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指定難病の実態

前回、指定難病をめぐる問題の所在は、限られた医療費財源を、どの難病・重症度等の患者まで分配するかにあることを述べた。今回は、指定難病の実態がどのようになっているか、対象疾患や患者の数、医療費助成の予算、難病患者一人あたりの医療費などについて確認する。


【指定難病と患者の数】かつての6倍に対象疾患は増加したが・・・
令和元年7月1日現在、333の疾患が指定難病となっている。かつての特定疾患治療研究事業から、現在に至るまで、下記のように対象疾患の拡大が行われてきたことは評価に値するが、全世界で7,000あるといわれる難病の一部しか対象となっていないことも事実である。

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2015年から始まった新たな難病対策より引用)

そして、平成29年末現在、約89万人に特定医療費(指定難病)受給者証が交付されている。


【特定医療費助成制度の予算】かつての2.5倍に予算は増加したが・・・
令和元年度の特定医療費(難病)助成の予算は1,084億円となり、難病法施行前の平成25年度の予算440億円と比べると約2.5倍となっている。2018年度の国民医療費42.6兆円の約2.5%が難病助成に充てられていることになる。

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難病患者及び小児慢性特定疾患児童等に対する医療費助成制度についてより引用)
単純に医療費助成の予算を、特定医療費受給者証の所持者数で割算し、一人あたりの助成金額を算出すれば、年間で約12万円、月額1万円となる。


【難病患者の一月あたりの医療費総額の分布】
医療費助成を受けないと仮定した場合、難病患者の半分が月額4.5万円以下の医療費負担となる。しかし、月額30万円以上の負担となる患者が1割程度いることから、平均の月額医療費は13.3万円となっている。

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第1回 指定難病検討委員会資料 参考資料3より引用)

【医療費助成における自己負担上限額(月額)】
日本の一般的な世帯年収は約440万円で、下記の階層区分では「一般所得Ⅱ」に該当する。その場合の自己負担上限額(月額)は、通常2万円となる。それに対して、「難病患者の一月あたりの医療費総額の分布」でみたとおり、難病患者の4割前後は4万円以下の月額医療費となっており、当該患者の医療費に対する自己負担比率は半分以上となる。

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指定難病患者への医療費助成制度のご案内より引用)


【今後の議論の方向性】
医療費助成の財源が限られる中で、今後、対象疾患や患者数を増やすとすれば、自己負担額上限額は引き上げられる方向になるであろう。
そのようにならないようにするためには、またそのようになった場合でも自己負担を抑制するためには、早期発見、早期治療(難病の場合、対処療法にならざるを得ない場合も多いが)を行ったり、過剰診療の恐れがあればそれを回避したりして、医療費の増加を抑制する方向性や、就労余地のある患者の就労継続支援をする方向性を模索することが効果的と考える。

※上記は、個人の見解であり、所属する組織の見解ではありません

<謝辞>
指定難病制度の方向性に不透明感がある中でも、患者は前を向いて生きなければならない現実を表現できる写真をtaketake1309さんから拝借致しました。理学療法士さんということで、強直性脊椎炎とのご縁を感じました。有難うございます。

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