見出し画像

ベイズの定理の演習

3問用意しました。練習だと思って解いてみましょう。解答は既約分数に統一しています。

問1.不良品が混ざっている確率

 市場に出回っている充電式乾電池「X」はA社、B社、C社で製造されています。それぞれの市場シェア率は50%、30%、20%である。そしてそれぞれの会社の製品が不良品として返品される割合は1%、5%、10%とのこと。不良品である事象を$${X}$$、それが各会社のものである事象をそれぞれ$${A}$$、$${B}$$、$${C}$$とする。以下の問いに答えよ。
(1)買った製品がB社の不良品である確率を求めよ。
(2)買った製品が不良品であったとき、B社の製品である確率を求めよ。

解答

(1)
B社の確率は30%、不良品の確率は5%なので

$$
\begin{split}
P(X∩B)&=P(B)×P(X|B)\\
&=\dfrac{30}{100}×\dfrac{5}{100}\\
&=\dfrac{3}{200}
\end{split}
$$

(2)
ベイズの定理を用いて行う。(忘れた人は導出までやってみましょう)

$$
\begin{split}
P(B|X)&=\dfrac{P(B)P(X|B)}{P(A)P(X|A)+P(B)P(X|B)+P(C)P(X|C)}\\
&=\dfrac{\dfrac{30}{100}×\dfrac{5}{100}}{\dfrac{50}{100}×\dfrac{1}{100}+\dfrac{30}{100}×\dfrac{5}{100}+\dfrac{20}{100}×\dfrac{10}{100}}\\
&=\dfrac{3}{8}
\end{split}
$$

つまり不良品のうち8個に3個はB社のものだということですね。

問2.病気に罹患している確率

 10000人あたり100人が罹患している新型感染症Yがある。
Yに罹患している人は90%の確率で陽性と診断され、罹患していない人も5%の確率で陽性(偽陽性)と診断される。
Aさんの会社でこの感染症Yの検査を一斉に行うことになり、Aさんは陽性と診断された。
このとき、Aさんが本当に感染症Yに罹患している確率を求めよ。罹患している事象を$${Y_1}$$、していない事象を$${Y_2}$$、陽性と診断される事象を$${A}$$とする。

解答

某ウイルス関連でもよく話題になる偽陽性の話です。これもベイズの定理を使って考えます。

$$
\begin{split}
P(Y_1|A)&=\dfrac{P(Y_1)P(A|Y_1)}{P(Y_1)P(A|Y_1)+P(Y_2)P(A|Y_2)}\\
&=\dfrac{\dfrac{1}{100}×\dfrac{90}{100}}{\dfrac{1}{100}×\dfrac{90}{100}+\dfrac{99}{100}×\dfrac{5}{100}}\\
&=\dfrac{2}{13}
\end{split}
$$

 つまり陽性と診断されて実際に病気にかかってる確率は15%くらいなんです。「全員検査しても意味ない」と言われていたのはこれが理由ですね。

問3.モンティ・ホール問題

 プレーヤーの前に閉じた3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。

ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。
ここでプレーヤーはドアを変更すべきだろうか?

『Parade』1990.9.9

解答

超有名な確率の問題ですね。状況を設定しながら考えます。
プレイヤーが最初に選んだ扉に景品がある事象を$${A_1}$$、モンティがはずれの扉を公開した事象を$${B}$$、残った扉に景品がある事象を$${A_2}$$とする。ここでベイズの定理より

$$
P(A_1|B)=\dfrac{P(A_1)P(B|A_1)}{P(A_1)P(B|A_1)+P(A_2)P(B|A_2)}
$$

この式は「$${B}$$という確率変数が起こった後で$${A_1}$$が起こった」確率を計算しています。$${P(B|A_1)}$$は「$${A_1}$$が起こった後で$${B}$$が起こる」確率、すなわち「プレイヤーが正解の扉を選んだあと、モンティが残った2択の扉どちらを開示するか」という確率になります。なので$${P(B|A_1)=\dfrac{1}{2}}$$になります。同様に$${P(B|A_2)}$$を考えますが、これは「プレイヤーが選ばなかった扉に景品が入っている場合」なので開示される扉は1択に決まります。よって$${P(B|A_2)=1}$$です。$${P(B|A_1)}$$と$${P(B|A_2)}$$では扱っている状況が違うのでここが難しいポイントですね。計算式に代入すると

$$
\begin{split}
P(A_1|B)&=\dfrac{P(A_1)P(B|A_1)}{P(A_1)P(B|A_1)+P(A_2)P(B|A_2)}\\
&=\dfrac{\dfrac{1}{3}×\dfrac{1}{2}}{\dfrac{1}{3}×\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}×1}\\
&=\dfrac{1}{3}
\end{split}
$$

よって扉を変えなかった場合$${\dfrac{1}{3}}$$の確率で景品が手に入ります。それでは、扉を変えた場合も同様に計算してみましょう。

$$
\begin{split}
P(A_2|B)&=\dfrac{P(A_2)P(B|A_2)}{P(A_1)P(B|A_1)+P(A_2)P(B|A_2)}\\
&=\dfrac{\dfrac{1}{3}×1}{\dfrac{1}{3}×\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}×1}\\
&=\dfrac{2}{3}
\end{split}
$$

つまり、扉を変えた場合$${\dfrac{2}{3}}$$の確率で当たるので結論は「選ぶ扉を変えた方が2倍当たりやすい」となります。感覚的には「扉を変えても結局2択を迫られてるから同じでは?」となりそうですが実際は偏りがあることが示せました。この問題が提起された当時はかなり議論されたらしいです。

 ベイズの定理は以上のような問題で威力を発揮します。式を暗記するだけでなくそのイメージも同時に身につけましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?