短編集「スイートメモリー2」作品解説
「スイートメモリー2」という短編集を電子書籍で発売しました。
2015年〜2019年ごろに描いた読切などを詰め合わせたものになっています。
発売を記念して作品解説などをしていこうと思います。
結構前に描いたものもあるので思い出話なども踏まえて。
①スーパーボール〜熱狂が終わる時、幸せの鐘が鳴り響く〜
ゲッサンという雑誌に描いた読切です。
「やれたかも委員会」がちょっと売れたおかげで、編集部の方から声をかけていただいたんですが、急にアイデアなんか浮かばないし、無理やりひねり出したところで、僕はあまり面白く描けないタイプなので、ちょっとお時間頂いて待ってもらって、何か浮かんだ時に「これどうでしょうか。」という具合にネームを送って、これは気に入って頂けて掲載が叶ったものです。
このスタイル控え目に言ってめちゃくちゃいいですよね。描いたら載せてくれる。どこの文豪だよ。
こうやって暮らして行けたらいいのにな。
VIVA LA 原稿料収入!!
夏祭りでスーパーボールすくいの店番をしたのは実話です。
登場する女性が「深水さんってまだ女性に憧れを持っているんですね」というような内容の発言がありますが、これはやれたかも委員会の3巻で対談させていただいた作家のこだまさんから言われた言葉からきています。
詳しくは3巻(紙書籍)に収録されている特別対談記事をご覧ください。
結構絵を頑張って描いた思い出があります。
全体的に安定しているといいますか、なんかいい感じな気がする。
②めざせ!ゆるキャラポッピーくん
調べてみたら2016年末頃にTwitterに上げた漫画のようです。
ネームを描いたのはもっと昔で、多分2010年頃(大昔!)、スピリッツとネームのやりとりをしてた時に描いてた気がする。
それを何かのタイミングで引き出しから出して「これまだおもろいじゃん」と思って原稿化したんだと思う。
2016年頃はとにかくTwitterに毎日漫画を上げようと頑張っていた時期で、そうなってくると必ずネタ切れになり、「なんかネタになるものねーか?」と思って引き出しをごそごそしてたら出てきたんじゃなかっただろうか。
割とそういうことはよくありまして、昔描いたネームって結構頼りになる。
だから最近もつまんないって思ってもとりあえず描いておいて、寝かしておくことしています。
未来の僕がそれを使ってお金にしてくれるかもしれないわけだし。
忌野清志郎が何かの本で、デビュー前に100曲ぐらいストックがあったから「ぼくの好きな先生」がヒットした後、立て続けにアルバムを出せた。みたいなことを言っていた気がする。
100%一緒ですねそれと!!!
なんかふとした流れがこっちに来たときに、全く白紙なのと、ちょっとしたネームがあるのとでは結構違うんじゃないでしょうか。
もちろん「これおもろいやん!」と思って原稿化してもそれほどウケないこともある。多々ある。
まあそういうもんですね。
大昔のネームなので、打ち合わせで編集者に言われたムカつくセリフがいっぱい入ってますね。
若い頃にお歳暮配達のバイトをしてて、8時に出社して1日に80個とか荷物を配らなくてはならず、でも全然配れなくて、配れないからお金にもならないし、さらに明日の伝票の準備もしないといけないから帰りが夜11時ぐらいになって、半泣きで帰宅してたら自転車盗難チェックの警察に捕まったことがあって、そのエピソードも入ってますね。
結構好きなんですよねー。この漫画。
でも世界観がぐずぐずと言えばぐずぐずですね。
「ゆるキャラになりたいってなんだよ。」とか。
「ケーサツとかは普通じゃねーか。」とか「ポッピーの大きさ」とか。
しかしそこをゴリ押ししているところも好きなんですよねー。
作者に寵愛されている漫画です。
③あなたを守りたい
2014年くらいに描いた漫画だと思います。
その頃はモーニングとネームのやりとりをしていて、その中の没ネーム1本だったんじゃないだろうか。
この後に収録している「コォォォチ!」とこれとあと他の1本で「世界の変な偉人」みたいなギャグオムニバス読切連載はどうでしょうかと企画を持ち込んでいた記憶があります。
結局その企画は通りませんでしたが。
まあ無理か。そんな連載誰も見ないか。
拙作「やれたかも委員会」に登場する塾長と同じ名前の「能島明」というのが出てきます。相当気に入っていたキャラクターなんだと思います。
昔友達が吉祥寺のボロアパートに住んでて、その部屋で喋ってたら、突然下の階のおじさんがやってきてドアを叩きながら「ドンドンうるせーんだよ!開けろや!」とめちゃくちゃ怒鳴り散らしてきて、僕と友人はビビりまくり、謝ったものの、おじさんの怒りは収まらず、しまいにはドアのノブをガチャガチャやり出したんですが、最後までなんとかドアは開けず踏ん張り、やり過ごしたのだけど、その後テンションがダダ下がりの僕らは、近所の中華屋さんで夜ご飯を食べながら「(うるさくしたつもりは全然なかったんだけど)改めて謝罪した方がいいだろう。」という話になり、その中華屋さんで青島ビールを買ってビニール袋に入れてもらい、それを手土産に、お詫びにいこうと下の階の扉にそーっと近づき、静かに表札をみたら「能島」って書かれてて、「能島って苗字めちゃくちゃ怖えぇ!」とその名前は僕の脳裏に深く焼きついたのでした。
「能島」はそこから拝借しました。
その後友人は能島さんにお詫びをして許してもらっていました。
オレはビビって陰から見ていた。
時間をおいたからだろうか、気持ちが落ち着いた能島さんは
「ドンドンってあれ何?セックスしてンの?」と言っていた。
友人がお詫びの青島ビールを差し出すとさらに機嫌もよくなり、最後には「ちょっと今度飲みに行こうよ。」などと言い出していた。
行くかー!!!!!!!!!
④コォォォチ!
前述の通り2014年くらいに描いた漫画だと思います。
この当時はまだ紙の原稿に描いて、フォトショップのパワートーンというのを使い、仕上げをしていました。まだ液晶タブレットも持ってなくて、10年物の自作windwsPCを使ってた気がする。懐かしい。
DMM.com(現FANZA)もまだそれほど整備されておらず、エロい動画もなんかサンプルを一生懸命集めていた気がします。いいやつと普通のやつといまいちのやつをフォルダに分けたりしてね。CDに焼いたりしてたような気がする。あの動画たちはどこに行ってしまったんだろう。
エロい動画といえば、昔、かれかれ20年前ぐらいだろうか、WinMXというファイル共有ソフトがあって、そこでエロい動画を落としまくっていた時期がある。随分ウィルスにもやられたが。
そんな時に落としたエロい動画の中で無茶苦茶脳裏に焼き付いた一本があったことを先日ふと思い出し、「そうだ今なら簡単に手に入るかもしれない」と思い、DMM.com(現FANZA)に赴き、検索窓を利用し、探し始めたのだった。
確かナンパ物のアダルトビデオでシリーズ名は覚えていたんだけど、そのシリーズだけでも200本近くあってどれかがわからない。僕は大体の年代に当たりをつけ、1本1本購入していき、何本目かでついにその動画を探し当てたのだった。見つけた時の興奮は正直言葉にならない。
2003年頃見た彼女はそのままの姿で、スマホの中にいた。
海で声をかけられ、笑ってごまかしながらも、どんどん会話に流されていく彼女。お尻の砂を払い立ち上がり、振り返りながらはにかむ。
「えー、なんでですか〜。え〜。」
ホテルに着いた彼女は上から順にワンピースのホックを外されてももう抵抗しない。白いレースから覗く透けた下着。その奥にある形の整った陰毛。男の肩越しに回される彼女の細く白い腕。やがて薄いピンクの下着がじわりと湿り始める。
今の君はどこにいるんだろうか。
僕は余計なことを考えてしまう。
同い年ぐらいだろうか。結婚はしているのだろうか、子供は?あのカラフルなビキニは今どこにあるのだろうか。あの薄いピンクの下着は?
もう海には行かないのだろうか。
そんなことを考えていると、あの頃脳裏に焼き付いた以上の興奮がシナプスを駆け巡り、後頭部あたりがじわりと痺れ始める。
ノスタルジックに敵う興奮ってあるのだろうか。
それから変なスイッチが入ったのか昔のナンパ物を物色するようになったのは言うまでもありません。
終わり。
僕は25歳まで大阪にいて、今では普通の顔してJRを乗り継いだりしていますが、当時は東京の「環状線」とか全くわからなかったし、新宿、渋谷、池袋などの位置関係も全く知りませんでした。
そう考えるとこの漫画、都内周辺に住んでいる人しかわからないんじゃないだろうか。と思ったりします。
大体わかるか。昔のオレが無知だっただけだろうか。
会話の流れがとてもスムーズで気に入っています。
⑤賑やかな街のバーテンダー
2018年頃に描いた漫画です。
ネームはもっと前から描いていて、掃除の時に溜まっているネームを読み返して「面白いな」と思って原稿化したパターンですね。
2019年に短編集を出そうと考えていて、そのために描いたんじゃなかっただろうか。
確かゲッサン編集部に送ったけど「これは別にいらない。」と言われた記憶があります。
何もかもがうまくいくわけではありませんね。
最寄駅の駅前に実際にこういうバーがあって、上がキャバクラだったんですよね。
バーテンダーのおじさんも実際こんな感じで、ラストに100円をおまけしてくれたのも実話です。
僕が席についてから終始帰ってほしそうだったんですよね。
今はそのバーは無くなったけど、キャバクラはまだやってるんじゃないだろうか。
30歳前後の頃はよくバーへ行ってた気がする。
今は全然行かなくなってしまったし、行ってたバーは軒並み潰れてしまいました。
ミックスナッツとラフロイグのロック。
高いのに何が楽しくて行っていたんだろう。大体バーテンダーと話も特に弾まないし。
今は日高屋の方が楽しくなってしまいました。
ホッピーセットにマカロニサラダとイワシフライ。
作中に「出会い系やってます?」ってセリフがあるけど、このセリフもちょっと古くなってしまいましたね。
ネームを寝かせるとこういうことになりがちなので困るところです。
⑥お父さんのアロマキャンドル
色々あって父親のことがすごく嫌いなのだが、大人になり自分も親になったら「父親の偉大さがわかった。」なんてことは全くなく、やはり嫌いだし、改めて彼は間違っていたんだなと思うことの方が多い。
「親を大事にしないと自分も大事にされないぞ。」というような考えに縛られていた時期もあったが、これも絶対違うと思う。奴の人格が完全におかしかったのだ。
時代の流れに翻弄されて大変だったのはある程度理解する。
ガスも水道も電気もまだ十分に通っていない時代だっただろうし。十分な教育を受けられなかったりしたかもしれない。
強烈な劣等感や、差別があったかもしれない。
でもギリギリ奴がおかしかったと思う。
ともあれ関わり合いたくはないものであります。
というような気持ちを描いたものです。
何年かぶりに実家に帰って親と話すとその内容が一切変わっていないことに驚く。
大体金の話。「あの時にいくらかかった。いやあの時はオレが出した。でもあの時困ってたのをオレが助けた。それは覚えてない。」などなど。
金のルーズさによる水掛け論。会話の無限ループが発生して、ああこれが嫌でオレは家を出たんだなと改めて思う。
そして親戚の悪口。20年ぐらい前に言ってた悪口をまだ言ってたりする。
こないだ(といっても2年くらい前か)一番びっくりしたのが父親が「ダウンタウンの浜田はなんで人の頭をあんなにたたくんや。」と言い出したことだった。
オレが小学校ぐらいの時のダウンタウンのイメージから変わっていない!!
最近浜ちゃんそんなに殴らへんし!
父親のことを書こうとすると悪口ばかりになってしまう。
なのでなるべく漫画にして残しておくべきですね。
ちなみにこちらもお父さんのことを描いた漫画です。
2019年に描いた漫画でゲッサンに載せてもらいました。
もっとじじいの身体をうまく描けたらよかったなと思わなくもないです。うーん。
親子で弁当食べてるシーンが個人的には気にっています。
家族の風景。
好きな女の子のTwitterチェックをしているのは本当ですが、喫茶店に実際行ったりしたのはフィクションです。
そんなことするわけないじゃないですか。
⑦婚活刑事 柳瀬まみ子
本当はある商品名が入った漫画をツイッターに載せてて、それを短編集に収録する予定だったのですが、企業先に「電子書籍に収録して売ってもいいですか?」と問い合わせたところ見事に「ダメです。」という返事をいただいてしまったので、急遽描き下ろした漫画になります。
ツイッターには好き勝手書くんですが、それで商売するときはちゃんと連絡するんですよ。僕は。
まあ当たり前か。
突貫工事の描き下ろし。
結構面白いと思うんだけど、あんまりウケた感じがありませんね。
今読み返したら掴みが良くない気がするな。もう少し柳瀬がちゃんと変な奴だとわかりやすくしないと。
セリフも多いしなー。
最後のページもちゃんとロングショットから入らないとわかりづらい気がするなー。
急いだらダメですね。
というわけで短編集「スイートメモリー2」作品解説でした。
2020年はネームをたくさん描いている。
それをひたすら原稿にしていって、また第3弾を出したいと考えています。
2021年ぐらいになんとか出せたら。
やれたかもの続きも出します。
よろしくお願いいたします。
皆さんに見捨てられたら終わりです。
何卒何卒!
よろしくお願いいたします。
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