安濃津

津について考える。今頭の中にある津というのは、三重県津市のこと。

「津」という漢字は、そもそも港だとか船着場という意味らしい。

船が停泊する所。また、渡船場。ふなつき場。港。
津(つ)の意味 - goo国語辞書

三重県津市の名前の由来も、当然そこからきている。伊勢国安濃郡にあった津だから、「安濃津」と呼ばれていたのが、略されて単に「津」と呼ばれるようになったらしい。

津市は、古くは安濃津と呼ばれ、坊津(ぼうのつ)(鹿児島県南さつま市)・花旭塔津(はかたつ)(福岡県福岡市)と並んで「日本三津」の一つとされます。これは、中国から見た重要な港であることを意味し、中国との貿易港の一つとして流通拠点の機能を果たしていたと考えられます。
市の概要 | 津市

省略されて津

博多津・坊津と並んで安濃津は日本三津であったということだが、安濃津だけ省略されて「津」になったということは、当時の日本人のなかで安濃津こそが日本を代表する「津」だったということなのかもしれない。略された地名はいわば「津(of Japan)」みたいな感じだろう。

そのまま津は江戸期の城下町や明治以降の自治体名に受け継がれ、現在に至る。

ここでモヤっとしているのが、現在の三重県津市の、津(港のこと)の様子。是非とも GoogleMap のストリートビューで、津市の沿岸部を確認してほしい。私は港町育ちではないが、それでも津市より栄えた港町がいくつかあることは知っている。

津 of Japan

沿岸部を見てわかるとおり、現在の三重県津市はお世辞にも「津 of Japan」の称号に相応しくないように思う。

確かに日本三津の中では最も平安京に近く、古代から中世にかけて重要な津であったことは間違いないのだろう。江戸期に略されて「津」と呼ばれるようになるのも頷ける。実際の地名は意外と適当につけられていたりするのでここでは地名に関してはひとまず置いておき、この際だから「津 of Japan」を選び直してみるのがいいのではないかと思う。

全国の市のなかで「津」が含まれるものの中から、これぞ「津 of Japan」にふさわしいと感じた市をピックアップしてみた。なお、町村及び字に「津」含まれる場合も多いが、市政移行していない・市に編入された段階でその地名を冠することを選ばなかった時点で「津 of Japan」には相応しくないと判断し、ここでは市だけを対象とする。

大津市

決まった。大きい津、まさに「津 of Japan」だ。港もそこそこ栄えているように見える。これはいきなり正解が出てしまった。

一見これでいい気もしてきたが、津といえば海ばかりを想像していたため、湖の港町を「津 of Japan」に選ぶのはちょっと抵抗がある。湖なんて内陸みたいなもので、交通量も多い。海港と条件が揃わない。そんなのは卑怯だ。

君津市・木更津市・富津市

いずれも千葉県南部に位置し、隣接する自治体。東京湾に面するため、今回のエントリーの中で最も首都東京に近い。ひとつずつのインパクトは薄いが、隣接3市と言うユニット感を全面に押し出して「津 of Japan」の座を虎視眈々と狙っている。

ただ惜しむらくは、東京湾を挟んで向かい側、京浜工業地帯を要する横浜港・京浜港(川崎港)があること。いくら彼ら3市が「津 of Japan」を名乗ったところで、日本最大級の港が目の前にあっては誰も相手にしてはくれないだろう。

魚津市・宮津市・江津市

順番に富山県・京都府・島根県の市。日本海側なのでなんとなく違う気がする。

泉大津市

大阪府。ついに大阪府が出てきた。港といえばやはり大阪だろう。泉大津市は大阪府の泉北地域に位置する。大阪湾の一角を担っているので交通量も多く、「津 of Japan」を名乗るに申し分ないようにも思える。

しかし、泉大津という「国名 + 大 + 津」の構造を持つ現在の名前のせいか、N番煎じ感が否めない。これはタイのメッシ、讃岐富士、浪速のモーツァルトなどと同じやり口だ。

摂津市

これも大阪府。摂津というのは律令時代の摂津国のもので、古名は津国と言うのだとか。

津国(つのくに)って、これもう「津 of Japan」そのものではないかと思いきや、のちに津国を統治する摂津職という職名がそのまま国の名前となり、摂津市に引き継がれている。結局は職名でしかない。中四国エリアマネージャー市みたいな名前と意味的には同じ。

そもそも摂津市は湾に面してもいないので、話にならない。

まとめ

結局のところ、「津」という字を含む市の中に「津 of Japan」に相応しい市など存在しなかった。他にも「津」という字を含む市はいくつかあるが、どれもコメントのしようがないほどに相応しくない。

現在の津市は安濃津市にしてもらって、「津市」の名は封印しておくのがよさそうに思う。

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