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獄中記⑭ 山梨県警殺人担当取調官の捜査

川村との再会

令和3年5月下旬、私は兵庫県警本部留置から山梨県の留置所はと移送された。                                私は山梨県で起きた事件に、兵庫の件の共犯者である「T」を派遣していた。知人の「K」が事件を指南していて、色々な事情から車がもう一台必要になり、私は「T」を呼ぶように頼まれ了承した。           「K」は半ば脅されてこの事件に参加させられていたらしい。(刑事の話)

又、事件に参加した人物のうち1人は私の知り合いである。「T」は途中から見張り役として事件そのものに参加したので、私の責任も大きい。

川村刑事は再開して開口一番、こう言ってきた。            「まあ、お前にとっちゃあこんな事件はチャッチャと終わらせた方がいいさ。兵庫の事件はきちんと自分のやったことを話して、示談したんだろ? 弁護人がきたらこの事件もちゃんと示談進めろよ。お前の関与はほう助なのか正犯なのか、それはこれからだけど、被害者はケガもしてない。ケータイと1万5千円のみ取られたと言ってるけど、本当か分からない。小さな事件だし、ほう助なら刑は大して変わらないだろ。              本当は俺以外が取り調べの方が良かったのかもしれないけど、他にいないからカンベンしてよ。」

川村刑事はかねてから本事件に関して、「示談されたらそれでおしまい」と言っており、前のめりではなかった。                  又俺以外が・・・のくだりから分かるように、静岡で私が前川刑事に話したことが流れているのも分かった。                   もう一つはどうやら私のことはほう助で起訴する予定が大ということが伝わってきた。

死刑か無期懲役か・・・

川村はこの事件について「やりたくない。示談されて終わりさ。」とのスタンスだった。刑事たる者、被疑者の前でもっとガツガツきてもいいはずだ。  彼はなんと殺人の担当だった。                    「普段俺が調べるのは死刑か無期かって事件だ。今回たまたまこの件がまわってきちゃった。」                         死刑も無期も基本殺しをやった人間しか受けることはない刑だ。そういった事件の場数を踏んでいるので、川村はやり手だった。 

「今まで一番良かったのはどこの刑事?」と聞かれ、私は「静岡の人は信用しました。神奈川も中川さんはいい人でしたよ。」と答えた。      すると「え~?静岡!?アレはないさ~。捜査能力も全然ない。まあ、お前のことは『チョロかったです。』と言ってたけどさ。」と言われた。   私は多少なりとも信用はしていた人だったので、手のひらで転がしていたかのような言い方をされて、少しショックは受けた。           また、「検事は怖い人だよ。まあ可愛いんだけどさ(笑)。 面倒な奴に目をつけられないように、ちゃんと応じてくれよな。」とも言った。     とにかく今思い出すと、彼は他の人を信用させないようにしていた。

弁解録取と美人な検事

逮捕後の弁解録取(言い訳タイム)では、ありのままを話した。「K」が取りまとめていたことは、彼らはすでに知っていた。           私は「K」に頼まれて、「T」を送り迎え要員として行かせた。知人が事件に参加していたが、それは後から知った。                事件後、実行犯達が「K」に金を要求してきたので、それを追い払うのを手伝った。ということを話した。                    川村は「ちょっとお前寄りすぎるな。俺はいいけどさ。上司に聞いてくる。」と言っていなくなった。 

5分後に戻ってきて、「「T」を行かせた。の後に、「T」が実行の手伝いをすることになったのを了承した、というのもいれることにしたからな。」と言って付け加えてきた。                        少し躊躇すると、「お前、何が一番いい方向にいくのか分かっているだろ?兵庫はそうしてるじゃないか。サインしないとか、そんなのやめた方がいいって(笑)。俺はいいけどな。足に手錠つけて、ポイってやるだけだから。」と言ってきた。                             私がダマって聞いていると、「兵庫はちゃんとしゃべって、示談したんだろ?」と付け加えた。

彼は私に示談してほしいらしい。その上で彼らの思う通りに調書を取らせるということだ。それが一番良い方向に行くと。

次の日、検察庁へ行った。待合室は一人。庁舎も超小さい。                     取り調べ室に呼ばれたのは14時くらいだ。                   検事は聞いていた通り美人だった。常盤貴子が若くなった感じだ。      検事に刑事のやり方について少し苦情を言うと、「私はムリヤリ取ったりしないよ。別にいらないから。」と余裕を見せてきた。            事件の内容については同じ話をした。

この時少し問題だと感じたことがある。検事の調べには通常、地検の待合室の ”担当さん”が後ろで座って、被疑者が暴れたら止められるようにする。しかしこの時立ち会っていたのは、前日の川村の取り調べで立ち会いをした刑事だった。これでは圧迫感があって、刑事のところと違うことを言えないではないか・・・。

裁判所へは18時半くらいに行った。裁判官は変わった人で、会話のキャッチボールができなかった。年上の書記官に対する口調もキツイ。       こんな人が人を裁くのか・・・と驚いた。               19時半ころ留置所へ帰った。

翌日から取り調べが再開するが、ドラマかと思うようなとんでもないものだった。

つづく


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