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クライシスが来て、去った - Real Madrid 通信 en Febrero 2023

W杯の中断が明け、1ヶ月近くが経ちました。この一ヶ月ほどのレアル・マドリーは、コンディション不良と怪我人の続出による低調なパフォーマンスが続き、クライシス報道が絶えない状態が続いていました。

しかしその心配も束の間、コパ・デル・レイ4回戦のビジャレアル戦で劇的な逆転勝利を収めたあたりから、クライシス報道はどこ吹く風。続くリーガのアトレティック戦、コパ・デル・レイ準々決勝のマドリードダービーで強さを見せ、過酷な日程が待ち受ける2月を迎えることができています。

クライシス

中断明けから1月末までに9試合を消化し、5勝2分2敗の成績となっています。この2分2敗の内訳は下記のようになっています。

  • ラ・リーガ第16節 ビジャレアル 2-1 レアル・マドリー

  • スーペルコパ準決勝 レアル・マドリー 1-1 バレンシア(PK戦で勝利)

  • スーペルコパ決勝 レアル・マドリー 1-3 バルセロナ

  • ラ・リーガ第19節 レアル・マドリー 0-0 レアル・ソシエダ

スーペルコパの前後で時期立て続けに勝てない試合が続き、それと同時にクライシス報道が出るようになりました。

中断明けからしばらくの不調は、目に見えてコンディションの悪いフェデ・バルベルデや、連戦の疲労により鋭さを発揮できないヴィニシウス、W杯後からフル稼働を控えているモドリッチなど、シーズン序盤の躍進を支えた選手たちに顕著に現れています。

また怪我人の多さも深刻です。アラバとチュアメニが負傷によりサウジアラビアで開催されたスーペルコパに帯同せず、そのまま今まで離脱した状態が続いています。のみならず、右のラテラルの二人、カルバハルとルーカス・バスケスが揃って負傷、さらには直近のマドリーダービーでは左ラテラルのメンディも負傷するなど、特にDFラインにおいて怪我人が相次いでいます。

失望のスーペルコパ

近年はサウジアラビアで開催されているスーペルコパでは、バレンシアとの準決勝をかろうじてPK戦で勝ち上がりました。もう一方の試合でも、バルセロナがベティスとの撃ち合いの末にPK戦を制し、決勝に駒を進めました。スペインサッカー連盟とサウジアラビアの思惑通り、スーペルコパでクラシコが実現しました。

迎えた決勝の結果は 1-3 でバルセロナの勝利。この試合はタイトルのかかった試合ではありましたが、逸冠の悔しさというよりも、この内容でバルセロナに敗北したことがマドリディスタやメディアに重く受け止められることになりました。

スーペルコパのタイトル自体について言えば、マドリーにおいてそのモチベーションは低く、バルセロナにおいて高かったと言えます。バルセロナにとっては20-21シーズンのコパ・デル・レイ制覇以来の16ヶ月ぶりのタイトルであり、またシャビ体制となってからは初のタイトルが懸かっていました。モチベーションはかなり高かったように思います。

試合はこの日ブスケツとフレンキーをドブレピボーテで起用したバルセロナが圧倒的に支配していました。マドリーはハイプレスに苦しめられ、頼みのヴィニシウスもアラウーホ、クンデに封殺され、終盤まではなす術もないといった状態でした。チュアメニ不在の中盤は、卓越した戦術眼を持つバルサの中盤にとっては格好の餌食となり、その歪みから3点を献上する結果となりました。試合終了間際にベンゼマのゴールで一矢報いていなければ、事態はより深刻な方へ向かっていたかもしれません。

コパ・デル・レイで見えた光明

クラシコに敗れて帰国した直後の試合は、コパ・デル・レイ4回戦のビジャレアル戦でした。

ビジャレアルには2週間前のラ・リーガ15節の試合でも敗れており、チームの不調と難所セラミカ(ビジャレアルのホームスタジアム、エスタディ・デ・ラ・セラミカ)に対する苦手意識が重なりあった状態で迎えた試合となりました。

この試合では前半のうちに2失点を喫し、やはりクライシスかといったような雰囲気が流れるなか、後半にセバージョスとアセンシオを投入したところから流れが変わり、大逆転勝利を収めることになりました。途中出場のセバージョスは全得点に絡み、最後は自分でも決めて一躍ヒーローになりまし
た。

チームは勢い付き、その後のリーガ16節、アウェーでのアトレティック戦では、コパ・デル・レイでのいい流れを汲み取ってアセンシオやセバージョスがスタメン出場。インテンシティの高いアトレティック相手に総力勝負を挑み、見事に勝利を挙げました。この試合ではカマヴィンガの躍動も目立ち、今後の中盤のキーマンとしてセバージョス、カマヴィンガへの期待が高まりました。

そしてマドリードダービーとなった準決勝。中断明けからずっとアウェーまたは中立地での試合をこなしていたマドリーは、ようやくホームスタジアム、サンティアゴ・ベルナベウに戻ってくることができました。

この試合もまた前半に低調なパフォーマンスにより失点を喫しましたが、後半に途中出場のロドリゴのゴラッソにより追いつき、延長で逆転。前後半でまるで違うチームぶりを見せ、昨シーズンまでのカップ戦で劇的勝利を演じるマドリーの姿が戻ってきたように思います。


9番の復活

低調なチームのなかで常に光明となっていたのは、シーズン序盤に怪我で苦しんでいた昨年のバロンドーラー、ベンゼマでした。

彼は中断前は12試合で6ゴール。バロンドーラーとしては物足りない数字で、CLでは4試合で0ゴールと不発でした。また怪我により離脱していた時期もあり、さらにW杯にも出場できなかったりと、消化不良の年末を過ごしたことと思います。

そんなベンゼマが、中断明け7試合で7ゴール(うちPKで3ゴール)を挙げています。昨シーズンのマドリーの強さは、このベンゼマが決めて、後ろはクルトワが止める、というのが勝利の前提条件にありました。スーペルな2人のスーペルな活躍が戻ってきたこともあり、ここからのタイトルが懸かった過酷な日程に対する期待感も高まっています。

今後のマドリー

スーペルコパは落としましたが、今季のマドリーにはあと4つのタイトルの可能性が残されています。

まずはラ・リーガ優勝に向けて。首位バルセロナとは3ポイント差で2位につけています。今のバルセロナは安定感があり、なかなか星を落としそうにありません。しかし、マドリーを下したビジャレアルや、久保建英の活躍もあり3位につけているレアル・ソシエダなど、オトラ勢が活気付いてきているのも事実。今後の優勝争いの鍵を握るのは、間違いなくオトラ勢であると言えるでしょう。

リーガでは2月にはホームでのマドリードダービー、そして3月にはアウェーでのクラシコを控えていますが、その間を縫ってCL、リヴァプールとの2戦が待っています。昨シーズンの決勝カードとなったこの対戦ですが、以前とはチーム状況は異なります。不調のリヴァプールに対し、危なげない勝利を期待したいところです。

昨年の欧州王者として、マドリーは2月に開催されるクラブW杯に出場します。モロッコで開催されるこの大会で、マドリーは準決勝からの2試合(負けても敗者復活がある)を戦うことになります。

そしてコパ・デル・レイ準決勝も待っています。相手は宿敵バルセロナに決まりました。準決勝だけは、なぜかHome/Awayの2試合で勝負を決めるため、3月と4月にそれぞれ1試合ずつを行います。リーガとあわせて、35日間で3試合のクラシコを戦うことになります。こちらも過酷な戦いとなることでしょう。

残されたタイトルを全て獲得すれば、マドリーは今季5冠を達成することになります。しかしどのタイトルも楽観視することはできません。フィジカルコーチのアントニオ・ピントゥスによるコンディショニングが本当ならば、2月以降にマドリーはトップコンディションを迎えることになるでしょう。昨シーズン以上の劇的な試合を楽しみにしています。


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