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1-6 細胞死について

 細胞分裂の目的の一つに、死んだ細胞を補充することが挙げられる。ここでは細胞がどのように死んでいくかについてまとめていく。


細胞死の種類と目的

 細胞が死ぬ方法は2つある。ひとつはネクローシスであり、毒素による損傷や栄養素の不足によるものである。所謂"炎症"を伴う形で膨らんで破裂し、内容物を放出することで完了する。
 もうひとつはアポトーシスである。これは損傷などとは異なり、遺伝的にプログラムされた、つまり予定されている細胞死である。以下に2つの細胞死の違いをまとめる。

$$
\begin{array}{l|c|c}
&ネクローシス&アポトーシス\\ \hline
シグナル&\begin{array}{}低酸素、毒、\\ ATP枯渇、損傷 \end{array}&\begin{array}{} 特異的、遺伝的にプログラム\\ された生理的なシグナル\end{array}\\ \hline
ATP要求性&不要&必要\\ \hline
細胞内様式&\begin{array}{}膨張、小器官の崩壊、\\組織死\end{array}&\begin{array}{}クロマチン凝縮、\\膜ブレブ形成、単細胞死\end{array}\\ \hline
細胞膜&破裂&ブレブ形成\\ \hline
細胞死後&白血球による捕食&隣接細胞による取り込みなど\\ \hline
炎症の有無&あり&なし
\end{array}
$$

 ネクローシスはともかく、アポトーシスする理由は何だろうか。考えられる理由は以下の通り。

  • 細胞が生体にとって必要なくなる場合。

  • 遺伝子損傷する可能性が高い場合

 前者はヒトの胎児は出生前、指の間に水かき(結合組織)が存在しているが、生まれた後は必要ないためアポトーシスを起こすなどの例がある。後者については、遺伝子が損傷するとp53やp21などの癌抑制遺伝子が機能しなくなり癌化する恐れがあることからも容易に想像できる。血液細胞や腸の上皮組織などは有害物質にさらされやすく、このような細胞が損傷する前に細胞自ら数日~数週間で自殺する

アポトーシスの機序

 アポトーシスの機序は多くの生物種で類似している。まず細胞は隣接している細胞から隔離され、その中でクロマチンがヌクレオソーム単位まで切断される。そして、最終的には小さい膜構造として分裂するが、これをブレブという。

 このブレブは周囲の細胞に取り込まれ資源として再利用される。

遺伝的シグナル

 細胞周期と同様に、細胞死の周期やタイミングも内部や外部からのシグナルで制御されている。有糸分裂シグナルの欠如やDNA欠損を認識して細胞死の誘導が始まる。
 外部シグナルは受容体タンパクに結合しカスパーゼという酵素群を次々に活性化し反応を進行させる。内部シグナルも同様の機構だが、結合するのはミトコンドリアである。
 カスパーゼは核膜、ヌクレオソーム、細胞膜を分解する。このシグナルを利用して抗癌剤などが開発される。

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