8年越しのラブレター -アイの歌声を聴かせて-

 やっと「アイの歌声を聴かせて」を観ることができました。
しかも舞台挨拶ありの回で!
生で監督の吉浦康裕さん、音響監督の岩浪美和さん、声優の大原さやかさんを見れて嬉しかったし、とても楽しいトークでした。

 まさかあの大原さやかさんを生で観れる日が来るとは思ってませんでした。とってもお綺麗で、かつ動きが可愛かった…。ぴょんぴょんくるくるリアクションをされる姿は、顔があまり見えない遠い席からでも楽しめるようにしていただいてたのかもしれませんね。

以下映画のネタバレあり




 シオンさんが言った言葉が後半で効いてくる。



 物語の中心は主人公のサトミさんとAIのシオンさんであるものの、サトミさんの母親の美津子さんの存在が大きく物語を動かしていたように感じました。シオンさんがAIとして成功するようにしなければならない。失敗すれば母親の仕事も立場もやばい。と"親のことを思っている"ところから物語が始まります。
親の心配をしているところからサトミさんの優しいところが垣間見えましたし、母親の美津子さん大丈夫かと心配になりましたね。家事や会計を娘に任せるし、脱いだ服は散らかすし…。
母子家庭であるところもサトミさんが必要以上に母親に気を遣っている、心配している原因になるんでしょうね。

 シオンさんは転校早々に歌いだすし学校のAIやセキュリティ関連のものをハッキングして全力でサトミをシアワセにするために頑張りますが、基本的には歌と対話。ゴッちゃんとアヤさんのすれ違いを復縁させたり、サンダー君を初勝利に導いたりしましたね。復縁は素直に話すことで、サンダー君は歌とダンスに合わせて的確なアドバイスをもらうことで勝利できたんだと思います。
自己紹介の時に歌ったけど歌だけじゃダメ、音楽室を乗っ取って歌って踊ってみたけどダメ、柔道ロボットでピンチを演出したけどダメ、と試行錯誤を繰り返す中で、人と人との関係を修復することでシアワセになることを学ぶ流れはハチャメチャに見えてしっかりとプロセスを踏んでいたように見えました。

 その後は学校を抜け出し祝勝会をして、さあ一番大事なサトミをシアワセにするぞというところで、メガソーラー乗っ取りはさすがにやりすぎ。シオンさんがAIだと知っていることもバレて実験は失敗、シオンさんはラボに収容、親の仕事もダメになってしまいます。
ここからは見てて辛い…。 

 これまで優しくて明るいお母さんだった美津子さんが、やけ酒はするしお皿で鏡を割るしでダメなところが出てくるシーンは結構きつい。
それほどまでに仕事に思いがあったんだろうし、色んなものを捧げてきたんでしょう。約束をすっぽかしてばっかりという話からも家庭よりも仕事に比重があったことが伺えますし、それほどまでに情熱があったことが伺えます。離婚の原因も垣間見えますね。
そんな仕事が失敗すれば崩れてしまうのも当然ですが、やけ酒のシーンの台詞は優しい高校生には重たいだろうなと感じました。
「知ってたなら言ってほしい」と言われても言えるわけがない。どんなに重要なプロジェクトだったか、どれだけ苦労してどれだけ耐えてきたかを察しているから優しさから言えなかった。それを美津子さんも感じているからそれ以上怒らなかっただろうし、「言葉を選ぶ自身がない」と言える優しさや母親としての意地が保てたんだろうと思いました。
けどこの言葉の優しさを感じるにはサトミさんは幼すぎる。
何より自責の念がある状態のサトミさんにこの言葉を受け取るだけの余裕はないでしょう。
母親も母親の仕事も実績も、全て自分が壊してしまった。そう思ってるサトミさんに対して「独りにして」は最大限優しい言葉であると同時に残酷。
ただ怒っている人がいる怖さではなく、自分の行動が原因で相手が怒っているときに感じる怖さは何とも言い難い感覚。
見えている以上にサトミさんは追い込まれていたように感じました。

そして、独りにしても"時間は解決してくれない"

 そんな状況を打開してくれたのはゴミ箱型ハードディスク。を見つけたトウマ君。序盤から度々ゴミ箱と間違えられるのはこのためか!ここからのネタバラシは非常に面白かったですね。
シオンさんの正体は、8年前に美津子さんが作ったAIにトウマ君が願いを込めて(改造して)できたもの。
この8年という長い時間でトウマ君は"サトミを幸せにしてほしい"という願いを忘れてしまっていたかもしれない。
でも "私は忘れないよ" 。
8年もの長い間サトミさんをシアワセにするために見守っていて、話をする機会を伺いついに体を見つけてサトミに会いに来た。
サトミを幸せににするために。
まるで、8年越しラブレターのようですね。

 そこからはシオンさんを逃がすためにラボに潜入、美津子さんもぎゃふんと言わせるためにノリノリになります。
ラボ内のAIの協力も総動員して屋上へ。

 幸せになるために友達を作ろう。友達になろうと伝えようと歌うものの、シアワセの意味が解らなかったシオンさんが、「幸せ?」とサトミさんに聞かれて「幸せ」だと答えられたのは、サトミさんと友達になったからというのは何とも綺麗な結末。

 事件の結果、美津子さんが「今度は堂々とやれ」と言われたのはかなり刺さったのではないでしょうか。足を引っ張られ続けた結果、ずる賢いやり方を学んだのかもしれない。でも彼女は本来夢に向かって走るタイプのように見えるし、堂々と正面切って勝負するのが似合ってるように思いました。

 最後までサトミさんとトウマ君はくっつくまではいかない距離感を見かねて、衛星に載ってるシオンさんがスマホに連絡をくれたのは、今までのように見守っている、けれど今までと違って貴女も私を認識してくれているから、対話をすることができるし、歌も届けることができるということなんですね。


 友達ってなんだろう、幸せってなんだろう、と色々と感じるところのある作品でした。
とっても暖かくて、とってもかわいい。

今日も元気で頑張るぞ!おー!!

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