【ショートショート】逢鍵
「悪いね。実はもう作ってないんだ」
深く下げた後頭部に店主の言葉が降り注いだ。
「分かっています。誠に勝手なお願いなのは承知しています。そこを何とかお願いできないでしょうか。代金はいくらでもお支払いし…」
「そうなんだよ。やっぱり勝手なんだよ逢鍵なんてものはさ」
その鍵屋が提供していたとされる不思議な合鍵の存在を知ったのは昨日のこと。居ても立っても居られず駆けつけていた。
「もちろんその気持は分かるよ。こういう言い方をしちゃ何だが、逢いに行くチャンスはあったわけだ。いくらでも