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本の紹介者:あい

こんな人に読んで欲しい
・コロナ禍の影響などで、不安を抱えている人
・苦境に遭っても、機嫌よく過ごすヒントが欲しい人
・今の状況下について、「意味」を考えたい人

1.非日常下にいた人の体験を読み、ヒントを得る

 新型コロナウイルスの関係で、私たちの日常に大きな変化がありました。
外出が出来ない、人と会うことがほとんどない、在宅勤務をしながら子育てもしなければ・・・。積もり積もって、ストレスを抱えている人もいるかもしれません。

 このタイミングで、私は2冊の本を思い出しました。1冊は「アンネの日記」。ユダヤ人のアンネ・フランクが隠れ家生活について記録した、有名な本です。

 そしてもう1冊は「夜と霧」。こちらもナチスの収容所での生活を描いたものです。

 2冊とも戦時中の話で「今のタイミングで読むと、もっと気持ちが暗くなる」と思いがちですが、実はそうでもありません。

 非日常の状況下で、不安に飲み込まれることなく過ごすためのヒントを得ることができます。

 どういう事象があったときに、人はどんな心理になるのか、本を通して「疑似体験」を済ませておく。すると少し先が見えて、「ああ、こういう時、そう思うよね」という気持ちになる。そうすれば、少し落ち着いて状況に対処できそうな気がしませんか?

2.心の反応の3段階

 主人公は心理学者・精神医学者でもあったので、被収容者の心の反応を3段階に分けて分析しています。

第1段階の特徴:収容された直後の「収容ショック」。これから自分の身に何が起こるのか、恐怖で慄いている状態。一方で、少しでも「悪くなさそう」と思えることが起こると「きっと大丈夫。そんなにひどい状態にはならない」と根拠のない妄想が沸き起こる。しかし、そのかすかな期待は見事に裏切られ、気持ちはどん底になる。

第2段階の特徴:「感情の消滅」状態へと移行。自己防衛のために、感情を消滅させるようになる。生命の維持に集中し、精神レベルが幼稚になる。冷淡さ、無関心さが目立ち始めるが、政治には関心を寄せる。

第3段階の特徴:収容所から解放されてもなお、感情が湧き起こらない状態。幾度となく期待を裏切り続けられたことで、解放された現実を信じることができず無感情。しかし時間が経つと、堰を切ったようにしゃべり、感情がほとばしる。突然抑圧から解放されたことで、逆に精神の健康を損なうケースもある。

 この心の反応の3つを見てみると、今私たちが置かれている心理状態と重なるところがあるような気がします。

 恐怖、根拠のない期待、諦め、政治への関心の高まり・・。

 自分自身も、この反応に当てはまっています。

 ただ、精神医学者の立場からの考察によると、人は正常であればあるほど異常な状況下で異常な反応を示すそうです。ということは、もしこの反応に当てはまるのであれば、まずは自分の不安な気持ちをそのまま受け止める、ということが心の安定への第一歩につながるかもしれません。

 また、この本の中で特筆すべきは、第2段階で精神レベルが幼稚になる人が多い中、逆に内面が豊かになった人もいたということです。感受性が強い人ほど、困難な状況下で精神的ダメージを受けなかったとのこと。普段から自分の内面を見つめている人は、異常な状況下でも落ち着いて自分の内面と向き合うことができるのかもしれません。

3.どんな時も誇りとユーモアと無私の精神を

 では、どうずれば困難な状況下でも自分を失うことなく、機嫌よく過ごすことができるのでしょうか。

 この本の筆者自身が、気持ちを落ち着かせるために行っていたことが大きく3つあります。

① 愛する奥様のことを妄想する時間を持ち、自身の心を満たしていた
② 悲惨な状況をユーモアに変えて表現し、周りを笑わせていた
③ 美しい自然を見る、歌を歌うなど、美しいものや芸術に触れる機会を持った

 この3つは、人間らしさを保つための助けになりそうですね。
特にユーモアは、「状況に打ちひしがれないために、人間に備わっている何か」だと述べています。

 筆者は「最後の瞬間まで、プライドを持ち、無私の精神を持ち続けたか、あるいは保身のための戦いの中で人間性を忘れ、一匹となり果てたか。」という問いを投げかけています。

 きわめて厳しい状況で、自分の人生を意味深いものにするかどうか。私たちは「人生に試されている」のかもしれません。自身がそれにどう挑むのか。外出自粛の時間は、それを考えるよい機会かもしれないですね。


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