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子供は今も名前を我慢してばっかりだ

選択的夫婦別姓に反対する人たちは、その理由として「親子別姓になる子供がかわいそうだから」を挙げる人が多い。夫婦がどちらも改姓せずに結婚すると、その子供は夫婦どちらかの名字と同じで、どちらかの名字と違うことになる。いわゆる親子別姓だ。

今日、私宛に次のようなコメントが届いた。

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確かに、子供が「パパママと同じ名字がいいよう!みんな一緒がいいよう!」って泣いたら、私たちはどうすればいいのだろう。やっぱり「我慢なさい!」って言うのだろうか。

いや、待てよ。旧姓を通称として使うのが当たり前になっている現在の日本においては、子供にこんなことを言われるかもしれない。

「人前で旧姓を名乗らないでよう! みんな一緒がいいよう! 戸籍の上では一緒だって言われても、子供なんだから見たこともないよう!」

そう言えば、男女共同参画大臣に就任した丸川珠代氏は、選択的夫婦別姓に反対しているが、普段名乗っている丸川というのは旧姓で、戸籍姓は大塚なのだそうだ。子供が「旧姓を名乗らないで」って泣いたらどうするつもりなのだろう。子供の気持ちを尊重せず、やっぱり「我慢なさい!」って言うのだろうか。

いや、待てよ。もし選択的夫婦別姓制度ができて、夫婦別姓の家庭が増えたら、子供にこんなことを言われるかもしれない。

「うちは夫婦別姓がよかったよう! ○○くんちのパパとママは夫婦別姓なんだよう! ぼくも『堺雅人と菅野美穂の子供』的な感じにしたかったよう!」

さて困ったぞ。子供の気持ちを尊重するなら、夫婦同姓じゃなくて、夫婦別姓にしないといけなくなった。やっぱり「我慢なさい!」って言うしかないのか。

そう言えば、選択的夫婦別姓に賛成する女性たちからは、こんな話を聞いたことがある。「私の名字の方が珍しかったのに、旦那の名字に変えさせられちゃったのよね」。これが事実だとするならば、子供にこんなことを言われるかもしれない。

「パパじゃなくてママの名字の方が珍しくてよかったよう! クラスで名字がかぶってるんだよう! ママの名字だったら、あの子と出席番号が近かったんだよう!」

さらに困ったぞ。子供の気持ちを尊重するなら、夫婦揃って改姓し直さないといけなくなった。

いや、待てよ。名字だけじゃなくて、下の名前にも文句を言われるかもしれない。

「もっとかっこいい名前がよかったよう! 名字が佐藤なんだから、名前は『健』がよかったよう! 『二朗』だとお笑いっぽくなっちゃうよう!」(佐藤二朗さん、ごめんなさい!)

さてさて...困った困った。

そう言えば、小説『赤毛のアン』の主人公アンは、自分の名前が Ann でなく Anne と「e」が付くことを誇りに思っている、という設定でしたね。この小説に基づくNetflixドラマの原題は「Anne with an “E”」だそうです。ユニークな名前が、孤独だった彼女の心の支えになりました。

ということで、いろいろと考えてきましたが、今も昔も子供たちにとって「名前」とは、親から与えられ、好き嫌いにかかわらず、その後の人生を共にするものなのですね。

親として、子供の気持ちを尊重したいところではありますが、その限界があることにも気付かされます。では、親ができることはなんでしょうか。

まず、心を込めて名前を付けること。次に、いつかこの名前を誇りに思ってくれる日が来るよう、愛情を持って育てていくことではないでしょうか。

子供たちはその名前と共に人生を歩んでいく中で、数え切れないほど多くのことを経験し、自分の名前に様々な思い入れを抱くようになっていきます。

そんな人生の伴侶とも呼べる名前が、結婚によって強制的に変更されたりしないよう、選択的夫婦別姓制度を実現していきたいですね。

同姓にしたい人は夫婦同姓を、改姓したくない人は夫婦別姓を選べる社会に。実現まであと一息です。

「夫婦別姓にすると子供の名字はどうなるの?」と、その続編「夫婦別姓家庭の子供は犠牲になるのか?」も併せてお読みいただけるとうれしいです。


※「赤毛のアン」の原題表記が間違っていたので修正しました。(2021/04/06)

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