刑務所の冬が寒すぎる件 もっと広く色々な人に知ってほしい
今日は2月23日天皇誕生日。大阪刑務所で受刑中の私も休みを一日独房で過ごしている。
まだ吐いた息が白いことが多いものの、寒さのピークは何とか生きて越えられた気がする。
今日は刑務所で初めての冬を過ごして感じたことを書こうと思う。
私が大阪刑務所(以下大刑)に来たのは10月。その頃は半袖の人も多かった。
10月末から私は分類センターという工場で、次に移送される刑務所を決めてもらうために務めている。
寒さが大刑を襲ったのは12月半ばだった。
分類センターの受刑者は4週間は行進などの行動訓練を受けるが、その後は移送されるまでずっと単純作業をする。
私の場合は、せんたくばさみを袋詰めして出荷する作業を座って行う。
12月半ばのある日、半袖下着・メリヤス・作業着・ズボン・靴下の格好で作業をしていたら、突然寒さを感じた。
コロナ対策もあって窓が開いているので、寒くて仕方ない。
一日中肩を上げて寒さをしのいだ。
次の日からは下にもメリヤスを身に着け、上は2枚重ねにしたが寒さは止まらなかった。
一応ストーブがついているようだったけど、300㎡くらいの広さに対して1つ。
しかも私の席は一番遠い所にある。
2,3日で寒さは耐えがたいレベルに達し、私は今まで通りに満足に作業ができなくなった。
身体、とくに手が思うように動かなかったのだ。
その週の最終日、工場から独房へ帰ると、指がパンパンに赤くふくらんでいた。
これが霜焼けだと知ったのはもっと後のことで、この日はどこかにぶつけたのか…?と思っていた。
私の住む独房は太陽が一切当たらない。
しかも後から知ったことだが、変な換気扇が一日中動いていた。
雑居(集団部屋)は人がいる分多少温かいらしいが、独房は死ぬほど寒かった。
年末にかけてはもはや「寒い」ではなく「痛い」という言葉で表した方が良い状況だった。
朝、独房から行進して行く4・5分、運動へ行く2・3分、帰りに2・3分しか外に出ないのに指はどんどん腫れあがり、やがて変な液体が流れ出るようになった。
風が吹くと身体中を叩かれているような痛さを感じた。
年末年始の休みの頃には、私の指は黒くグジョグジョになっていた。
やっとこれが霜焼けだと気付いた。
人生初の出来事だ。
年明けも痛い寒さは変わらない。
工場の後ろの方にある教室のエアコンが稼働したおかげで、風のない日は
何とか耐えられるようになったが、窓が開いているため、風のある日は意味がない。
外に出る前になると、手指や顔に痛みが加わることへの恐怖から心臓がバクバクした。
2月上旬には寒すぎて朝の出室を遅らせたり、運動を止める日もあった。
夜は寒くて眠れないので、皆ルール違反をして頭まで布団を被って寝ていた。
手袋、2枚重ねの靴下、半袖シャツ、メリヤス上下2枚ずつ、ベストパジャマの重ね着でも耐えられない寒さだ。
大刑の寒さ対策として「居室でずっと布団の中に居て良いよ」というのがある。
「冬は部屋にいる時に机に向かわず、ずっと布団にいていいよ。」とこれだけだ。
空調はもちろん、カイロも温かい衣類も使えない。
私は部屋にいる時間の9割を勉強に当てている。
公認会計士やIT系資格、言語の勉強をしている。
そのほかにこのnoteや手紙を書いている。
正直、冬は寒すぎてイスに座ってペンを持って何かをするのはキツかった。
だから当初予定していた簿記の問題演習を諦め、インプットに務めたり、noteを書く回数を減らしたりした。
部屋へ戻って食事を取ったら急いで手紙を書き、布団へ入る。
そして仕方ないから何度もテキストを読み、計算問題はやり方だけ覚えた。
一番きついのは月に2回の教育的処遇日で、氷点下に近い部屋の中、一日NHKを観る。
筋トレができないので、一瞬たりとも温かさを感じることができない。
勉強時間も2,3時間あるが布団に入れないので、机で震えながら民法のテキストを読んだ。
当然効率は悪い。
作文を書く日もあるが、寒さで思考力を奪われ、じっくり過去を振り返ることができなかった。
刑務所は犯罪者を隔離することだけが目的ではなく、「改善更生」させるという使命を負っている。
私も出所後は人並みにやっていけるよう、少なくとも毎日平均6時間の勉強をしている。
私以外にもこういう人はいる。
過去の自分を振り返る時間も必要で、私は振り返ったことを手紙に書いている。
寒さ対策の予算がない、という理由で受刑者を3か月間布団に閉じ込め、学習や自省の時間を諦めなくてはならないというのは、ちょっとどうかと思った。
年末休みの1週間はずっと布団で過ごし、運動もしない。
そもそもとてつもなく不健康でもある。
痛むほどの寒さにさらし続けるのは、時代の要請とかけ離れている。
それで手が真っ黒になっちゃうんじゃ、身体罰・ムチ打ちと似たようなものではないか・・・。
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