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【コロナショック Week5】With コロナ時代に「3現主義」はどう変わるか?

 タイやその他の国、そして日本に住む私の友人・知人も在宅勤務が増え、色々な声を聞くようになりました。比較的多いのが「在宅勤務でもWeb会議を活用し、他の従業員ともコミュニケーションを取ることが出来るので、不自由なく働ける」という声でした。

 私も週に1日、2日は在宅勤務を行い、その際にはWeb会議を活用します。私の担当しているエリアはタイ、マレーシア、フィリピン、台湾ですが、他国への出張は現在出来ない状況なので、オフィスへの出勤、在宅勤務に関わらずWeb会議を活用し、チームともコミュニケーションを取り、仕事の進捗確認、報告を受け、オンライン上で仕事の指示も与える訳です。皆さんと同様に「不自由なく働ける」と思う一方で「大きな課題」も感じ始めています。今日はその課題について書いてみたいと思います。

不自由なく働ける≠ビジネスがうまくいく

 「不自由なく働ける」という声には同意しますが、それはあくまで「コミュニケーション」に特化した声だと思っています。いわゆる報告、連絡、相談の「ホウレンソウ」はWeb会議で十分だと思います。「情報」を商材としているビジネスもWeb上で仕事が全て完結すると思うので、「不自由なく働ける」と感じるはずです。

 Withコロナ時代もAfterコロナ時代も、ホウレンソウを目的とした会議の為だけにオフィスに通勤することもなくなるでしょう。これは確実な未来の姿だと思います。

 ただ、「不自由なく働ける」という事は「ビジネスがうまくいく」とは別の話だと思っています。ビジネスがうまくいく要因は勿論複数ありますが、その要因の一つである「3現主義」について考えてみたいと思います。

「3現主義」とは何か?

 「製造業」に携わる人にとっては馴染みのある言葉だと思いますが、「3現主義」とはビジネスを成功に導く一つの「経営哲学」と言っても良いと思います。トヨタをはじめ、日本を代表する企業もこの「3現主義」を徹底しているところが多いです。

3現主義とは
 現場:現場に足を運ぶ
 現物:現物を手に取る
 現実:現実を自分の目で見る

 机上の空論ではなく、3現主義を徹底する事で真実が理解でき、アイデアが生まれ、物事が前に進み、結果ビジネスを成功に導くと言われています。特に「ものづくり大国」であった日本の製造業ではこの哲学が重視されており、今では製造業だけではなく、営業、マーケティングなどの職種やサービス業に至るまで浸透している哲学です。

 私の知人で投資家として成功している方もいますが、その方ですら「実際に投資を考えている会社の商品を使ってみたり、その会社の経営者と直接会って経営哲学やビジョンを聞いて投資の判断をする」と言っていたので、これも3現主義に近い考えだと思います。

 織田裕二さん主演の「踊る大捜査線」でも「現場」の重要性が強調されていた有名なシーンがありましたよね。そうです「事件は会議室でおきているのではない」のと同様、「ビジネスは会議室でやるのではない」のです

Withコロナ時代で「3現主義」はどう変わる?

 この「3現主義」がコロナの影響により物理的に出来なくなったのです。私の場合、マレーシア、フィリピン、台湾に出張する事も出来ず、自分の強みと思っていた3現主義を徹底しての気づきやアイデア、改善点の洗い出し、現地で多くの従業員とダイレクトコミュニケーションを取って雑談を行うことによる「情報収集」や「チームビルディング」も物理的に出来なくなったのです。これは現時点で私が感じる大きな課題だと思いますし、この課題は今後様々な職種や業種でも顕著になっていくと思うのです。

 とは言え、Withコロナ時代ではこれらを克服しなければなりません。今も走りながら色々考えている状態なので明確な答えがある訳ではありませんが、まずは以下の事に取り組もうと思っています。

1.自分の言葉を磨く
 現場に足を運び、現物を手に取る事も出来ません。出来るのはオンラインで「正しくコミュニケーションを取る」という事です。その際助けになるのが「自分の言葉」です。自分の言葉を磨いて正しく相手に伝える事が第一歩だと思います。そしてオンラインでは感じる事の難しい「空気感」「感情面」についても正しく表現できる「表現神経」を身につけることが重要です(以下リンク参照)。これはコミュニケーションにおける「質」の向上です。

2.コミュニケーションの「量」
 海外で働く人の課題の一つとして「異文化」が挙げられます。「あうんの呼吸」が通用しない異文化環境下で、オンラインでのコミュニケーションという更に難しい課題に直面します。異文化コミュニケーションを克服する為にはコミュニケーションの「質」もそうですがそもそもの「量」を増やす必要があります。

 オンラインでは上述のように自分の言葉を磨き「質」をあげ、「量」を更に増やす必要があると思います。対面での雑談が出来ない為、チャットやLINE、WhatsAppを使ってのショートメッセージを「雑談代わり」にすると、そこから対面の雑談同様話が広がり情報収集が可能になるかもしれません。

3.信頼残高をプラスに
 現実を自分の目で見る事が出来ない為、「信頼する他の誰か」に代わりに見てもらう必要があります。そのような信頼できる人は周りにいるでしょうか?そもそも自分自身も周りに信頼されているでしょうか?

 上記のようにコミュニケーションの「質」と「量」を意識する事で信頼残高も増えるでしょうが、以下のリンクで書かれているような「約束を守る」「親切であり礼儀正しい」など信頼残高を増やす為に、今こそ基本的な礼節が求められていると思います。在宅でフラストレーションも溜まるでしょうが、オンライン上でそのイライラを人にぶつけると一気にこの信頼残高は減ってしまいます。

 一緒に飲みに行って和解するという策も容易に取れません。リカバリーが難しいからこそ、オンラインでは更に信頼が重要になって来ます。リアルとオンラインのマナーも違いがあるので、今後オンライン上におけるマナーは課題になって来るでしょう。

4.データを読み解く力
 3現主義が徹底できない今こそデータが改めて重要となり、それを読み解く力が更に重要になります。重要データが取れていない部分に関してはデータ取得を促すチャンスであり、IoTやスマートファクトリーを将来加速させる良い契機になると思います。少なくとも将来を考え、本気でIoTビジネスを学ばざるを得なくなったので、しっかり学んでいこうとは思っています。

 最後に、「自分の目で確かめ」「自分の耳で聴き」「自分の肌で感じ」「自分で考える」ことを可能にする「3現主義」の哲学は今でも必要だと思っており、それが正しい経営判断やビジネスを成功に導くと思っています。コロナが終息し、Afterコロナという時代が到来するのであれば、改めて3現主義は大事にしたいと思っています。

 但し、このままWithコロナ時代が続くことも勿論考えられます。その場合、「3現主義」の代替えとなる手法はしっかり考えておかなければならないと思っています。

 オンラインで「不自由なく働ける」と感じるのは、現段階でコミュニケーションが取れているからだと思います。コミュニケーションはあくまで手段なので、それを目的化するのではなく、その先の結果をWithコロナの時代でどのように創出していくかが重要だと思います。 

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