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中国の「スマートベンチ」から思ったこと

最近中国の公園に続々導入されている「スマートベンチ」なるものがあるそうだ。このベンチ、太陽光発電を備えており、無線充電もできるし、USBもついている。またBluetooth通信対応音響システムも備わっており、手持ちの端末とペアリングをすることで自分の好きな音楽をベンチのスピーカーで鳴らすことができる。椅子の下部にはLEDライトが付いていて、将来的には、WiFi通信もできるようになるという。

実際の風景を想像してみよう。公園に行く。「あー、携帯のバッテリーがもう数% だぁ」なんて時にも、充電の心配もない。「公園で、彼女と話をしている間に、好きな音楽が流れていたらいいなぁ」なんて時は、スマホの音楽をベンチのスピーカーから流し、いい雰囲気になれる(周りには迷惑かけない程度に…)。夜のデートには、足下からいい感じの光もある。将来は、公園でパケットを気にせず、WiFiを繋げ、ゆっくりできるのだ。

聞いただけで、「便利じゃない?」と思うのだけれど、中国らしいオチもある。それは、夏の暑い日はソーラーパネルの座面部分が高温になっているので、座る時にはヤケドに注意が必要だということだ。

ここで、はたと考えてみた。日本だったら、この発明品、実用化するだろうか? 多分ノーである。最後の注意点、「夏の暑い日でのやけど」がクリアーできない限り、この商品は市場に出回らないような気がする。

これまでバラエティ番組のコーディネーションをしているが、中国は実におバカな発明が多く、多くの番組に数々の面白いネタを提供してきた。人口が多いので、変な人が多いと言ってしまえばそれまでだが、そのアイディアによって生み出された素晴らしい商品も多いことだろう。

実際に、世界の特許出願件数増加は中国が牽引し、中国の特許出願件数が世界全体の半分近くになっているという。2020年の統計では、中国が2年連続首位の座を占めている。日本の出願件数は世界3位だが、ここ数年伸び悩みが続いている状況だ。毎年の出願件数は、国家や企業のイノベーション能力を示す重要な指標と見なされており、それからすると、中国の発明をおバカだと笑っている余裕はないはずだ。

数年前、日本の若き女性発明家・藤原麻里菜さんを、香港のメディアが取材し、それに同行したことがあった。あえて役に立たないモノを発明している彼女であるが、その発想力やセンスには目を見張るものがあった。彼女の人気は今や世界にも広がっており、台湾でも個展を開き、大盛況だった。日本にもこういった人が存在する。

ただ、社会の体質がちょっと違うのかもしれない。まず世に出してみて、色々な情報を集めて修正しながら、よりよくしていくやり方の中国社会。あれこれ細かいことに思考を巡らせ、完璧にならないと表に出せない日本社会。発明を受け入れる土壌は中国社会の方があり、多くの発明品が次々と生み出されているのだろう。

先日のnoteにも書いたが、それぞれがワクワクして創造していくことは、本当に大切だと思う。おバカなタネが、大きな世の中の変革をもたらすことになるかもしれない。中国のスマートベンチ、いつか改良されて、日本にも入ってくる日が来るかもしれない。


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