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サラダバス
地球の9割が砂漠となり深刻な食糧不足が慢性化した今、
サラダバスだけが、渇ききった世界の唯一の救いだ。
サラダバスは忽然と遠くの陽炎から街に現れては、新鮮な野菜を車体後部に設置された配給口からドサッと乱暴に落として、瞬く間に陽炎の先へと消えていく。
サラダバスの正体を知る者は誰もいない。
噂では、サラダバスの真相を突き止めようと挑んだ街に、
サラダバスが再び訪れることはないらしい。
サラダバスなしでは街は枯れてしまう。
サラダバスに関わることは禁忌なのだ。
街では今日もサラダバスの来訪を願う儀式が行われている。
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その頃、サラダバスは帰路に就いていた。
「どうやら俺たちは、神をも超える存在となりつつあるらしい。」とハンドルを握るチンパンジーは笑った。
「ヒトはいつだって、祈りと争いでできているのよ。」と助手席のキツネザル。
「あいつらは絶滅の恐怖を知らない。あるだけ使うのがヒトだ。」シロサイはいつでも冷静だ。
「いいか。この街のことは絶対に知られるな。あいつらは奪う種族だ。」とトラが釘を刺した。
サラダバスは廃れた動物園のゲートをくぐった。
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