見出し画像

【Vol.11 グローバル人材インタビュー】海外挑戦を「面白そう」と思えるか?海外への好奇心が、「不安や怖さ」を上回り、背中を後押しする

櫛田一斗(くしだかずと)
京都府出身。京都産業大学を経て佐川印刷SCでプレー。2011年からタイのチョンブリFCでプレー。1年目にベストイレブン、2年目に年間ベストMFを受賞するなど活躍し、2016年まで計3クラブに所属。その後2017年にオーストラリアのタプトFCに加入し翌2018年はウーロンゴン・ユナイテッドでプレーし、そのシーズン・オフにJ3いわてグルージャ盛岡へ移籍。今季よりチョンブリFCに復帰。

よし
櫛田さんのユニークな経歴やサッカーに関するインタビューはこれまで多く受けていると思うので、本日は「ビジネスパーソンの目線」で櫛田さんにインタビューできればと思っています。よろしくお願いします。

くしだ
はい、よろしくお願いします。

よし
早速ですが、櫛田さんは佐川印刷でプレーした後、2011年よりタイのチョンブリFCでプレーしています。ビジネスパーソンでも日本から海外に飛び出す事に躊躇する人が多いのですが、海外に出る時に不安や怖さのようなものはなかったのですか?学生時代から海外旅行をするなど、海外志向が元々あったのでしょうか?

くしだ
海外旅行1度もしたことなかったですね(笑)。ただ、漠然と「海外には出たい」と当時から思っていました。

佐川印刷ではプロではなく、アマチュアという立場でサッカーをしていました。午前中に練習をして午後から仕事をするというスタイルだったので、100%サッカーに集中できる環境ではなかったのです。そんな生活から抜け出して、やはり自分の好きなサッカーに100%集中したいと思っていました。当時はサッカーにも仕事にも100%集中できず、自分自身中途半端な状態が続いていました。

そんな時、佐川印刷のチームメイトでタイのプロサッカーリーグに精通している人がいたので、その人からタイの事を色々紹介してもらい、「タイのプロリーグに挑戦してみよう」と思うようになったのです。

よし
とは言え、海外に出ることに対して「不安や怖さ」はなかったのでしょうか?

くしだ
当時から漠然と「海外に出たい」とは思っていたので、話を聞いて「面白そう」という気持ちがどんどん大きくなりました。ですので、「面白そう」という好奇心が、「不安や怖さ」を大きく上回っていたと思います。チョンブリFCでは自分のポジションもちょうど空きがあると聞いていたので、このチャンスを絶対に掴みたいと思うようになりました。

画像7

もう一つ言えるのは、自分がタイに挑戦する以前にタイのプロリーグに挑戦している日本人選手がいたので、「既に道はできている」というのは安心材料になっていました。

よし
海外旅行経験もない状態で、タイの「バンコク」ではなく、「チョンブリ」と聞くと一般の人は「チョンブリってどこ?」となりそうですが、場所にも全くこだわりはなかったのでしょうか?

くしだ
全くなかったですね(笑)。これは当時海外の情報をあまり知らなかったので、良い意味で変な「先入観」がなかったと思います。プロとしてサッカーが出来ればどこでも良いという感じでした。

よし
なるほど。駐在員を目指すビジネスパーソンの中では、海外の情報を調べすぎて逆に不安になってしまい、挑戦をあきらめてしまう人もいますが、「知らない」という事も時として強みになるのですね(笑)。櫛田さんのようにどれだけ「面白そう」と思えるかが不安を払拭する為にも重要ですね。

カルチャーショックを乗り越える「鈍感力」と語学以外の「共通言語」を身に着けておくことが海外でサバイブする要素

よし
さて、私も自分の駐在経験を振り返ると、海外で苦労するのは「衣食住」だと思いますが、櫛田さんの場合はどのような苦労がありましたか?

画像2

くしだ
タイの住む場所に関してはチームが寮を準備してくれたので、特に不自由は感じなかったです。もちろん日本の環境に比べると清潔感などで劣る部分もありましたが、自分はあまり気にならなかったです。ただし、ご飯はチームから指定されている「屋台」があったのですが、最初は正直抵抗がありました(笑)。それも慣れてしまえば大丈夫でした。

オーストラリアで生活した経験もあるのですが、最初住む場所がチームの寮ではなく「シェアハウス」でした。そこには中国人が10人いて日本人が1人という状態でした。中国人は日本人から見ると騒がしい上、マナーも悪い点があり、耐え切れずに日本人が多い別のシェアハウスに逃げ出したという経験もあります(笑)。

よし
なんと、それも凄い経験ですね(笑)。衣食住以外に何か海外でカルチャーショックのようなものはなかったですか?

くしだ
タイの話になりますが、時間の感覚に大きな違いがありカルチャーショックを感じました。一言で言うと、「時間にルーズ」でびっくりしました。計画もコロコロ変わり「計画性」にも欠けていました。以前1年間の試合のスケジュールを事前に配布されたので手帳に記載したのですが、実際にはスケジュールがほとんど変わりましたね(笑)。

よし
試合のスケジュールが変わるのですか??お客さんもいるのにそんなことあり得るのですか?

くしだ
日本では考えられないのですが、タイではあり得るのですよ(笑)。試合の日程は変わらなくても、当日試合時間が遅れることも度々ありました。

よし
それは選手としてはなかなかのストレスですね…。そんな中どのように自分自身をマネージしていたのですか?

くしだ
マネージしようがないので、単純に気にしないようにしました(笑) 。「気にしない」といういわゆる「鈍感力」みたいなものは凄く重要かもしれませんね。

よし
なるほど。ビジネスパーソンの中には海外に出て「コミュニケーション」に苦労する人も多いですが、海外でのコミュニケーションはスムーズに行きましたか?

画像3

くしだ
サッカーでは語学だけではなく、プレーを通じてコミュニケーションを取ることができるので、プレー中は苦労する事は余りありませんでした。ただ、プレー以外のプライベートではタイ語ができなかったという事もありますが、コミュニケーションは苦労しました。

よし
それをどのように克服したのですか?

くしだ
克服するというか、コミュニケーションは自分のストレスにならない程度に取るようにしていています。無理にタイ人と食事に行ったり、一緒にプライベートを過ごすというような事もしていません。無理なく自分のできる範囲で自分ができるコミュニケーションを取るようにしています。

よし
スポーツや音楽は世界では「共通言語」と言われることもありますし、語学以外でコミュニケーションが取れるというのは良いですね!そういう意味では子供達にスポーツや音楽を学んでもらい、語学以外の「共通言語」を身に着けておくというのも、将来海外で活躍するためのヒントになるかもしれませんね!

“VEVARASANA”に込めた想い。サッカー以外の「繋がり」を海外で形成し、自分の新しい可能性を切り拓く

よし
櫛田さんはサッカー以外にも色々な活動をされていますよね。先日もサッカー仲間の大久保さんが開校された「YUKI FOOT BALL ACADEMY」に参加されているのをSNSで拝見しました。以前からイベント活動には積極的だったのでしょうか?

くしだ
オーストラリア時代から仲間とイベントを開くようになりました。サッカー繋がりで「フットサル大会」を計画したり、サッカーとは全く関係のない「ボルダリング」や「運動会」、それから「シドニーの街で鬼ごっこ」も計画しましたね。鬼ごっこには50人くらい集まりました(笑)

よし
運動会とシドニーの街で鬼ごっこですか(笑)?それは私も参加してみたかったですね。こういうイベント企画は何か意図があっての事でしょうか?

くしだ
自分がサッカー選手なので、どうしても繋がりがサッカー関係に限定された人達に偏っていたのですが、せっかく海外にいるのにサッカー関係者以外と繋がれないのはもったいないと思うようになったのです。イベントを通じて、サッカーとは全く関係のない人達とも繋がるようになり、そこからまた新たな出会いが生まれました。人を通じて自分自身も新たな発見を多く得る事が出来ました。

よし
今日私も着ているのですが、櫛田さんは“VEVARASANA Thailand”というTシャツ販売もしていますが、これも同じような意図を持ってでしょうか?

画像1

@ターミナル21 (2F) SEIZE

くしだ
「なくなりそうな世界の言葉」というのがあるのですが、VEVARASANA(ヴェヴァラサナ)はその中の一つです。意味は「遠く離れていても気持ちは通じ合っている」という“繋がり”を表しています。Tシャツにはそんな意図も込めています。

よし
なんと、そんな意味がヴェヴァに含まれていたのですね。今全てが繋がりました(笑)

海外駐在員の中には駐在員同士で集まってしまったり、繋がりが会社関係に限定された人達になっている人も多いのですが、海外にいるからこそビジネスとは全く関係のない人達と繋がることも新たな自分を開拓するために大事ですね!

仲間への想い。そして今後の櫛田一斗について

よし
櫛田さんは多くの仲間が周りにいると思いますが、「仲間の存在」は櫛田さんにどのような影響を及ぼしていますか?

くしだ
一言で言うと「お互い刺激し合っている」という関係ですね。誰かが「ベストイレブン」に選ばれたら「自分も選ばれたい」「負けられない」と思います。凄く良い仲間ですが、刺激し合えるライバルでもあります。

よし
そんな刺激し合える仲間もいる中で、今後も「現役」に拘ってプロサッカー選手を続けていこうと思っていますか?

画像4

2020年8月6日@チョンブリFC練習場

くしだ
年齢的な事もありますし、正直自分の中では長くてもあと2~3年だろうなと思っています。タイリーグのチームに関しても資金運用の面で来年存続しているかどうか分からないという状態なので、本当に毎年毎年が勝負になっています。だからこそ、目の前にある事に集中しているというのが今の自分です。結果的に毎日の積み重ねが将来に繋がっていくと思っています。

画像6

2020年8月6日@チョンブリFC練習場

今はタイリーグに所属していますが、マレーシアやモルディブにもリーグが存在し、自分自身に新たな刺激を与える為にも違う国でプレーしても良いかなと考えています。そのあと1年間かけて「世界一周」して来ます(笑)。今しか出来ない経験を積んでおいて、その経験を積む中で今後どうして行きたいかを考えたいと思っています。

よし
羨ましいほど魅力的な夢ですね。私も「世界一周」に同行させて頂くかもしれません(笑)

よし
最後に、スポーツ選手やビジネスパーソンに関わらず、今後「海外に挑戦したい」と思っている人に対して何かアドバイスがあればお願いします。

くしだ
「取り合えず海外に出ろ」ですかね(笑)。海外で多くの人を見て来ましたが、一歩踏み出した人と踏み出せなかった人の“差”って凄く大きいと感じてます。そして自分もそうでしたが、「行けばなんとかなる」ものです。仮になんとかならなくても、最悪日本に帰れば良いだけの話です。「悩まず、迷わず、やってダメだったらやめる」という至ってシンプルな考えで挑戦してみると良いと思います。

画像5

2020年8月6日インタビュー@Agaligo coffee


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?