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連想ゲームで会話を転がす

先日、歌人のなべとびすこさんとスペースで雑談配信を行った。

なべとさんとは一度しかお会いしたことがない。しかもその一度も、イベント時だったため挨拶程度しかできなかった。じっくりお話するのはこれが初めてだ。

だから正直、会話が続くかが心配だった。話題が尽きて、気まずい沈黙が流れたらどうしよう。そう思い、あらかじめいくつかの質問を用意して配信に臨んだ。

しかし結果から言うと、私は用意していた質問を使うことがなかった。2時間と少しの配信の間、会話が途切れることがなかったのだ。

なべとさんが短歌を始めたきっかけ、穂村弘さんのこと、魔法のiらんどやmixiのこと、なべとさんが大学時代に入っていた軽音サークルでの内輪ネタ、進研ゼミのビデオがバチクソ(実際になべとさんがこう表現した)面白かったこと、V6の「学校へ行こう!」のこと、平野紫耀くんのこと、漫画「君に届け」のこと。

話題は次々に展開し、尽きることがなかった。

私は友達と話していても話題が尽きてしまうことがある。なのになぜ、なべとさん相手だと会話が途切れないのか。

その理由を考えてみて、思い当たったことがある。

それは、なべとさんが多用していた「〇〇で思い出したんですけど……」という言葉だ。

たとえば私が、「小さい頃に読んだ絵本で、怪力の男の人がピアノを弾こうとするとピアノを壊しちゃう話があったんです。彼はお豆腐屋さんでお豆腐を崩さずに持つ修行をして、それでピアノが弾けるようになってハッピーエンドだったんですけど、私はその前に一台壊れたピアノがあることを思うと悲しくて悲しくて……」と言ったとき。

なべとさんは私の話に相槌を打ったあと、「今の話で思い出したんですけど、『ぼくらの』っていう漫画にこういうセリフがあって……」と、話題を転じた。

そのように、私がAについて話す→なべとさんがAから連想したBについて話す→私がBから連想したCについて話す……という連想ゲーム形式で会話をしたため、話題が尽きることがなかったのだ。

ひとつの話題で何十分も話すのは難しい。けれど、話題がコロコロ変われば話すことは無限に出てくる。なべとさんは、連想ゲームの要領で話題を転がすのが上手だ。

たとえば彼女は、小学生のときにV6の長野くんと坂本くんが好きだったという話題から、「私、グループのセンターにいるような王道アイドルって好きになったことなかったんですよね。でも平野紫耀くんは好きで……」と続けた。

これでもう、話題はV6から平野紫耀くんへ移る。そこで私が「平野紫耀くんってイケメンとか天然とかダンスうまいとかいろんな要素があるけど、『怪力』って要素が主人公感あっていいですよね」と言うと、「そうそう。〇〇の番組でもこんなことがあって……」「自分の力をコントロールしきれてないところが、能力が開眼したばかりの物語序盤の主人公っぽくていいですよね」と平野くんの話題でひとしきり盛り上がった。

思うに、すぐに話題が尽きてしまうときは、こういった連想がうまくできていないのかもしれない。ひとつの話題を広げるには限度がある。ある程度広がったら、そこから連想した話題に転がしたほうがいいのだろう。

「連想したエピソード」を瞬時に頭の中から引っ張り出すのは、ある程度の集中力がいる。だから相手の話を集中して聞くようになるし、どんな話をしたか、記憶にも残りやすい。いいことだらけだと思う。

私も今後は、相手が「〇〇」と言ったら、相槌を打ったのちに「〇〇で思い出したんですけど……」と話題を転がしてみよう。

少し、会話に対する苦手意識が薄れた経験だった。

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