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これからも永遠に生き続けるEmoTrapの先駆者|Lil Peep 【原稿】

2017年11/15にLil Peepが亡くなってから、2年が経ちました。今思い返すと、この2年間でHIPHOPは大きく変わったと思います。その移り変わりには、常に無きLil Peepの姿が付いて回っていたと感じます。今回リスペクトを込めて、彼の短すぎる壮絶な人生を振り返ります。

R.I.P Lil Peep

1996年11月1日、グスタフ・イラジャ・アールはペンシルベニア州で生まれ、ニューヨークのロングアイランドで育ちました。ロングアイランドはNYの中心地であるマンハッタンから、東に伸びている場所です。Eric B & RakimやPublic Enermy、Busta Rhymesなど、HIPHOPの歴史を語る上で欠かせないアーティストが生まれた地でもあります。ただLil Peepはどちらかというとそういったブラックカルチャーとは離れた家庭で育ちました。両親は2人ともハーバード大学を卒業しており、彼自身もまた勉強はできる方であったと語られています。ただ彼の精神は安定することがありませんでした。

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両親の関係が良くないことで、幼かったLil Peepにネガディブな感情を植えつけます。Long Islandに引っ越したことで、社会に溶け込むことがより難しくなったそう。14歳の時に両親が離婚をすると、彼の内気な性格がさらに内向的になります。天から授かった能力もあり学校の成績はよかったものの、ほとんど出席することなく中退を決断します。

それから卒業資格を取るためにオンラインの授業を受けていくことになるのですが、その頃から音楽を作ることに熱中していきます。SoundcloudやYoutubeに楽曲をアップロードし続け、17歳になったときにLong Islandのしがらみから抜け出すために、東海岸のNYから正反対の西海岸に位置するLos Angelesに引っ越すことを決めます。

そしてこの頃からLilPeepというステージネームを名乗り始めます。SeshhollowwaterboysやiLoveMakonnenといったアンダーグランドHIPHOPに影響を受けていたことで、曲調も歌詞もダークなサウンドでした。

NYでは全く社交的ではなかったのですが、ロサンゼルスでは積極的にアーティストと交流を図るようになっていきます。中でも際立っていた活動は、プロデューサーのJGRXXN(ジェイグリーン)を中心に立ち上げたSchemaposseというクルーです。Lil Peep、Ghostemane、Craig Xenなど、アンダーグラウンドのアーティストを中心に、お互いの初期キャリアを支え合いました。

個人としても、2015年に「Lil Peep Part One」をリリース。初週で4000回再生を達成し、大ヒットとまでは言わずとも、確かなファンベースがつき始めます。時期を開けずに、リリースされた「Feelz」と「Live Forever」も、少しずつではありますが徐々に知名度が上がってきました。

YoutubeやSoundcloudで積極的に活動を続けていると、いくつかの曲が脚光を浴びるようになります。その中でも、女の子との関係が複雑にこじれていく様子を切なく表現した「Star Shopping」は、アンダーグラウンドでは絶大的な人気を誇るようになりました。続くシングルのBeamer Boyもヒットを記録。Schemaposseともクルーとしての活動の幅を広げていき、アリゾナのTucson(トゥーソン)にて初ライブも成功させます。

ただ2016年に入ると少しずつ環境が変わっていくようになります。上半期はロサンゼルスを中心に活動する音楽メディア「No Jumper Podcast」にも、クルーで出演するなど、好調のように見えましたが、インタビューの数週間後にSchemaposseの正式な解散を発表。このことにメンバーはほとんど触れていないため、真相はいまだにわかっていません。インタビュー内でも、JGRXXNの話を、Lil Peepが冷笑しているように見えるシーンがいくつもあり、良好な別れではないという意見も多いようです。Ghostemaneも意味深な「.」というコメントだけ残しています。

それからGothboicliqueというクルーに入ることになったPeep。絡むメンツも変わり、少し方向性も変わっていきます。今まではサウンドクラウド中心に曲をドロップしていましたが、それに加えYoutubeでのリリースも精力的に行うようになります。Lil Tracy(当時はYung Bruhという名前)ともこの頃から、友達としてもアーティストとしても良好な関係を築いていきます。

お金がなくボロボロのマイクでレコーディングしたという『Crybaby』は、内省的でダークなサウンドとともに、音楽性を確立していきます。右眉の上に「Crybaby」とタトゥーを彫っていますが、これは感謝の気持ちを忘れないように入れたと、GQ Magazineで話しています。この時のLil Peepの精神状態はかなり安定しており、その時の気持ちを忘れないように彫ったものだと思われます。

そして2016年の後半にリリースされた『Hellboy』は、SoundcloudとYoutubeで再生回数が爆発的します。彼が経験した苦しみや憂鬱、中毒を、カートコベインと重ねる様子は、多くの人の心に響きました。闇から生まれた内気な少年は、いつしか同じ境遇の人に光を当てる存在になっていたのです。

2017年に入ると、商業的にも成功をつかむようになります。ロシアから強い影響を受けたBenz TruckのMVがリリースされると大きな反響を得ます。実際にお金を稼いでいることをラップしつつ、これまで通り変わらないLil Peepの姿のバランスは、多くの人を魅了し、一種のカルト的な巨大なコミュニティも作り上げます。

そうして今までにない注目度の中からリリースされたデビューアルバムの「Come Over When You’re Sober」は、見事Billboard 200にもチャートインし、数字的な成功も収めます。

ただそんなLil Peepの快進撃は突然終わりを見せました。フェンタニルとザナックスを同日に摂取したことが原因で、オーバードーズを引き起こし、21歳という若さでこの世を去ります。奇しくもSchemaposseが初ライブを行ったTucsonで起きた事故でした。

Wikipediaの閲覧数を見れば彼の死が与えた大きさを少し感じることができるかもしれません。没前の48時間の平均閲覧数は、3000アクセス弱ほどでしたが、亡くなった後の48時間は、124万回アクセス越えと、およそ423万倍になっています。

ラップメタルやエモラップなど、Lil Peepらが作り上げてきた音楽は、どのジャンルに存在しているものでもなく、各サイトがこぞって彼の音楽に名前をつけていました。それだけ期待されていたということでもあります。ただ悲しいことに、Lil Peepの死が一つのムーブメントを作り出すきっかけになってしまったのもまた一つ事実です。

Juice WRLDは直接的な関わりはないものの、エモラップを引き継ぎ、Lil Peepを曲の中でも追悼。Roddy RicchはDie Youngで、早くにこの世を去っていくアーティストを嘆きました。

2018年は、実際にドラッグをやっているやっていないに関わらず、日々のディプレッションをドラッグで慰めるユーザー目線の楽曲がエモラップとして流行していきました。

よくも悪くもPeepを中心に作り上げられたこの音楽は、大衆化してしまいました。Peep自身もドラッグユーザーでありながら、ファンに対してそれを進めることは決してしなかったのです。ただ、多くの若いラッパーは有名になるために、ドラッグ使用を歌うスタイルを定着させ、逆転現象としてトレンドに反映されてしまいました。

トレンドとは時に残酷な結果であるかもしれません。今なお悲しみと戦っている人たちは、Peepの音楽を求めて、Soundcloudに潜っていることでしょう。

ここからは、XXXTentacionとPeepのコラボ作、Falling Downについて話したいと思います。


この曲は2018年の9/19にシングル曲としてYouTubeにアップロードされました。ほとんどの方はご存知だと思いますが、この時にはすでにXXXTentacionも無くなっており、二人ともこの世をさっているラッパー同士のコラボレーション作品となっています。同じ系統の退廃的なサウンドの曲が多く存在し、世界中に熱狂的なファンを持つ偉大な二人のコラボはリリースされる前からSNSを中心にファンの間で大きな話題となっていました。皆さんの中でも新しい記憶として心に残ってることでしょう。

しかし、リリースが待ち望まれている一方、この曲がリリースされることへの疑問の声も少なからずありました。去年の11月にリリースされたPeepの遺作、Come Over When You Sober2のラインナップが発表された時、この曲はリード曲として収録されています。

Peepの死後、X側の熱烈な意向によりおそらくピープの意向に沿わない形で制作されリリースされてしまった曲が「Falling Down」なのです。

二人のファンとして僕自身とても複雑な心境になりますが、実は生前、PeepとXの関係は良好とは言えませんでした。
というのもPeepは真相は未だはっきりとわかっていませんが、Xが行った女性への暴行事件を非難しています。Twitterでは、「(Xの盟友である)Ski Mask the Slump Godが俺のことをFaggotって言ってきた」、と自身を差別単語でディスられたとツイートしています。

ファンの間でもこのコラボはPeepの意向ではないのでリリースするべきではないとの声が多く上がっていました。そんな中リリースされたこの曲ですが、ファンの意見を無視してもリリースできる理由は別にありました。それは死後のピープの楽曲の保有者がPeepのプロジェクトチームではなく、コロンビアレコーズが保有だったからです。

このリリースを受け、Gothboicliqueは"trash" and "fuck you @columbiarecords.”とツイートしていたり、協力者の一人ウィッカフェイズは画家のゴヤの絵画をアーティストとレーベルの関係に見立て皮肉を込めた投稿していました。

この作品には今言ったような複雑な事情があルコとは確かですが、それと同時に二人の作品に救われている人々が世界中にいること間違いありません、お二人のご冥福をお祈りいたします。


それでは今日はこの辺で、WafflingTVでした。

皆さん、Youtubeチャンネル登録お願いします。てかしなくてもいいから見て! 見なくてもいいから、Lil Peep布教するときに使って! お願いします!

written by Yoshi & Yomoya

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