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獄中記⑧ また再逮捕 「なぜ2度も。やってないのに・・・

不当逮捕から20日目、私はソワソワしていた。おそらく今日、鑑別所へ帰るんだろう・・・。審判は誕生日までに間に合うのだろうか・・・。   車で帰るのか、電車か?というか、そもそも何時に行くんだ?荷物の準備は?色々疑問が浮かんでいる中、9:30頃に刑事から呼ばれた。    留置所の担当さんに連れて行かれ、留置所の扉を出ると、5人程の刑事がいた。いつもは2人なのでかなり多い。何なのだろう・・・。       取調室に入るとみな後から入ってきて、一人が私にある紙を見せた。見覚えのある、あの紙を・・・。

逮捕状 

被疑者は令和2年8月~日頃、田中(仮名)及び氏名不詳者らと共謀の上、麻薬である、Nジメチルα、3,4~(MDMA)330錠が入った小包を営利の目的でオランダ王国にて、氏名不詳の者を利用してポストに投かんさせ、国際郵便を利用し、同国アムステルダムスキポール空港よりKLMオランダ航空機で、日本国千葉県に所在する成田空港に輸送し、~~(一部略)麻薬及び向精神薬取締法違反。                          *誤解を招かないように言っておくけど、私は輸入なんてしてません。

重罪なのにちっとも変わらない取り調べ

麻薬の密輸は重罪だ。東南アジアや中国では即、死刑となるだろが。にもかかわらず、取り調べは変わらなかった。相変わらず緩いままだ。     「僕、さすがに密輸はしませんよ(笑)なんで僕のところにこんな件がきたんですか?」  「う~ん。それは言えないなあ。じゃあとりあえず知りません。でいいな・」  「はい。そうして頂ければ」  「後、営利の目的っていうのも当然しらないってことでいいんだよな?」  「はい」   終始こんな感じで、調書を作りながら雑談していた。          2日後に地検に行った時も取り調べは同じ。 唯一違ったのは、さすがに接見禁止はついたことくらいだ。                    その帰りのバスが19時頃だった。川崎地検からの帰り道は多摩川沿いをまっすぐで、川の向こう側(世田谷区)を走る車のヘッドライトヤテールランプがすごくきれいだった。          

弁護士は「この事件はあまりに酷いですね。拘留の必要がないので、不服申し立てをします」 「気づいているでしょうが、これで審判を受ける権利はなくなります。今後は裁判のことも考えていきましょう。」 と言っていた。

塀の中の誕生日と逆送

この20日の間に私は20歳の誕生日を迎えた。それまでは「少年」ということで他の人から見えないようについ立てやカーテンで区切られていたが、この日の朝から他の人と一緒になった。 7人くらい人がいたが、20代30代の若い人が5人、後期高齢者が2人という所だった。             誕生日といってもとりわけ何かあるわけでもない。自分へのプレゼントとして、ポテトチップスとかりんとうを食べたことくらいだ(笑)      弁護士の小寺先生は「仕事」集のようなものを差し入れしてくれた。東進が出しているもので、同時に「大学受験」集も入れてくれた。半ば冗談で「大学受験でもしようかな」と言ったことがあったからだ。

誕生日の2日後くらいに私は横浜の関内にある地検の本庁に連れて行かれた。友人(知人?)に2人程会った。悪い人間のコミュニティは狭いので、こういうことはよく起きる。                     夕方に裁判所へ呼ばれ、「逆送」ーつまり、兵庫の件を少年事件ではなく、成人の刑事事件として扱うということが決定した。担当さんが帰りはみなとみらいのイルミネーションを見せてくれた(笑) ああ、何年行けないんだろう・・・。

私はなぜ2回も不当逮捕をされたのか

まず2件目の密輸については実際にあった事件で、私が経営していたバーのアルバイトの方が荷物の受け取りの為に関内のホテルに泊まっていたそうだ。その日私は、アルバイトの彼に手渡しで1万円を貸した。これはコンビニの中のやり取りでカメラに残っていたそうだ。            この人は逮捕され、1万円を私から借りたことを問い詰められると、私にやらされたと言ったらしい。しかし、おそらくだが指示していた人を私は知っている。 その人は何というか「コワイ人」なので(笑)、名前は出せなかったのだろう。                           本人は悪いことになれているタイプではない から、私の名前を出したくらい大したことにならないと勘違いしたのだと思う。

1件目については本チャンの2件目があったから、ついでに付け足してみたに過ぎないのではないかと考えている。元々私と希が一緒に薬物を所持していたなんて無理筋なのだ。                       同類の事件で名前が浮上したから、1件目で懲らしめて2件目を吐かせる。という見立てを本庁の人たちは持っていたと思う。            しかし私が自白しない限り立件できないから、現場の係員としては無理筋だし、仕事も増やしたくないので、やる気がなかったのだ。         

しかし、そもそも何の裏づけもなく、40日も捕まえることは合法でいいのだろうか? 私は薬物に前科前歴はない。本来なら捕まえない事件だ。

最もうがった見方をすれば、「少年審判」を受けさせて刑事責任を取らせないという事態を避けるために、兵庫県警の人間と神奈川県警の人間で何らかのやりとりがあったのではないか・・・。               審判は刑事や検事からすれば適切なものではなく、「正義」に反している。自分たちの正義の実現の為なら多少無理をしてでも、人の権利ははく奪できるというのが、彼らの思考回路だと私は考えている。

20日がまた過ぎて

当然私は不起訴となった。それと前後して税関の取り調べを受けた。税関は財務省だ。彼らが取り調べなんてするのか~と少し驚いた。とは言え形だけのもので、実際には警察の調書をなぞって終わりだ。          最後に所有権放棄の書類を書いた。厳密には私は所有権を取得していないので、放棄するものがないと説明したが、「役所仕事だから勘弁してくれよ。」と言われた。誰に所有権が属するのか確定した際に必要となるかららしい。・・・ていうかそもそもMDMAに所有権とかあるんだ・・・。「いりません」って書いたけど、「返してください」とかいたら、どんな反応をされるのか?ずっと考えていた。

つづく

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