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知られざる地元の蒐集、研究家

いよいよ開催となります!
裏山文庫の企画展。
「掘り出した歴史-昔むかしの落としもの」
下記、是非ご一読ください。

◆展覧会の経緯
 このたび展示される資料は、飯島正氏のご子息である飯島健司(故)氏が大切に保管し、そのコレクションは令和2年に裏山文庫に寄贈して頂きました。これらのコレクションのうち玉川変電所から出土したものは、豊橋市文化財センター主催、豊橋市中央図書館「再発見!豊橋の遺跡」(2023年2/8~26)で、同じく変電所で技師として任務していた絹村良氏の資料と共に展示しています。裏山文庫の展示資料は飯島正氏が全国の遺跡で採集した資料となります。

◆主な展示品のあらまし
 日本各地の縄文時代~古墳時代にかけての土器、石器、北朝鮮出土の土器・石器、各地の化石がコレクションの中にあります。手元にある採集資料ですと一番古いものが昭和6年(1931)で、新しくは昭和20年ごろまであります。また、コレクションを記録した実測図、古い新聞のスクラップも展示します。

 日本各地で採集された資料は、飯島氏の豊橋赴任以前の戦前のものが多く見受けられます。石器に書かれた墨書きから日本だけでなく北朝鮮の平壌市内の美林駅から見つかった石器・土器があります。いわゆる大陸の磨製石斧、石のハンマーなどがあります。また、山梨県出土の縄文時代中期の土器、丁寧にハガキに糸で固定された石器類があります。

◆見どころ
 破片が中心ですが縄文時代の土器、石鏃などのほか、技師ならではの精密な実測図、地図、写真などその保管方法に飯島氏の几帳面な一面が窺い知ることができます。またこのコレクションの中核をなすのは、台紙に括りつけられた石器です。会社のハガキを利用したようで、遺跡別に丁寧に糸で括られ、遺跡名・出土場所名
・年月日を記しています。裏面には出土位置の略図があるものもあります。番号が付けられた一覧表も現存し、台紙にはその番号が記されています。博物館並みの驚くべき整理術です。
主な遺跡を紹介します。
 唐古遺跡(奈良県田原本町にある、日本を代表する弥生遺跡。唐古・鍵遺跡、国史跡)、日下貝塚(大阪府東大阪市。縄文時代後期・晩期の淡水産の貝塚。国史跡)、藤井寺市国府遺跡(旧石器から続く超有名な遺跡。国史跡。)、のほか現物は確認出来ませんが、朝日貝塚(富山県氷見市。縄文時代前期中期を中心に、中世にまで至る遺跡。国史跡。)、備中津雲貝塚(岡山県笠岡市。大正時代に縄文人骨が大量に発掘されたことで有名。国史跡。)、備前粒江貝塚(岡山県倉敷市。縄文時代中期。船元貝塚か縄文時代前期の磯の森貝塚。ともに考古学者には有名な遺跡)、遠江白羽村 星糞(御前崎市、星の糞遺跡。縄文時代前期。市史跡。)の出土品もあったようです。
 以上のように、現在では国史跡として保護され、採集など不可能な日本を代表する遺跡のものが含まれているのは驚きです。
 電気技師、ということもあり鉄道の工事にも赴いていたのでしょうか。駅工事の際に見つけたと思われる弥生時代の蛸壺、北朝鮮の美林の土器・石器は珍品と言えます。当時は、珍しいモノを集める好事家はいても、飯島氏のように記録、図化するという科学的な目線でモノを集める人はほとんどいなかったのではないでしょうか。特にモノを客観的に見る、という視点は技師ならではと思われます。飯島氏は有能な電気技師であるばかりか、地域の歴史を掘り起こした功績者でもあります。コレクションのひとつひとつは、ただの考古資料という価値だけでなく、資料全般に飯島氏の生きざまや、当時の世相が垣間見ることが出来ます。

 豊橋市中央図書館の玉川変電所の展示では、絹村氏の功績が称えられていますが、絹村氏ら発掘調査する以前に、考古学の知識を持った飯島氏が玉川変電所に赴任してきたことはその後の調査に大きな影響を与えた事でしょう。飯島氏の名は東三河の考古学の研究史に名を残されるべきだと思います。飯島氏はこれらの資料を手許におき、整理し、記録を残していました。この展示では、当時、飯島正氏が触れていたであろう状況を再現するため、蛍光灯の光では無く、自然光、電球色の暖かな調光で見て頂き一部は実際に手に触れることも可能です。また、古民家を改築した空間で見るコレクションの数々は、博物館のケースの中で見るものと違い、その背後の人間味あふれる暖かさを感じます。

 考古資料も見方、展示の仕方を変えれば、新しいモノとして輝きます。
 
協力 : 増山禎之 大谷孝世

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・企画展
「掘り出した歴史-昔むかしの落としもの」
・会期 2023年2月24日(金)25日(土)※2日間のみ
10:00-19:00
・入場無料
・会場 裏山文庫
https://fb.me/e/5XNdE6WVj

愛知県豊橋市南栄町字空池8-100 『呉服の山正山﨑』店舗裏。
(お車でお越しの際は呉服の山正山﨑駐車場をご利用ください。)
【最寄駅】豊橋鉄道渥美線「南栄駅」より徒歩3分
(東海道新幹線「JR豊橋駅」下車、豊橋鉄道渥美線に乗換)

・壊れやすい貴重な物がございますので小さなお子様連れの
 お客様はお子様から目をはなさないようお願い申し上げます。
・大変小さな会場ですので混雑状況によっては外でお待ち頂く
 場合がございます。予めご了承くださいませ。
・大人数でのご来場はお控えくださいませ。
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■ 飯島 正 氏(いいじままさし)
1893-1971
考古蒐集 研究家。山梨県山梨市出身。
 日本発送電株式会社(後に中部電力株式会社)の技師として務める傍ら趣味で全国各地、朝鮮の遺跡で発掘蒐集する。昭和20年(1945)7月に日本発送電株式会社玉川給電所(愛知県豊橋市)と変電所に所長として着任し、定年退職される昭和23年(1948)4月まで勤めました。

■豊橋市文化財センター企画展(豊橋市中央図書館にて開催)
「再発見!豊橋の遺跡 - 石巻の縄文遺跡・玉川変電所遺跡と採集資料」は
こちらをご覧ください。(2023年2/8~26)
http://www.toyohashi-bihaku.jp/?p=16300

■豊橋市文化財センター
豊橋市文化財センターは、豊橋市民共有の財産である有形・無形の文化財や埋蔵文化財などを調査・研究し、未来へと守り伝ていく、文化財保護の中核となる施設です。市内の発掘調査や、各種の文化財を紹介し、イベントやメディアを通じてさまざまな文化財情報を発信しています。
http://www.toyohashi-bihaku.jp/?page_id=222

■豊橋市図書館【中央図書館】
豊橋市図書館は、令和5年1月15日(日)に開館110周年を迎えました。
中央図書館は、昭和58年2月に開館し、閑静な住宅街の中に立地しており、緑に囲まれ、のんびり読書ができる環境が整っています。一般図書や児童図書の開架室や生きた情報を伝える情報発信コーナー、羽田八幡宮文庫をはじめとした郷土資料など利用者の調べものに役立つ資料を幅広く取り揃えています。

https://www.library.toyohashi.aichi.jp/


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