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Hisタグについて

Hisタグ(ヒスタグ、ヒスチジンタグ)は、6個程度の連続するヒスチジン (His) 残基からなるタグペプチドの一種。タグペプチドは単独で発現させるレポーター遺伝子等と違い、目的とするタンパク質の生理的・物理化学的性質に影響を与えてはいけないので、目的タンパク質の末端につけるのが普通であり、またなるべく低分子量のものが望ましい。

一般にタンパク質はその表面で金属イオンを配位する性質を多少なりとも持っており、その親和性の差を利用したクロマトグラフィーによってタンパク質を分離することが可能である。これが1975年に発表された固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーである。その後の研究で、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、特にヒスチジンが金属イオンとの配位結合に強く関わっていることがわかってきた。そこで遺伝子工学によりタンパク質の末端にヒスチジンを多数付加すれば、そのタンパク質の金属イオンに対する親和性が著しく増大し、容易に精製が可能になるというのが基本的な考え方である。Hisタグを持つタンパク質がpH 8以上の条件でニッケルなどの金属イオンが固定化された担体と接すると、ヒスチジン残基が金属イオンをキレートすることで担体に結合する。それ以外のタンパク質は担体には結合しないか、ごく弱く結合するのみであるので、適切なバッファーで担体を洗浄することで除去することができる。その後、イミダゾールを添加するなどして担体から外すことで、Hisタグを持つタンパク質を高い純度で回収することができる。

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