アメリカで大流行する音楽アプリTriller|アーティストとユーザーが繋がるためには
TikTokの勢いがすごいことになってます。毎月のように新しいスターが誕生しては、懐かしの名曲が再バズしたりしています。最近はYoung ThugとFutureの「Relationship」の勢いが半端じゃないですね。
TikTok見ていると、アメリカを飛び越え日本でもバズってるのがわかるように、アプリを通して世界中に広がっていってるのが、しつこいくらいに伝わってきます。2020年以降、世界の共通言語はダンスなんじゃないかってくらいです。
そしてアメリカでは、もうすでに新しい類似アプリが力をつけてきています。Trillerです。以前自分もTikTokとの対比をnoteにて執筆しましたので、そちらもご覧ください。
自分が観察するにTikTokとTrillerでは差別化が進んでおり、それぞれの良さが出始めてきています。ただお互い共通しているのは、いい音楽を発見する上で非常に有効なツールになってきているという点です。
個人的にもTikTok経由でいい感じの曲知ることができたり、フォローする人次第では、世界中のトレンドもいち早くチェックできるのでお得してます。
TikTokについて書かれている文は多くあるので、今回はTrillerに絞って内容を探っていきたいと思います。私のnote史上初のセルフ質問形式です。
Trillerってどんなアプリ?
まず簡単にTrillerについて簡単に説明です。
ユーザーがそれぞれ、自分オリジナルのショートビデオを作れるアプリです。まずは楽曲を選んで、Vlogやリップシンク、ダンス動画などを投稿できます。長さは15秒が基本で、そこからそれぞれ編集する形です。Mariah CareyやChance The Rapperが投稿したことでも話題になりましたね。
基本的にHIPHOPに関する動画が多く、特に海外のトレンドを追ってる人なら何度か目に入ることもあったかな、と思います。
上リンクのようなダンス動画が全体通してみると多いですね。右下にTrillerのロゴと、ユーザー名が乗ってるのが特徴です。SNSでラッパーをフォローしてると、インスタやツイッターなど様々なSNSで見るはずです。
TikTokのようなプラットフォームではありますが、多くのアーティストはそこを通して、他のSNSにアップしています。その動画の作りから、自分は簡易MVって呼ぶべきかなーなんて思ったり。
Trillerの毎月ユーザー数は2650万。TikTokの毎月ユーザー数8億、2019年Q3のアプリダウンロード数世界2位と比べると足元にも及ばないように見えてしまいますが、それでも多くのアーティストが併用して利用する理由があるのです。
どうやって動画撮るの?
めちゃくちゃ簡単です。
① 動画作成ボタンを押して、最初に音源を選ぶ
② ボタンを押すと321のカウントが始まり、てきとうに踊る
③ 何回か②を繰り返す
④ シャッフルボタンを押すと勝手に編集されMV風にこれまでとった動画が分割される
だけです(詳しくはオフィシャルから)。TikTokと違うのは、最初に音源を選ぶのと、シャッフル機能、あとはフィルターがそこまで多くないことでしょうか。TikTokに比べると比較的簡単です。ただチャレンジのバリエーション、ある程度クオリティーの高いものを製作する場合などについては、TikTokの方が優れていますね。
逆にこの簡単さが、多くのラッパーが使用している理由でもあると思います。未発表曲などもアップすることもできるので、お金出してトレイラー作らなくても5分でTrillerやった方が楽ってわけです。極論ですが。
フィルターだったり文字入れたりもできるので、少しいじっただけで割とクオリティーが上がったりします。もちろん保存も簡単なので、ここまで一瞬でSNSで回るのです。
アプリの中はどんな感じ?
動画を作成する際も音楽を最初に選ぶと書いた通り、音楽ベースのアプリです。それに合わせて、音楽を聴いてもらうような誘導も多い気がします。
まずアプリを開いたら🔎をタッチしてみましょう。その時のオススメチャレンジが大量に出てきます。
こちらがその画面。LeaderBoardから左に並ぶのが、主にジャンル。今の時期コロナが最初にきていますが、DanceやComedyなど様々なものが並びます。ちなみに動画投稿する際も、このジャンル分けはマストにやらなければなりません。(正直そんなに関係ない)
そしてその下のTrendingが、今流行ってる(これから流行る)チャレンジのハッシュタグ。有名アーティストだったり、バイラル中のアーティストだったり、一種ディグの場としても活用できます。今回はYoungboy Never Broke Againの#dropemchallenge が乗ってたので見てみましょう。
Demoをクリックするとこのチャレンジがどんななのかわかるようになってます。そしてその下をスクロールすると、大量にハッシュタグの動画が現れる仕組みになっています。いい感じだったら、JOINをクリックしてすぐ動画が作れます。
Trendingは結構使えるので、バズとか興味ある方はこっから見るといいかもです。TikTokと平行してバズってる時も多々あるので、どっちも見ながらって方法が一番バランスが取れてますかね。
誰がやってるの?
多くのお金をかけて派手なプロモーションをしなくても、正しい場所に正しくアプローチをすれば流行が生まれる、というのが1つ2020年の基準となる考えでもあります。
では、Trillerはどのような場所なの? といった話になりますが、端的に言うと、HIPHOPのファンが多い場所です。というのもTrillerが積極的にHIPHOPアーティストをピックアップしていった結果でしょう。
パッとみただけでも、TygaやThe Weeknd、Wiz Khalifa、NBA Youngboy、Lil Baby、DaBabyら、多くの著名人が利用しています。1つの動画だけで、1000万再生を超えるものも多数存在しています。そしてこれらはTwitterやInstagramを通しても拡散されているため、相当な数の人が目にしていることになるでしょう。チャレンジも発生すると、恐ろしい数になります。
またこれらのバイラルは一度火がつくと、TikTokにも飛び火する傾向があります。先ほどユーザー数を出した通り、TikTokの熱量は半端じゃないです。
Lil Babyの場合は、Woahの先行リリースをTrillerにて5回に渡って行い、それぞれTwitter、Instagramでも公開。#WoahChallengeなるものも発生しました。Billboard Hot100でも最高位15位とテンポの良い上がり方であり、成功であったと言えます。
TikTokでやっても一緒じゃない?
これは最初に言った通り、両アプリで差別化が進んでいるので、何をやりたいかによると思います。中高生向けに、パーティーソングを広めたいならTikTokだし、HipHop好きな人を沸かせれるような曲ができたらTrillerで動画を作るべきでしょう。
ただ、ショートビデオをアップする系のアプリは、初期の頃はマネタイズに関して問題があったことで、ある種敵対心を持っている層が現れたのも事実です。ただ現在はその部分もクリアになり、TikTokのおかげでスターの仲間入りを果たしたアーティストも多く誕生しました。一度は離れた層も、最近はかなり戻ってきてますね。ここ最近のCOVID-19感染拡大で、TikTokのダウンロードも爆発的に伸びたそうです。
そうして戻ってきた人たちが、音楽ジャンルごとにプラットフォームが別れてきているのが最近の傾向です。
それではアプリごとにどのように差別化を進めているのかについて、Trillerの類似アプリであるDubsmashの成功例を紹介します。
Dubsmashのカムバックと、Calboyの成功例
DubsmashもTikTok、Trillerと似たようなショートビデオを投稿するプラットフォームです。Vineが流行ってた時期らへんに登場したものですね。
ただ順風満帆な経営といったわけではありません。2017年はDubsmashにとってかなり厳しい年でした。かつてはRihannaが「Work」のプロモーションをDubsmashにて行うなど、かつては多くのセレブが利用していたアプリですが、Vineの終了とともに減り続けるユーザーを止めることはできませんでした。
(via: TechCrunch)
スノボだったら上級者コース間違いなしの、急速な価値減少が発生です。Instagramが力を付けてきたり、Twitterで動画投稿できるようになったりと、大きなアプリに人がごっそり持ってかれていった時期と重なりますね(Instagramは2016から2018にかけてアクティブユーザーを倍にしています)。ただそのまま終わらなかったのがDubsmashでした。リストラ&資金集めを駆使し再スタートを図り、2020年にかけて見事なカムバックを遂げます。
さぁここで最初の言葉を思いかえしましょう。「正しい場所に正しくアプローチをすれば流行が生まれる」についてです。
まずは場所についてですが、Dubsmashはユーザー層を分析すると、アフリカンアメリカンが大半だということがわかりました。そこで、これまでベルリンを基準に活動していたオフィスを、NYはブルックリンに移転することを決断。正しい場所に物理的にアプローチする方法をまず実行しました。
そしてアプローチ方法ですが、Dubsmashを利用している人たちは、他のSNSに対して少し排他的な考えを持っていました。HIPHOPコミュニティー自体、SNSでフェイクの自慢ばかりする人たちに嫌悪感を見せていまして、アフリカンアメリカンのユーザーたちも同じ意見であったようです。
Dubsmashはそうしためんどくささは排除し、気軽に誰でも動画を出せるようなアプリ作りを目指していきました。過度な編集や画像加工が行われていない、ナチュラルでFunnyな投稿が多いです。その結果が、2018年以降の急成長に繋がっています。そして同タイミングで素晴らしいチャレンジにも恵まれました。
先ほどのDubsmashのグラフをご覧ください。年末に急激に数字が伸びているのがわかると思います。そしてそのタイミングというのは、以下のグラフとも重なっています。
(Google Trendから作成)
これはGoogle Trendにて「Envy Me」の検索数増減を、表したグラフです。なぜこの言葉がDubsmashの跳ねた時期に重なるのでしょうか?
これは単純に「Envy Me」という曲がDubsmashで爆発的なヒットを起こしたからです。事の流れを簡単に説明します。
シカゴという音楽シーンは、2013年にChief Keefというラッパーが登場してから一気に世界中から音楽シーンとして注目を浴びた土地です。
彼の成功もあり、当時は多くの若いラッパーがフックアップされていきました。それから何年か経った今でも、地位を確立したラッパーはシーンで大人気です。
そうしてヒットしたラッパーたちはさらに若い層をフックアップし、今なおシカゴに注目を集め続けています。
そんなシカゴ出身の人気ラッパーの1人であるG Herboは、同じくシカゴ出身のニューカマーであるCalboyの「Envy Me」という楽曲をInstagramで紹介します。
するとインフルエンサーであるNayahがその投稿から、広がった「Envy Me」を利用したダンスを作り出し、以下の動画を投稿しました。
この投稿が全ての始まりです。歌詞とリンクしたダンス、コミカルさや難易度など何もかもちょうどいいバランスを保っており、ものすごいバズを起こしました。
Dubsmashを利用した投稿であったため、Dubsmashのユーザーはこのビッグウェーブに乗りに乗りまくりました。それから少し間を置いてTikTok、Instagram、Twitterなどで爆発していきました。
もしこれがDubsmashではなく、TikTokで作られたものがインスタにあげられてたとしたら、ここまでのヒットになっていなかったかもです。現在MVは1.7億回再生されています。
正しい場所に正しいアプローチの成功例とみて間違いないでしょう。
これからのTrillerはどうなっていくの?
ユーザー数ではTikTokには及びませんが、Trillerが我々の知らないところでいろいろと準備をしています。
グラミー賞を主催するレコーディングアカデミーとパートナーシップ契約を結び、キックオフパーティーを開いたりしてます。French MontanaやAlly Brooke, Tinashe, Gashi, MozzyといったHIPHOPスターらが招待されてますね。
Trillerは公式で、@grammys というアカウントも作り、計43個のグラミー賞に関する動画を投稿。1番再生回数の多かった動画は、Billie EilishとLizzoがバックステージで話すもので、Triller上だけで280万回再生されています。
そしてTrillerはこのグラミーとの契約で、重要なポイントを3つ話しています。それは、❶エクスクルーシブなアーティストのコンテンツ、❷ユニークなステージ裏風景、そして❸ハッシュタグチャレンジの3つです。
❶のエクスクルーシブなコンテンツに関しては、これまで通りです。アーティストの動画を、Trillerで独占した形で投稿することです。❸も同じです。チャレンジというものを流行らせるには、何か一目でわかる共通したものが必要です。Instagramでも、Twitterでもそのプラットフォームでもそれは変わらず、ハッシュタグというわけです。
❷については少し説明をさせていただきたいです。
ユニークなステージ裏風景というのは、グラミー賞の時は、シンプルにステージ裏の撮影という意味でした。現にBillieとLizzoの動画がバズっていたので、効果がある動画の系統であることは間違いないです。ただこれをグラミー以外に置き換えた時は、MVの撮影裏としても解釈できると思います。
ここではアトランタ出身のラッパー、Lil Yachtyを参考にしてみましょう。先日「Oprah's Bank Account ft. Drake & DaBaby」という新曲をドロップ。MVはストーリー仕立ての凝った作品になっていました。
Lil Yachty自身も大胆なメイクを施しており、その撮影風景は、ファンであれば誰しも興味があるものです。Trillerではその撮影裏をちょこっとお見せしています。DrakeやDaBabyといった大物たちが超カジュアルに登場するのは興奮ものです(少なくとも自分は興奮しました)。もちろんバックには新曲を流しながらです。この超レアな動画はTwitterでもバズっていました。
ユーザーとの結びつきを強くするにあたって、このように簡単に投稿できるのは素晴らしいことです。これから人気のジャンルになっていくでしょう。
デメリットはないの?
デメリットといっては言い過ぎですが、システム的にこれから問題になりそうな点も見つかります。それはマネタイズが関係しています。
Trillerではバズった投稿をした人に対して、金銭的なインセンティブを与えることを公表しています。ユーザーが刺激され、活発になることですし、自分もいいことだと思いました。フランスに住む女の子が、これを利用して奨学金を返済したという話も聞いたので、プラスな方向で働けばポジティブなエナジーになります。
ただそうした影響で、少し過激化しているようなチャレンジも見かけます。ここで動画は上げませんが、尻、尻、尻、尻な投稿を続ける方が多くなってきた印象を受けます。コロナの影響で、ストリップクラブが経営難になっているニュースも見たので、そうした影響も考えられますが、これ以上進むとよくないんじゃないかなと思ったりもします。少しのきっかけを元にサイクルはぶっ壊れたりするものなので、何かしら対策を練らないとユーザー自体が離れていきそうです。
Trillerをやってみようか
ちなみに日本でやってる人はほとんどいません。この前日本のデイリーランキング見たのですが、12いいねでSwae Leeの動画が1位でした。まじでこんなもんです。1位になりたい方は友達とやってみてください。すぐ取れます。
逆にアメリカのHIPHOPリスナーに楽曲を届けたいという人にとっては有効な手ではあります。アジア系ほとんどいないので、目立つんじゃないですかね。Rich The Kidが日本人が上げたチャレンジをインスタで上げてたりしたので、そういった線のクリエイター的成功もありそうです。
ただシンプルに動画作って上げたりが、本当に簡単なので、興味ある方は利用してみてはどうでしょうか? 何か質問あれば答えますんで、Twitterとかでお気軽にご連絡ください。
最後になりますが、今Trillerでバイラルしている楽曲をまとめたプレイリストを作成しました。是非聴いてみてください!
※この記事は、LINE MUSIC公式noteさんとのコラボ企画になっております。
※LINE MUSICさんでは毎月1度、全曲フル再生できるように変更されています!この機会に是非!!
TikTok見てるとよくLINE MUSICさんに繋がるリンク見ますよね!将来的には、Trillerとも繋がったりするのかな...? なんて思ったりして。
written by Yoshi
source:
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