モブキャラだって生きている - フリー・ガイ -

 ゲームの中の世界を題材にした物語は沢山あるものの、その中のモブキャラ(NPC)をメインにした作品はあんまりない印象があったため、着眼点が面白いなと思い、フリー・ガイを観に行くことにしました。
主演がライアン・レイノルズさんということもあり期待値高めでしたが、見事に期待通り滅茶苦茶やってくれて楽しかったです!

ただし、パンフレットがないのはやっぱり切ない!



以下ネタバレありの感想




 モブキャラからしてみると、プレイヤーってこんな感じに見えているんだろうなというのをコミカルに表現している部分が非常に面白い。殴られたり、銃で撃たれたりすることが当たり前の世界として作られているとはいえ、まぁやられたら迷惑だし嫌だよね;;
そんな不満はあるけど疑問はなく繰り返す毎日を変えるきっかけがオチにつながっているのがまた面白かったです。

 モロトフ・ガールと話をするためにサングラスを奪い、世界が変わったと、いつもと違う行動をするガイに対し、他のモブキャラも困惑し排除しようとする描写がありますが、これは普通のプログラムではなく人工知能を搭載型であることを示していたのかなと思えました。思えば序盤からプレイヤーのことをサングラス族って呼んでるのがモブキャラたちの中で独自の文化が形成されているのが垣間見えていたり、ある程度自身で考えて行動することができるのが表現されていましたね。

 この自ら考え行動できるゲームキャラと無法地帯のゲームが合わさることで、ハチャメチャなアクションだったり、コミカルな表現だったり、いろんな要素を連続で出せていて飽きない面白さがあったと思います。
動画を盗みに入ったシーンでは、ゲームのキャラクターが行うエモートを俳優さんがやっていて改めてあれはキャラクターが行うからいいんだなと思えましたし、ゲーム側に話かけているかと思えば親に話かけて会話が分からなくなるのもあるあるだなと思いました。
現実のシーンでちらっとアベンジャーズのポスターが貼られていてニヤッとしましたが、まさか、キャップの盾やハルクの腕が出てきたり、クリス・エヴァンスさんが出てたりしたところは驚きましたね。
他にも色んな俳優さんがカメオ出演されているようで、確認するためにもう一回観たいですね。
ロックバスターが出てきたり、日本のシーンがあったりと、日本人の私としてはちょっと嬉しい。

 今回の悪役のアントワンは非常にわかりやすい嫌な上司。お前のことは知らない、後のことは考えていない等、たまにいる感じの人で本当にイラっとしました;; ただ、IT関係者であれば一度はやってみたいであろうサーバルームでサーバをぶっ壊す夢を映像化してくれたのは良かったですね。
損害は計り知れない。。。フリー・シティで配信をしている人もいるため、ある程度の影響力を持った人からクレームが入るでしょうし、あの台数のサーバを復旧するのすっごく大変だと思います。現実では絶対にできない。でも壊したくなるときがある。それがサーバ。。。


 ここからは内容のお話

 自分がゲームのキャラクターで感情も全てプログラムされたものだとすると、それは全部嘘なの?という問いは人間にも当てはまる問いだと思います。遺伝子、本能、育ってきた環境、教育、そういった色々なものに影響されて感情というのは育ったりすると思うのですが、それって感情が外部から作り上げられているともとれるように感じます。ゼロから自分で構築した感情を獲得するのは非常に難しい。じゃあ今持っている感情は偽物なの?他人から埋め込まれたモノなの?と考えたことがある人もいると思っています。
昨今の人工知能ものではよくある結論だとは思いますが、「他人から与えられたものでも感じている気持ちは本物だ。」というのが本作でも言われていましたね。たとえ環境に影響されていたものでも、自分なりに租借して取り込まないと感情として獲得できませんからね。
この作品では、これを伝えてくれるのが、バディなのが良かった。メチャクチャ気のいい相棒である彼が、「君を助けたい」その一心を伝えたからこそ、この世界こそが自分にとってのリアルであると納得できたんでしょうね。


 一見するとガイの成長や自由な世界へ踏み出すストーリーが目立ちますが、それが目立つだけにガイが切なすぎる。
片想いのキャラクターとして作り上げられ、求める相手はミリーの性格をベースにされている。それに気が付いて自分はたぶんミリーへのラブレターなんだと思う、と身を引く。。。主人公でありながら、ミリーとキーズが付き合うためのNPCになっているという話の作りはちょっと悲しかったですね。
片想いのキャラクターであるため今後も誰かと付き合うことはないでしょう。。。バディがいるから寂しくないのが救いかな。


 モブキャラを題材にして、モブキャラを主人公にしたと言いつつ、話のオチとしては現実の2人の恋愛を描いている切ない物語でしたが、切なさを感じさせないくらいテンション高く、派手に、コミカルに表現されていてすっごい面白かったです。今回は字幕で観ましたが、吹き替えの声優さんも気になるのでいつか吹き替えも見たいですね。
ゲーム用語がいい感じに翻訳されてると思ったらファミ通が関わっていたようで、違和感なく翻訳されているところもポイントが高かったです!

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