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スターリングの公式の証明

公式の基礎

以下の式をスターリングの公式と呼びます。

$$
\lim_{n\to \infty} \dfrac{n!e^n}{\sqrt{2πn}n^n}=1
$$

または一般的には次の表記をします。

$$
n!\simeq \sqrt{2πn}\Bigl(\dfrac{n}{e}\Bigl)^n
$$

 要するに$${n \rightarrow \infty}$$で階乗を指数関数で近似するような公式になります。$${n=10}$$くらいでもそこそこの精度で近似できます。この式は正規分布を導出する過程にも出てくるので理解しておきたいなと思って記事を書いています。寄り道にしては重たい内容ですが、やらないと気が済まないのでやります。

証明

$${n!}$$について対数をとって考えていく。

$$
\begin{split}
log_e(n!)&=log_e(1×2×\cdots ×n)\\
&=log_e1+log_e2+\cdots+log_en\\
\end{split}
$$

ここで、この式は幅$${1}$$、高さ$${log_en}$$のものを無限に足していくことと同じなので、$${f(x)=log_ex}$$のグラフと一緒に描写すると下図のようになる。

これは積分に近似できるので

$$
\begin{split}
log_e(n!)&\simeq\int_{\frac{1}{2}}^{n+\frac{1}{2}}log_exdx\\
&=\Bigl[xlog_ex\Bigl]_{\frac{1}{2}}^{n+\frac{1}{2}}-\int_{\frac{1}{2}}^{n+\frac{1}{2}}dx\\
&=\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)log_e\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)-\dfrac{1}{2}log_e\dfrac{1}{2}-\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)+\dfrac{1}{2}\\
\end{split}
$$

ここで、定数項を$${C}$$にすべてまとめると

$$
log_e(n!)\simeq\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)log_e\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)-n+C
$$

ここから式変形すると$${n!}$$は以下のようになる。

$$
\begin{split}
n!&\simeq\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)^{n+\frac{1}{2}}e^{-n}e^C\\
&=\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)^n\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)^{\frac{1}{2}}e^{-n}e^C\\
&=n^n\Bigl(1+\dfrac{1}{2n}\Bigl)^n\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)^{\frac{1}{2}}e^{-n}e^C\cdots(1)
\end{split}
$$

ここで、$${n→\infty}$$のとき

$$
\lim_{n \to \infty}\Bigl(n+\dfrac{1}{2}\Bigl)^{\frac{1}{2}}=n^{\frac{1}{2}}=\sqrt{n}\cdots(2)
$$

である。また自然対数の底$${e}$$の定義は

$$
e\equiv\lim_{n \to \infty}\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigl)^n
$$

であるので

$$
\begin{split}
\lim_{n \to \infty}\Bigl(1+\dfrac{1}{2n}\Bigl)^n&=\lim_{n \to \infty}\Bigl(1+\dfrac{1}{n}\Bigl)^{\frac{1}{2}n}\\
&=\sqrt{e}\cdots(3)
\end{split}
$$

以上から$${(2),(3)}$$を$${(1)}$$に代入すると

$$
n!\simeq n^n\sqrt{e}\sqrt{n}e^{-n}e^c
$$

定数項を$${a}$$と置くと

$$
n!\simeq a\sqrt{n}\Bigl(\dfrac{n}{e}\Bigl)^n\cdots(*)
$$

この$${a}$$を求めるがこれはウォリスの公式(ここでは証明は割愛)と呼ばれる以下の式を利用し、$${n!}$$を代入で消すと$${a=\sqrt{2π}}$$が導かれる。二重階乗の意味を知らない人は調べましょう。

$$
\lim_{n \to \infty}\dfrac{\{(2n)!!\}^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!}=\dfrac{π}{2}
$$

この式の左辺を変形して階乗が代入できる形にする。ここで

$$
(2n)!!=2^n\cdot n!\\
(2n-1)!!=\dfrac{(2n)!}{2^n\cdot n!}\\
(2n+1)!!=(2n+1)\dfrac{(2n)!}{2^n\cdot n!}\\
$$

になります。証明等は下記サイトを参照した

これを利用して変形すると

$$
\begin{split}
\dfrac{\{(2n)!!\}^2}{(2n-1)!!(2n+1)!!}&=\dfrac{(2^nn!)^2×(2^nn!)^2}{\{(2n)!\}^2×(2n+1)}\\
&=\dfrac{(2^nn!)^4}{(2n+1)\{(2n)!\}^2}
\end{split}
$$

階乗の部分に$${(*)}$$を代入して整理すると

$$
\begin{split}
\lim_{n \to \infty}\dfrac{(2^nn!)^4}{(2n+1)\{(2n)!\}^2}&=\lim_{n \to \infty}\dfrac{\Bigl(2^na\sqrt{n}\bigl(\frac{n}{e}\bigl)^n\Bigl)^4}{(2n+1)\Bigl(a\sqrt{2n}\bigl(\frac{2n}{e}\bigl)^{2n}\Bigl)^2}\\
&=\lim_{n \to \infty}\dfrac{2^{4n}a^4n^2\bigl(\frac{n}{e}\bigl)^{4n}}{(2n+1)\Bigl(a^2\cdot 2n\cdot 2^{4n}\bigl(\frac{n}{e}\bigl)^{4n}\Bigl)}\\
&=\lim_{n \to \infty}\dfrac{a^2n}{2(2n+1)}\\
&=\dfrac{a^2}{4}\\
&=\dfrac{π}{2}
\end{split}
$$

よって$${a=\sqrt{2π}}$$と求めることができ、

$$
n!\simeq \sqrt{2πn}\Bigl(\dfrac{n}{e}\Bigl)^n
$$

が成り立つ。一応条件としては$${n→\infty}$$だが、$${n=100}$$近辺でかなり高精度の近似ができるので実用的な近似式である。

参考


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