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ドイツ COVID-19: 感染再拡大と、第二波抑止の現状: ロベルト・コッホ研究所データと生活体験からの考察

7 月下旬、ドイツで再び感染者数が徐々に増加し始めた。それまで1 日平均の新規感染届出数が 300〜500 だったのが、8 月 22 日には 2034 となった。前回 2000 を超えたのは、第一 波が収まりつつあった 4 月末のことだ。こういったことから、第二波は抑制できる という楽観的な意見もある一方で、第二波は既に訪れているという声がドイツでも 大きくなりつつある。実際のところはどうなだろうか。ロバートコッホ国立感染症 研究所(以下 RKI)の状況報告書の分析を基礎に、筆者が日常ドイツで見聞きする ことを加え、まとめてみた。

1. 誰が感染しているのか 

外国旅行からの帰国者:
RKI の報告によるとこの約一ヶ月、感染者の 4 割が外国の旅行先で感染している 。 同割合、第一波の初期には 5 割近くだったが、3 月半ばに出入国が制限されて以来、 ほぼゼロになった。それが 7 月には 2 割、先週には 4 割近くを占めるまでになった。 感染場所で最も多いのがコソボをはじめとする西バルカン諸国、トルコなどだ。これらの国々は 6 月以来再び感染が急増し、危険地域に指定されている。

そもそも危険地域になぜ行く人がいるのだろうか。 相手国がドイツに対し国境を 開けていれば、自由に入国することはできるからだ。 特に前述の国々は、多くの移民系ドイツ 住民の出身国にあたることもあり、往来が盛んだ。夏休みに家族で帰省する人が多 いことは容易に想像できる。問題は、ドイツへの再入国時に課せられる 2 週間の自宅隔離を守らない 人が少なくなく、国内で感染の源となる可能性が高いことだ。西バルカンからの帰 国後、誕生パーティーで他人に感染させた ケースなども報告されている。

またコソボ、トルコに続いて感染が多いブルガリアとクロアチアは、若者に人気の夏の観光地だ。7 月中はまだ危険地域ではなく気軽に旅はできたものの、感染リスクは上昇中だった。こうい った地域からの帰国者は、隔離義務も検査義務もなかった。

プライベートな場:
感染者の6 割はドイツ国内で感染している。外国からの帰国者からうつることも多いだろ う。RKI 研究所はいずれにせよ、家族や友人間などのプライベートな関係間、祝い 事などの集まりなどの感染が著しく増えている、としている。

クラスター:
リスク管理をしっかり行っているせいか一般企業や飲食店などでの大きなクラスターは、久しく聞かない。外での立ち飲みパーティーが感染拡大の源 となると危惧されているが、これに関しては追跡が難しいのか、外飲みクラス ターというのは聞いたことがない。外で大勢で立ち飲みする文化のあるフランクフルトやデ ュッセルドルフなどでは、夏になっても感染率が比較的低く留まっていたので、筆 者は外で飲んでいる限り無害であるという仮説を抱いていた。一方、下述のハンブルクで の感染率の低下が、アルコール飲料販売禁止によるものだとすると、やはり都市部 での感染拡大の一因だったことになる。これに関する研究・評価といったものが今のところ見つからず、外飲みのリスクは何とも言えない状況だ(条件にもよるだろうが・・・)。公営放送の番組で、アルコール販売禁止の効果について尋ねられていた感染症学者は、科学的見地から疑念を示していた。

新学期が始まった州(ドイツは州ごとに夏休み期間が異なる)では、生徒や職員の感染し用心のために全校もしくは一部閉 鎖するケースがいくつかあるようだが、大きなクラスターに発展した例はまだ耳に していない。

少し前までは外国人労働者を多く雇う農場・食品工場での大規模クラスターがあ ったが、こちらは収束しつつある。難民収容施設や宗教的集会でのクラスターは今でも時々起きている。

ドイツでは第一波時に介護施設をはじめとする福祉施設の入所者・職員や、医療 施設の職員の感染がとても多く、問題視されていた。4 月 21 日の週、福祉施設の入所者においては2256 人、職員は 984 人、医療施設職員は 1425 人、あらたに感染者が出た。その後政府は、これら脆弱者およびエッセンシャルワーカーのための感染予防策として、定期的な PCR 検査を開始。これが功を奏してか、施設内感染は随分と少なくなった。全く無くなったわけではないが、8 月 14 日からの一 週間で、各々109 人、159 人、183 人だった。4 月時には全体の 41%占めていたが、 今は 6%弱にまで減少した。

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2. 外国旅行からの帰国者への検査拡大と、陽性率の推移

 旅先での感染増加に対応し、7 月下旬の州保健大臣会議で以下のルールの導入が決まった。
・危険地域(バルカン諸国やスペインの一部の地域ほか、米国をはじめとする約 130 の国)から再入国する旅行者を対象に、空港での PCR 検査を実施していく(8 月 8 日から義務化)。無料。医療保険が費用を担う。これに対応できるよう各空港に 検査所を設置する。
・危険地域でない国からの帰国者であっても、希望し、かつ再入国後 72 時間以内で あれば、近所の開業医の診療所や開業医団体の施設で、PCR 検査を無料で受けられ るようにする。
 
危険地域からの飛行機から降り立った搭乗客は、検査所へ誘導されるという。そ して検査後、結果を知らされるまでの数日は自宅隔離。しかし陰性とわかれば 2 週 間の隔離義務が免除される。帰国前に旅先で検査し陰性証明 を持っていれば、入国 後の検査・隔離は、免除される。

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