どうしても自分を曲げられないこと
よく「思ったことを言えない」と書いているのだけど、私は編集者さんに対してはけっこう自分の意見を言う。
「こういう記事どうですか?」というアイデアはガンガン売り込むし、自分の「こうしたい!」という希望は伝えるほうだ。
そういうところを「熱意がある」と評価してくれる人もいるだろうし、「暑苦しい」と思う人もいるかもしれない。
感じ方は人によって違うので、もし相手に「暑苦しい」と思われても、それはしかたないよなぁ……と諦めている。
だけど、相手から「生意気だ」と思われたら嫌だなぁ、とは思う。
アイデアを出すなら、「暑苦しい」と思われることはあっても「生意気だ」とは思われないだろう。
だけど、相手が「こういうふうにしてはどうでしょうか?」と提案してくださったことに対して、「私はこう思います」という反論をすることがある。
もちろん、失礼な言い方にはならないように気をつけている。できる限り相手を嫌な気持ちにさせないよう、言葉は選んでいるつもりだ。今のところ、対人関係のトラブルはない。
けれど、自分の意見を言ったあとはいつも、
「あぁ、せっかくお仕事をくださった方に対して反論するなんて、新人のくせに生意気だと思われたかも……」
と落ち込む。
もしかしたら、納得いってなくても「そうですね。わかりました!」と編集者さんの意見を通したほうが仕事が来るのかも……。
そんなことを思うと、自分を曲げられない頑固さが嫌になる。
言い訳だけど、しいたけ占いに「射手座は自分を曲げられない」と書いてあった。
そうだとしたら、もう諦めるしかない。母が私を産むのがあと数日遅ければ山羊座だったので、また違ったのかもしれない。
◇
そもそも、なぜ日常の中で思ったことを言えない(言わない)のかというと、自分の意見を言うことで嫌な思いをしたことがあるからだ。
子どもの頃から、自分の考えを言っただけで「なんか小難しいこと言ってて意味わかんない」「ちょっと頭いいからってひけらかしててムカつく」と言われることがあった。
大人になってからも、私が自分の意見を言うと、「こいつは自分を論破しようとしている! 負けるもんか!」みたいな闘争心をむき出しにされることがあった(特に男性に多い)。
そういう経験の積み重ねで、「自分の意見を言うことでメリットがある(言わないことでデメリットがある)なら言うけれど、そうじゃないなら言わないに限る」と思うようになった。
別に、だいたいのことは言わなくても済むのだ。
◇
私は今までの日常生活の中で、「思ったことを言えないし、言わなくても平気な人間」だった。
だけど、世の中には「思ったことを言わずにいられない人」というのもいる。
そういう人は人間関係のトラブルが多いし、なんだか大変そうに見える。
思ったことを言える人の中には、思ったことを言ってしまう人もいる。
これ言ったら空気おかしくなるな。
これ言ったら彼女にふられるな。
そうわかっているのに、どうしてもその一言を言ってしまう人。きっと、言わずにはいられないのだ。
私はそれまでずっと、「思ったことを言える人は生きづらさを感じていない」と思っていた。
違う。本当は、ものすごく生きづらいんだ。思ったことを言える人は、「言う」と「言わない」を自分の意思でコントロールできてはじめて、生きやすくなるんだ。
「言ってしまう人」は、「特に言いたくならない人」よりずっと生きづらいんだ。
だけど、この仕事を始めてから、私自身が「思ったことを言ってしまう人」になった(仕事の面でのみ)。
自分がなってみてはじめて、「思ったことを言ってしまう人」の気持ちが少しわかった。
生意気だと思われるのは怖いけど、それでも言ってしまうんだよなぁ。
あと3分何か読みたい気分の方はこちらをどうぞ。山小屋って独身スタッフが多いイメージだけど、意外と既婚者も働いてるんですよね。
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