1-1原核細胞と真核細胞の分裂
単細胞生物と多細胞生物の分裂はその基本的な目的が異なる。前者は繁殖するために、後者は成長や組織の修復に際して、細胞分裂という手段が用いられる。
細胞分裂するために必要な4つのステップ
増殖を促すシグナルが必要
DNAや細胞内小器官の複製によって新しい2つの細胞が同一の遺伝子と完全な機能を備えている。
複製したDNAを2つの娘細胞に分配する過程が必要。(分離と呼ばれる)
細胞膜の再構築(細胞質分裂と呼ばれる)が行われ、新しい細胞に分離すること。
これらの過程は原核細胞と真核細胞で少し異なる。
原核細胞の分裂
原核細胞は分裂して細胞全体が複製される。この過程を二分裂と呼ぶ。
増殖シグナル
大腸菌の分裂は37℃の条件で40分かかるが、炭水化物やミネラルなどの栄養分が存在する場合20分で分裂することもある。枯草菌に至っては栄養供給が少ないときは分裂を停止する。これらのことから、原核生物の細胞分裂は何かしらの外的要因をシグナルとして制御されていることが示唆される。
DNAの複製
ほとんどの原核生物は染色体を1つ持つ。大腸菌では環状DNA(環状染色体)がそれにあたる。負に帯電した酸性のDNAが正に帯電した塩基性のタンパク質に結合して折りたたまれている。原核生物の染色体複製において、以下の領域が重要な役割を果たす。
$${ori}$$(複製起点):複製が開始される場所
$${ter}$$(複製終結点):複製が終了する場所
まず初めにDNAが細胞の中心に位置する複製複合体に取り込まれる。ここにはDNAポリメラーゼなども含まれる。この複製の進行と同時に細胞が成長する。
DNAの分離
細胞の分裂に際して複製された2つのDNAが分離するが、このとき、$${ori}$$領域が複製の場である細胞の中心から両端に移動する。イメージとしては複製された2つの$${ori}$$領域を持って左右に裂く感じ。
$${ori}$$領域に隣接するDNAはこの分離に必須なタンパク質と結合し、ATPの加水分解からのエネルギーを使って移動する。
細胞質分裂
染色体の複製が終了した後、細胞質分裂が起こる。チューブリンに似たタンパク質から構成される繊維構造が環構造を形成し、細胞膜の陥入が起こる。この後に細胞壁が合成され、2つに分かれる。
真核細胞の分裂
有糸分裂と呼ばれる分裂様式を取る。詳しくは別記事。原核細胞との相違点は
環境を整えたとしても無限に分裂するわけではない。特に真核細胞は特殊化されていることが多く、分裂シグナルに関しても生体全体の必要性と密に関係している。
原核細胞は通常、主要な染色体を1つだけ持っているが、真核細胞は通常多数の染色体をもつ。ヒトは46個。このために複製や分裂の過程が複雑化している。詳しくは別記事。
真核細胞は核を有しているために、それぞれに染色体を1セットずつ分配する必要がある。
真核細胞では細胞質分裂は遺伝物質の分離のステージと明確に区別されており、核全体の複製が終わってから起こる。
細胞壁を持つ植物細胞と持たない動物細胞で様式が異なる。
減数分裂
有性生殖に絡んで配偶子を作る細胞でのみ起こる分裂。有糸分裂で生じた細胞は遺伝的に同一であるのに対し、減数分裂の場合は遺伝的に同一でない細胞が生じる。組み換えなどによって多様性が生じる。
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