見出し画像

メジャーリーグ(MLB)チームの名称変更

メジャーリーグ(MLB)の1チームが、2022年シーズンからチーム名を変更します。変更すると聞いて「商標登録は出来ているのか?」と思った方、知的財産に長けていますね!
そう、企業でもそうですが、名称が変わる前に「商標」の権利を取得しブランドを保護するべきですね。特にMLB等のスポーツチームの場合、グッズの展開など考えた場合、商標権は確保するべきですね。

2022年シーズンより名称変更するのは、米国オハイオ州のクリーブランド・インディアンス(Indians.com)です。米国における人種差別への関心が高まる中、同チームは2020年、先住民を意味する「インディアンス」から名称変更する旨表明していました。その後、2021年7月、クリーブランド市にある橋の中程にある像「ガーディアンズ・オブ・トラフィック(Guardians of Traffic)」に由来する、クリーブランド・ガーディアンズに変更すると発表しました。

米国の法律関連ウェブサイト「Above the Law」にて、「Did The Cleveland Indians Commit A Colossal Misstep With Rebranding To The Guardians?(クリーブランド・インディアンスは、ガーディアンズへのブランド変更で大きなミスを犯したのか?)」という記事が掲載されました。

記事を要約すると、ClevelandGuardians.comは既に同市の別のスポーツチームが登録・使用しており、Guardians.comも第三者登録(For Sale)となっていると指摘しています。ちなみに、Cleveland.comも別の登録者にて登録・使用されている(クリーブランド市に関するオンライン情報サイト)と言うものです。
つまり、チームが今後使用するドメインネームはどうするのか?という疑問を投げかけているのでしょう。

ガーディアンズ

米国特許商標庁(USPTO)のデータベースを確認すると、2021年7月23日にファイリングされた以下の商標はCleveland Indians Baseball Companyによるものだと分かります。

1  90844557  CLEVELAND GUARDIANS   
2  90844551  GUARDIANS
3  90844550  CLEVELAND
4  90844548  GUARDIANS
5  90844546  CLEVELAND GUARDIANS
6  90844544  GUARDIANS
7  90844543  C
8  90844542  G 

商標は登録したがドメインネームは登録できていない。さて、どうしましょう。と言ったところです。
ClevelandGuardians、Guardians、Clevelandとは完全一致しないドメインネームでの展開をするしかないでしょう。

商標は、基本45区分(異なる管轄有り)に分類されているため、名称が重複しても登録できる可能性があります。他方、ドメインネームは、1ドメイン一登録者とされているので、クリーブランド・インディアンスが新名称でドメインネームを登録する事は非常に難しいでしょう。

想定されるのは以下の何れかです。
1. Cleveland、Guardians、ClevelandGuardiansと完全一致しない文字列(String)にてドメインネームを登録する
2. Guardians.comの登録者から買い取る
3. オンライン戦略を止める

3のオンライン戦略を止める、と言うのは論外でしょう。既に21世紀も1/5が過ぎています。これまでIndians.comで行ってきたオンライン展開を今更止めるなんて!論外です(ですよね?)
2のGuardians.comの登録者からドメインネームを買い取るのは、これまでIndians.comという「チーム名+.com」でウェブサイトを運営してきた状況から判断して、今後のオンライン戦略を考えると重要ですね。ただしGuardianは、守護者とか保護者という「一般名称」のため取引額は高額になる可能性があります。
では、上述1の場合ですが、MLB30チームで、「チーム名+.COM」以外のドメインネームで運営をしているチームがあるのか確認をしました。27チームは「チーム名+.COM」ですが、ミネソタ・ツインズ、タンパベイ・レイズ、サンフランシスコ・ジャイアンツの3チームは、「チーム名+.COM」が第三者登録となっており、以下の通り別の文字列でドメインネームを登録しています。

Minnesota Twins → twinsbaseball.com
Tampa Bay Rays → raysbaseball.com
San Francisco Giants → sfgiants.com

と言う事は、新名称のクリーブランド・ガーディアンズにおいても、別の文字列で登録・運営するかも知れないですね。Guardiansbaseball.comは2018年に登録(登録者不明)されているので、クリーブランド・ガーディアンズの登録によるものか不明ですが、このドメインネームなるかも知れないですね。

長々とMLBチームのドメインについて書きましたが、これは、あらゆる規模の既存の法人やスタートアップにて応用できる事例です。大手法人が新製品や役務を公表する際、商標は取れたがドメインネームが第三者登録であり、ネーミングからやり直したケースや、スタートアップが会社名やブランド名を商標登録したが、ドメインネームが登録出来ず完全一致しないもので登録した、と言うようなケースです。
新規プロジェクトの開始時や、企業をする際には、商標登録とドメインネームの両方の登録を考慮し、両方で登録可能なものにするべきです。

コロナウィルスによりオンラインでの取引が増加した現在、これまでよりも偽ドメインネームによる詐欺サイト発生等の可能性が高まり、ブランド名と一致するドメインネームの重要性は増したと言えるでしょう。日本企業であれば、.COMなのか、.JPなのか、海外進出をする場合どのドメインにするのか等、文字列の考察だけでも結構大変です。たかがドメインネーム、されどドメインネーム。オンラインでの展開は益々重要になるので、(商標等と同様に)専門家にご相談されるのが良いと思います。

画像3

ちなみに余談ですが、クリーブランド・ガーディアンズになった場合、別に無理して新しいドメインネームを取る事ないかも知れないです。メジャーリーグはMLB機構が運営しますが、「チーム名+.COM」等のチーム別ドメインネームは、「mlb.com/チーム名」に転送されています。また、MLBでは、2012年に新gTLD「.MLB(ドットMLB)」を獲得しており、ホームページは「home.mlb」で設定され、MLBの全30チームに「チーム名.mlb」というドメインネームが割り当てられています。実際indians.comは、indians.mlbに転送されます。ですので、mlb.com/guardiansとGuardians.mlbがドメインネームとして存在した場合、オンライン展開における多くの問題は解決するかもしません。今後MLBの全チームが、.COMではなく、.MLBを中心にウェブサイトを展開すれば、クリーブランド・ガーディアンズ以外の3チーム(ツインズ、レイズ、ジャイアンツ)の問題も解決するでしょう。
MLBがいつドットブランド「.MLB」に変えるのか、今後注目ですね。

法人ドメインネームに関するお問い合わせはCom Laude株式会社まで!
070 3277 2830
japan@comlaude.com



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?