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「音色」という言葉の実体と楽器との相関関係

 音色という言葉は、慣れてしまえば当たり前のように頻繁に使う。だが、よく考えてみると相当に抽象的な言葉だ。分かるようで分からない言い回しではないか。そもそも音の色とは何なのか。私は学生の頃、音色という表現がどうもピンとこなくて苦手だった。頭の中でそれをどう解釈すれば良いのか、ぐるぐると思考が巡る。正直音と色の相関関係について感覚的に今一つしっくり来ず、そこで思考が停止してしまっていた。それに加え「音色を変化させてニュアンスを作る」という風に複合的に使われるともうお手上げだった。今ではこれほどまでに使っているのに。

 音の色とは何を言い表したものか。少なくとも音量の違いのような、物理的に分かり易い「大小」のコントラストについて言い表しているのではなく、むしろある意味「同じ」であるにもかかわらず違って感じられる、抽象的な何かの「種類」を指していると考えられる。

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