在する。すなわち、
69/91=0.758241 758241 …
53/91=0.582417 582417 …
75/91=0.824175 824175 …
22/91=0.241758 241758 …
38/91=0.417582 417582 …
16/91=0.175824 175824 …

 これより、142857は5倍すると末尾の7が先頭に移動する(巡回する)が、69/13倍すると、引っくり返ることが分かる(あまりきりの良い数字ではないが)。
 n/91の全ての循環節について以上のことが成り立つが、循環節同士の巡回・引っくり返り(逆順)の関係を示したのが以下の図である。数字は循環節、数字の後ろの括弧内はその循環節の現れるn/91のnを示す(例えば「747252(68)」は、68/91=0.747252 747252 …であることを示している)。青矢印は循環の順序で矢印の向きは末尾が先頭に来る方向を示しており、赤両矢印は引っくり返った関係にあることを示している。
 これをみると、二つの循環節間で引っくり返った関係にある場合と、一つの循環節内で引っくり返った場合も含んでいる場合とがあることが分かる。

画像2

画像2

10989以外でこのような数があるか

 さて、1089,10989,109989,…から引っくり返る数が得られること、さらに10989の場合は循環する数にもなることを述べた。他に、10989のように引っくり返りと循環が両方起こるような数の仲間はないだろうか。これは、1089,10989,109989,…の中で、1/mの循環節になるものを探せば良い。

 結論から言うと、ある。それは、10989,1099989,109999989,…のように1089の間に9を奇数個挿入した数で、1/91,1/9091,1/909091,…の循環節に当たる。
 先程のような図を作るのはさすがに大変なので、例を挙げるに留める。
1/9091=0.0001099989 0001099989 …
5963/9091=0.6559234407 6559234407 …
6404/9091=0.7044329556 7044329556 …

1/909091=0.00000109999989 00000109999989 …
314159/909091=0.34557486544251 34557486544251 …
138587/909091=0.15244568475543 15244568475543 …

 1089や1/91はよく紹介されているが、両者の関係や、より大きな桁の類似した数の紹介は見かけないので、ここに纏めた。

(2020.3.10)




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