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【和田よしあき国会だより2023.10.8】

中国の日本産水産物「禁輸」について

IAEA(国際原子力機構)の基準を十分クリアした上で、日本政府が放出の決断をした福島第一原発のALPS処理水。ALPS装置で除外しきれなかった唯一の放射性物質であるトリチウムの濃度は、放出前に希釈されて日本の飲料水の安全基準の1/7、WHO(世界保健機構)の基準の1/40のレベルに抑えられています。
 
岸田総理がASEANやG20など国際会議の場で国際社会の理解をしっかりと勝ち取っていますが、中国に限り科学的根拠とWTOのルールを無視して日本の水産物の輸入を禁止しました。中国の禁輸はあらゆる観点から「不当」であり、WTO違反です。そもそもALPS処理水は中国の原発排出より格段にトリチウムの値が低く、中国にとやかく言われる筋合いはありません。

↑ALPS処理水基礎資料 外務省ホームページより

【政府の漁業を支える対策】
政府は日本の漁業を中国の禁輸による混乱から守るべく迅速に1007億円の緊急支援を決定しました。この際、日本のホタテを中国で加工して米国に輸出するなど、中国を経由していたこれまでの商流を改める検討も進められています。
 
【中国政府が愚かな禁輸に踏み切った背景】
習近平主席は現在国内で苦境に立っています。恒大など不動産大手企業が破綻したり巨額債務を抱えて経営難に陥ったりするなど、不動産バブル崩壊に端を発した金融不安が深刻です。経済成長も鈍化しています。香港に拠点を置く投資銀行は既に投資対象を中国の外にシフトしています。
 
新興企業の活気も、アリババのジャック・マーのように成功すれば政府に咎められるので一頃の勢いはありません。極め付けは若者の失業率が20%台後半に迫るとの見方すらあることです。コロナ禍で日本の失業が増えたと言っても4%でしたから、中国の失業率は完全に異常事態です。
 
半導体など国際競争力を左右する戦略物資を日米などで中国に対して輸出禁止していることも、また日米欧などが研究開発関連情報の漏洩・詐取に対して厳しく対処していることも中国の痛手になっています。これは中国の兵器に転用される恐れのある戦略物資を安全保障の観点から供与しないということと、これまで結果的に黙認してきた技術情報の詐取を許さないという観点からも当然の対応です。
 
【日本政府の取るべき姿勢】
中国は内政が厳しいと、日本など隣国を糾弾して中国国民の目を欺き、危機を乗り切る悪しき傾向があります。しかし、あまり中国を追い詰めると、それこそ台湾有事の引き金にもなりかねません。
 
日本は国際社会の盟主として、WTOの裁定を仰ぐなど国際ルールに則り紳士然と対処することが肝要です。一方、中国に対する対抗措置は常に準備し、必要に応じて発動させることも必要です。特に日本の製薬会社の社員が中国当局に不当に拘束され続けている事実もあり、日本国民に危害を加えることは許さないという覚悟を示す必要があります。

【我々はこの経験から何を学ぶのか?】
我が国が中国に何らかの形で依存することは、自ら中国に人質を差し出すことに等しく、突発的に生じ得る「チャイナ・リスク」を特に経済界で直視する必要があります。
 
経済産業省は2020年からこうしたチャイナ・リスクに対処するべく、毎年1兆円規模の予算を投じて戦略物資の商流を中国を絡めない形で再構築するよう支援しています。彼の国に何かを人質に取られても国家が、日本経済が、しっかりと回るようにする為です。

中国と取引をする、中国に投資をする、ということをゼロにする必要はありません。しかし彼の国とビジネスをするということは、企業がリスクを織り込むという経営判断をしていることに他なりません。ですから、今、企業として投資すべきはチャイナ・リスクで致命傷を追わない商流やポートフォリオを再構築することです。中国政府がいかに不当な対応をしようとも、すべての経営判断に政府が補償するということにはならないでしょうから。

ガソリン価格高騰対策

高騰が続くガソリン価格は我々の可処分所得を圧迫し、事業の利益に厳しい影響を及ぼしています。ガソリンが高い、という事実を完全に解消することは困難ですが、政府はこれまで以上にガソリン価格に関する経済支援を強化しています。
 
政府は9月6日まではレギュラーガソリンの価格が…
168円/ℓを超える金額に対して30%
193円/ℓを超える金額に対して85%
…補助してきました。
 
これを9月7日以降は
168円/ℓを超える金額は同じく30%
185円/ℓを超える金額は100%
…補助することにしました。
 
更に、10月中旬には
168円から185円までの間の補助率を30%から60%にアップ
185円/ℓを超える金額は100%で据え置き
 
…とし、これを今年末まで継続します。

↑燃料油価格激変緩和補助金 資源エネルギー庁ホームページより 

この補助がなければレギュラーガソリンの価格は今日205円を優に超えているでしょう。そして現在の日本のガソリン価格は米国や英国、多くのEU諸国より安い価格に抑えられています。

ガソリン価格が高止まりしている最大の原因はサウジアラビアなどの産油国が生産量を抑制し、価格を意図的に高止まりさせていることです。政府が近年再エネを推進し、原子力発電所の再稼働に動く背景には、環境対策に加え、こうしたエネルギー安全保障上のリスクを少しでも低減させる狙いがあります。

エジプト・イスラエルの停戦監視団を激励

8月22日から24日、政府の平和維持活動担当副大臣として、エジプトのシナイ半島に駐留する多国籍部隊監視団(MFO)を激励。とりわけ、日本から派遣されている自衛隊員4名とこれを支える自衛隊の連絡調整員の活動環境を確認すると共に、MFOのディブル事務局長(トップ)と今後のMFOのあり方を議論しながら中東情勢の情報収集も行いました。

↑MFOに派遣されている隊員と共に。
↑MFO本部にてディブル事務局長(代表)と。

1948年から1973年までイスラエルとアラブ連盟の間で勃発した中東戦争。米国などの仲裁により1979年にイスラエルとアラブ連盟の盟主エジプトが平和条約を締結。1982年より米国を中心としたMFOが停戦監視を担い、今日に至ります。日本は1988年より平和維持活動に資金を拠出し、2019年より司令部要員を派遣しています。

ロシアとウクライナの戦争で資源や食糧が高騰し、国際社会の有り様が大きく変わってしまったように、ガラス細工のように不安定な中東和平が崩れたら日本への影響は甚大です。南スーダン同様、日本の国益の為に辺境の地で汗を流して粛々と任務を全うしている自衛隊員や政府関係職員がおり、頭が下がります。副大臣として現場を見て正しく理解すること、MFOに日本の平和維持への決意を示すことができた出張でした。

↑MFOキャンプからシナイ半島内陸部の土漠を臨む。

以上です。
今月も最後までお読みいただきありがとうございました!

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