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【コメント回答・解説】転職時の企業型DC(企業型確定拠出年金)5つの誤解

退職金・企業年金コンサルティングチャンネルを運営しております大森祥弘です。さて、今日は最近、年末や年度末に近づいているためか転職する際の企業年金(特に企業型DC、企業型確定拠出年金)に関するYouTubeコメント、質問を頂くことが増えてきましたので『転職時の企業型DC(企業型確定拠出年金)5つの誤解』と題してお話しします。

YouTube動画はこちらからご覧頂けます

【コメント回答・解説】転職時の企業型DC(企業型確定拠出年金)5つの誤解

YouTubeのコメントっていろんなコメントをもらうんですが、「こういう質問が来るんだ」とYouTubeを開設してこのコラムを書いている時点で3年経ちますがいまだに新鮮です。

普段は企業向けに企業年金や退職金の世界で働いていますから、質問を頂くのは企業の担当者や管理職、経営者層になります。

個人の方から頂くコメント質問というのはこういうことがわからないのか〜確かに!と思うことが多いです。

おかげさまでYouTube視聴者の方も世代も広がり、増えてきました。
この動画で解説している内容はオーソドックスな質問というよりは視聴者さんから聞かれたことです。転職と企業年金というテーマでは別途、2023年版ということで動画を配信予定ですのでお楽しみに!

5つの誤解①転職先に転職前の前職の確定拠出年金の加入期間がバレる

視聴者さんから頂いた質問なのですが、なぜバレる・バレないを気にされているのかいまいちわかりませんでした。

企業型DCの前職での記録が現職の企業型DCと紐づけられていないのでバレません。企業型DCの口座は原則1つ。前職の資金は国民年金基金連合会というところが預かり金のような形で管理しています。

バレるとしたら厚生年金でしょうか。。

5つの誤解②転職先に前職の企業型確定拠出年金の手続きをしていなかったことがバレる

1つ前の質問と似ていますが「そもそも手続きしていなかったことがバレますか?」というものです。

バレません。

企業の担当者は企業型DCの加入期間しかわかりません(知り得ません)。
あなたにお知らせ(手紙)を出している前職での企業型DCの記録を管理している記録関連運営管理機関(JIS&TやNRK等)、宙に浮いている(企業型DCの口座に入金されていない)資金を預かっている国民年金基金連合会しか知り得ません。

5つの誤解③企業型確定拠出年金の手続きをしてもしなくても、将来の企業型DCの受取額に影響しない

現職で加入している企業型DCの残高が800万円だったとします。
前職の紐付けしていない企業型DCの残高が50万円だったとします。

紐付けができていない場合は前職分の50万円は将来、得ることができません。ですので、受取額ベースで考えれば現職での800万円がもらえれば良いという方は手続きしなくてもダメージはありません。

一方で、税引き後の手取りという発想だとちょっと事情は変わります。
企業型DCを一時金で将来受け取る場合には退職所得に該当します。

退職所得というのは性質上、このコラムを書いている2023年9月時点ではおおめにみて税金を取られることが(または取られてもしても税額が)少ないのです。

この”おおめにみてくれる額”を計算するためには企業型DCに加入していた期間や現職に入社〜退職の期間といった期間ベースで考えます。

(退職所得控除額は期間により変わります)。

この期間を計算するのに現職の勤続年数(企業型DCに加入していた年数)が18年だったとします。

前職の50万円相当の企業型DCの資金を得るのに前職で勤続2年だったとします。

退職所得控除の計算は現職の勤続年数である18年ベースではなく、20年ベースで計算されます。

つまり、控除額が大きければ退職所得として税率を乗じる所得が下がりますので税金(所得税、地方住民税)が少なく済みます。

受取額ベースでは気にしないという線引きもあり、ただし将来、税金天引き後の”手取り”は減少する可能性があるといったところでしょうか。

5つの誤解④企業型DCと金融機関が同じであれば、同じ運用商品がiDeCoや転職先の確定拠出年金にありそのまま運用を続けられる

結論、大人の事情で買い直す必要があります。

前職で企業型DCの掛金を元手に保有していた投資信託(運用商品)は99%、退職する際に売却、企業型DCの口座に現金としてプールされます(自分の銀行の普通口座に入金されるわけではないので念の為)。

そして、例えば前職の企業型DCは”青い銀行”と前職が契約、視聴者さんが”青い銀行”の企業型DCの加入者だった場合に転職先も”青い銀行”だったとします。

「同じ金融機関だから運用商品を売却せずに保有し続けられる(運用続けられる)」と思っても、できません。

また、「同じ金融機関だから転職先の企業型DCでも同じ運用商品がある」というわけでもありません。

最後に、私が推奨している企業型DCは転職先の企業型DCに移さずiDeCoに自分で入り企業型DCの資金を移換する(移換した資金はiDeCoの商品を買い付ける)でも前職で購入していた運用商品が必ずしもiDeCoにあるわけではありません。

大人の事情を少し話すと、企業型DCというのは”法人向けの金融商品”です。
”法人向けの金融商品”なので、企業型DCを企業が導入した時期によって運用商品が違っていたり、企業と契約している金融機関が採算が取れるように(儲かるように)商品構成が考えられています。

これは批判しているわけではなく、金融業として当たり前の話です。

超大企業に導入されている企業型確定拠出年金の運用商品と社員数が10人位の企業型DCに用意されている運用商品は違います。

ただし、悲観する必要はなくiDeCoの運用商品は企業型DCと比べると商品が良いように私には思えます。
これは”法人向け商品”ではなく、個人向けの金融サービスだからです。
マネタイズ、儲かる理屈が法人向けの商品の企業型DCとは違う理屈で成り立っているのです(端的に言えば、iDeCoをきっかけに新NISAも同じ金融機関で加入してもらいたいとかいった事情です)。

5つの誤解⑤確定拠出年金の手続きをしたら確定給付企業年金の手続きもセットで行われる

「前職では企業型DCに加え、確定給付企業年金にも加入していたようです。企業型DCの手続きをしても、確定給付企業年金も手続きを行うのでしょうか?」といった質問を頂くことあります。

結論、手続きは企業型DCと確定給付企業年金の両方する必要があります。
手続き書類には確定給付企業年金でなく、確定給付企業年金DBとか書かれている場合があります。略称なのですが、DBは確定給付企業年金、確定拠出年金はDCです。

具体的な手続きについては、実は最近、法改正があって個人の方に頭に入れて欲しいことが増えています。

また、年末までにはしっかりこしらえた動画を配信する予定ですのでお楽しみに。最後までご覧いただきありがとうございました。

*YouTubeコメント質問は他の方のためにもなりますのでぜひお寄せください。

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