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【PR】『牧野富太郎 草木を愛した博士のドラマ』製作舞台裏!

朝ドラ『らんまん』舞台はいよいよ東京へ



こんにちは。
朝ドラ『らんまん』が始まって1か月が経ちました。


高知編が終わり、いよいよ舞台は東京に移りますが、
高知編、とても充実していましたね!
序盤から飛ばし過ぎでは?」という気もしましたが、
最初でガッカリされるとその後が苦しくなるドラマの世界。
最初で飛ばすのは定石なのかもしれません。

牧野本、どうやって作った?

さて、『らんまん』に間に合わせる形で刊行したのが、この本。

『牧野富太郎 草木を愛した博士のドラマ』(光川康雄著)

著者の光川康雄先生は、びわこ学院大学短期大学部の先生。
もともと、私が前職時代に担当した『人物で見る日本の教育』(沖田行司先生編著)で、牧野富太郎について書いてくださっていた方です。
そんなわけで、今回の企画のタネは「教育の歴史」にあったので、名教館での学びや、当時の大学の制度などについてかなり充実した内容になっていると思います。

こんなに増えるとは…

2月末に本ができてきたわけですが、本を作っている時期は、既に出ている牧野本も少ない状況。
でも、後から色々出てくるだろうと予想できるわけです。
(結果、こんな感じで大量ラインナップ!)

https://twitter.com/maruzeninfo/status/1650352623709483009

https://twitter.com/KinoUmeda/status/1644171335965491200/photo/1

内容をどう差別化しよう?


で、どうしよう?
著者の光川先生と話し合い、

①既に出ている本とは差別化を図ろう
②これから出る本より先に売り出して、定番商品にしよう

という、至極当然のことを考えたわけですが、
じゃあ、それってどういうこと? となるわけで、
・登場人物のモデルとなる著名人を網羅しよう
・登場するであろうスポットを紹介しよう
・書店でフェア展開された時に目立つように、とにかくデザインはお洒落にしよう

ということを考えました。
(案の定、後から出てきた本で同じことを考えたものも多いです。もちろん、後から出る本の方が、初期に出た本にない要素も盛り込めるし、深く掘り下げることもできる。とは言え、販売期間が短くなる。結局、どこを狙うか、ということになるわけで、難しいところ)

そんな感じで、
第1章 牧野富太郎の生涯
第2章 牧野富太郎をとりまく人々
第3章 牧野富太郎の足跡案内
という3部構成にしました。

どうする富太郎?

それが決まって編集作業を進めていく中で、また出てくる悩みのポイント。
編集作業を進める中で、キャストが発表されていきます。
え?この人物を登場させるの? という人も出てきます。
特に頭を悩ませたのが、二人の女性でした。
(さすがに坂本龍馬は校了後に発表されたので、フォローしきれず…苦笑)

その1:母親をどう描く?

作中では広末涼子さんが演じられた母親役。
『牧野富太郎自叙伝』などを読めばわかるように、肉親で一番大きな影響を残したのは、祖父の浪子。
こちらは松坂慶子さんが存在感を示されていましたが、母親については、創作的な要素が強くなることが予想されました。
仕方ないので、わかる範囲の記述にとどめ、後はtwitterなどでフォローすることにしました(というわけで、編集担当の私はtwitter利用を本格化する羽目になったのですが笑)。

その2:従妹?姉?従姉!

これは難問!
歴史上、牧野富太郎は一人っ子。姉はいないかわりに、従妹はいた。
しかし、その従妹と婚姻関係にあったという。
でも、ドラマのヒロインは東京で結婚する寿衛がモデルの西村寿恵子。
そこに佐川で結婚したという従妹を持ってくると朝ドラじゃなくて昼ドラになってしまう…。
恐らく、ドラマとして成立させるために、ここは触れずに流す。
そのために姉がいたという設定にしたのだろう。
そう読んでいました。
これは、私だけではなく、多くの出版関係者がそう思っていたはず。

というわけで、恐らくスルーされるだろうけど、ちょっと裏話的にこういうこともあったよ、ということをさらっと注記的に触れるだけにしました。

…が、実際のドラマを観てびっくり!
姉ではなく、従姉! しかも、夫婦になれと?

https://twitter.com/asadora_nhk/status/1652089813565095946

こうもってきたか! 見事なプロットに唸りました。
(よくよく見ると、母親が存命中、綾が実の娘でないことを少し匂わせていました)
しかも、断り方もまた見事!ストーリーにブレがありません。
本の中ではあまり取り上げることができませんでしたが、それでも触れておいて正解でした。
史実を誠実に物語の素材として扱い、ドラマの形に落とし込もうという姿勢に共感した人も多いのではないでしょうか。

その3:「富太郎」と「万太郎」の違い

最後の一点は、牧野富太郎という「天才」を朝ドラで扱うという難しさです。

実際、ドラマをご覧になれば感じると思いますが、万太郎は暴走するようでいて、家族や竹雄のことはしっかり見ていて、竹雄が綾に寄せる思いにちゃんと気づいています。
そして、色々悩みつつ、決断を下している。

そもそもドラマは、人間同士の関係を描くものでもあるので、悩まず、決めたことに一直線に突っ走れる「天才」とはそりが合わない可能性も高い。
実際、牧野富太郎は味方も多いが、敵もかなり作ってしまうタイプだったようなので、そこをどう描くのか? あまりにもエキセントリックに描いてしまうと読者が反発してしまうのではないか。

朝井まかてさんの労作『ボタニカ』は、そうした面まで誠実に描いていて、今出ている牧野本の中でも金字塔ともいうべき一冊ですが、牧野を聖人君子として描くのではなく、没入するあまり周囲の人を振り回してしまう様子も描いています。

https://bunshun.jp/articles/-/52279?fbclid=IwAR20LIO5X5tRFQd0oGRHzW-fJHN2QXfFo-k3GwZzZDvPLQYBwBW9h5sTe6o

が、今回の企画は紙幅の都合もあり、そこまで詳細に取り上げることはできない。少ない分量であっても全体像を把握できて、時代の空気感を伝えられる一冊にしたい、そしてドラマを楽しむ一助にしてほしい。そんなことを考えました。

結果、第1章の生涯の描き方の方針として、牧野富太郎を応援してくれた人たちとの関りを軸にすることを決め、人々の支えの中で偉業を成し遂げたという形で執筆していただくことにしました。
同じ一代記であっても、「強い意志をもって自分が主体的に動いて成し遂げた」側面を強調するか、「人々の応援があって成功した」側面を強調するかで、見え方は大分変わってきます。
大河ドラマであったならば前者を強調するのでもよかったと思いますが、心理描写が多くなるであろう朝ドラの場合、後者のスタイルの方が合うのではないか、と考えたことも大きな理由です。

是非ご一読を!

そんなことを考えながら、編集した本です。
もちろん書いていただいたのは著者の光川先生なのですが、原稿を読んだり、進行管理をしながら色々考え、悩んだりした結果が、この本です。本当に、色々注文をつけながらだったので、光川先生にも多大なご負担をおかけしてしまったと思います。
それにもかかわらず、ハードなスケジュールに応えてくださった先生には感謝しかありません。

たかが176ページ、されど176ページ。
楽しんでいただければ嬉しいです。
そして、これからの『らんまん』の展開、ますます楽しみですね!





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