企画との出会い方と磨き方
こんにちは。G's ACADEMYのDEV21期を卒業し、2022年2月の卒業制作発表会(Global Geek Audition)で発表したzen-flowのリリース準備中の株式会社Zen-flowの長友です。(注:2022年8月に社名とサービス名をZenmetry(ゼンメトリー)に変更しています)
(参考:卒業制作発表会までのプロセスについてまとめた記事)
この記事は、G's ACADEMYに入学して卒業制作にむけた企画を考える人たちに、私や周りの人たちが製品の企画にいたったきっかけや考え方、そして磨き方などをご紹介しながら、何らかの皆様の今後の企画のヒントになればと思い書いた記事です。
諸事情により、しばらく現役生の方々の個別のご相談・壁打ちをお休みすることにしました。(ごめんなさい)その代わりにはならないかもしれませんが、自分が壁打ちのときにどんな考え方をベースにしているのかにご紹介していきます。
企画は「偶然の出会い」かもしれない
みなさま企画のアイディアは持っていますか?「正直ない」「なんかピンときてない」という方もいると思います。このセクションはそんな方向けです。個人的に企画は「考える」よりも「出会う」ものなのでは、と思ってます。
私の経験を紹介します。私は入学試験のときは卒業制作で発表したzen-flowとは全く違うアイディアで入学しました。卒業制作の企画のアイディアのきっかけとなったのは、JavaScriptのチャットの課題を作った時でした。
どんなものを作るか考える際に、「チャットって流れちゃうよね」「チャットを後から見返したり探すの大変だよね」と考え、チャットの会話から議事録が簡単につくれるアプリを作ったのです。
この課題の制作を通じて、「ビジネスチャットに課題感を持っていた」ことに初めて気づきました。そして、ビジネスチャット全体の課題を考え始めて卒業制作の企画に至ったのです。
すなわち課題で「創り出したいものを創る」ことを毎週繰り返していく中で、自分の認識していなかった課題感が発見できたんですね。
実際は偶然の産物だったんです。
G's ACADEMYの卒業生の方々にアイディアの着想について聞くこともありますが、「出向していた時に意外な事実をみつけた」「雑談の中からヒントを得た」といった思いがけないタイミングで企画の種が見つかった方も多いのかなという印象を持っています。
「でも偶然って・・・どうやって起こすのよ?!」と考える方もいると思います。そこで偶然への遭遇確率を高めるヒントとして、キャリア論で有名なクランボルツ教授が提唱する「計画的偶発性理論」にヒントがあると思います。
その偶然の出会いを高めるために、「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」という5つの能力を高めよう、というのがクランボルツの主張です。詳しくはこちらのサイトなどが参考になるかもしれません。
もっと本で読みたい人はこちらどうぞ。
プログラミングという学習機会を得たみなさんなので、ぜひ改めて毎週の課題に「いやいやこんなのできないでしょ」とか自分にリミット設けずに、「創り出したいものを創るんだーーーー!」の精神でまずは全力で課題に取り組み、ガンガンコードを書いてほしいです。そして色々な人に会って語って、偶然に出会うチャンスを最大化することが、最終的に企画のヒントに出会いやすい状態になるのではと考えています。課題大事。
本当に他の人は困っているのか?ユーザーヒアリングで確認
「これ面白いんじゃないかな」「これはもしかしてみんなが困ってるかも」といった企画の種が見つかったとして、その後どうするの?をここからのセクションで書いていきます。
もし企画を新規事業やご自身の起業として考える場合に必要なのは、
「私以外も強烈に困ってそう(or 面白がってくれそう)」かどうかだと思います。そうでないと、お客様からお金を払ってもらえないし、継続利用してもらえないからです。
要するに想定顧客にユーザーヒアリングで実際に聞いて確かめるのが超大事です。
この記事の冒頭でご紹介したnoteの記事でもご紹介した超おすすめ本、「STARTUPーアイデアから利益を生み出す組織マネジメントー」 をご一読いただくと、ヒアリングのコツがわかります。もし偏頭痛級に困っている課題であったら、想定顧客は自分の問題がいかに大変だったかについて熱く教えてくれます。
ユーザーヒアリングを重ねると、自分の想定だけでは気づかなかった新たな視点が得られるはずです。その過程を積み重ねることで企画が磨かれていくはずです。ヒアリングの大切さは、SmartHRの創業者、宮田さんの動画でも語られてます。
なぜいまの現実が起きているのか構造的に考える
さて、他のユーザーも困ってるんだな、を探りあてたとしたら、今度はその解決方法(=自分の開発するもの)をすぐに考えたくなるはずですが・・・解決方法のアイディアを発想することにすぐに飛びつかない方がいいんじゃないかな、と思っております。
まず大切なことは原因を深く理解すること。もっと現実を深く構造的に理解するためによりヒアリングを重ねていき事実を集めていくことをおすすめしたいです。そうでないと、打ち手(製品)は一時的な変化は起こせたとしても、元の現実に戻ってしまう可能性があるからです。
この考え方は、我が師匠ロバート・フリッツの考え方に基づいています。 概要をつかめるYouTubeのビデオがあります。
この動画の7:20秒あたりにある「根底にある構造が物事のふるまいを決めている」というのがロバートの考え方の大原則です。いま起きている現実だけを見るだけでなく、その根底にある構造を捉えましょう、という考えです。
少し例にあげて説明しようと思います。
たとえばあるご家庭のAさんは、ご自身の家事負担が高い状況に本当に困っていて「自分の家事負担を減らし、自分の時間がもっととれるようになりたい」(=創り出したい未来)と考えていたとします。
そんな時にいきなり「家事代行サービスはどうですか?」「家電はどうですか?」「ネットスーパーで買い物するのどうですか?」と解決策を考えたり提案するのではなく、「なぜAさんは家事負担が高い状況にあるのか?」をもっと具体的な事実を集めて理解に努めるのです。Aさんの家族構成が影響しているかもしれませんし、世帯収入や可処分時間、地域性、もしくは他の要素がいまの状況の構造に影響しているのかもしれません。
ロバートの言葉を借りるなら「川の流れは、川床が決めている」のです。ぜひ川の流れだけでなく、川床も見てください。現実を徹底的に深く理解することが解像度の高さにつながっていきます。
そのサービスは本当に創り出したい未来を創れますか?
こうやって現実を深く理解できると、構造を変えることのできる効果的な打ち手(Webアプリケーション等)を考える段階です。
打ち手が有効かどうかのセルフチェックできるポイントは、「すべて実行すれば創り出したい未来は実現できるのか?」です。
打ち手は、セルフチェックだけでなく、なるべくコードを書く前に想定顧客に聞いてみて検証したいものです。
壁打ちなどで打ち手が有効かどうか意見を聞いてみる(それは欲しい!といわれるかどうか)
Figmaなどでコードを書く前にモックで意見を聞いてみる
などです。私はFigmaやらずに、コードを書き始める前はもっぱら壁打ちに頼っていました。ただ、動くものがあるほうがより具体的なフィードバックをもらいやすくなるはずです。
まとめ
企画の種の見つけ方のポイントは2つです。
比較的偶然に企画の種に出会えたりする
課題を全力でやるなど、偶然に遭遇する打率をあげる
企画を本格的に磨く時に考える主要なポイントは3つです
創り出したい未来は何か「ビジョンを描く」
偏頭痛級の課題がなぜ起きているのか「現実の構造を分析する」
ビジョンを実現するための「打ち手の有効性を検証する」
このチャートにご自身でもぜひ落とし込んでみてください。ご自身の企画が整理されると思います!
そしてロバート・フリッツのシンプルでパワフルな原則により詳しく触れるためには、著作をぜひ手に取っていただきたいです・・・!
緊張構造の身近な実例がわかる「Your Life as Art」。
ビジネスの戦略を考えたいという方はこちら。
WhyMe考えたい人はこちらもオススメ。
最後に
企画にはいろんな方法論があるので、あくまで今の記事は一例にすぎません。私が壁打ちなどでお話を聞かせていただく際のベースとなっている考え方をご紹介しました。みなさんが大事だと思う考え方で構わないと思っていますので、「こんな方法もあるんだな」という一例として頭の片隅に置いてもらえれば嬉しいです。
G's ACADEMYの門を叩いた人たちは、どんな方法であっても、最後にたどり着こうとしているゴールは「世界を変える」ことで、最終的に目指す志は一緒だと信じてます。たどり着く方法はたくさんありますが、それでも「誠実に」「等身大で」「誰かを傷つけたり困らせたりしない」方法で志を実現することを模索してほしい。私個人はそう願っています。
なぜなら事業の創造は信用を創造することであり、誠実であることが信用を創造する最も大切な条件だと信じているからです。普段からのG's ACADEMY生活での振る舞いが信用創造の実践の場でもあると考えています。
理想論で綺麗事に聞こえるかもしれませんが、私は自分の信念を曲げることなく、青臭く今後もG's ACADEMYのコミュニティに関わっていこうと思っています。
ご一読いただきましてありがとうございました。
みなさまの在校生活を心より応援しています。
私も自分の会社の製品リリースに向けて本格的に頑張ります!