見出し画像

335. トランスベスタイト(transvestite)って何ですか?

カタカナ表記が示しているようにもともとは英語の単語ですので、英語の定義を見てみましょう:

a person who wears clothes designed for the opposite sex (金城訳:自分とは反対の性のためにデザインされた服を身に着ける人)

Merriam-Webster (インターネット版)

語義に沿ったシンプルな定義です。trans- というのは他の言葉と一緒に使われる言葉(接頭辞(せっとうじ))で、「一方の側から他方の側へ移ること」を指します。vestite は「服」という意味です。(日本語でも「ベスト」という言葉がありますね)

トランスジェンダー(transgender)の trans-も同じトランスです。

もともとは「場所」について一方から他方へという意味でしたが、トランスベスタイトやトランスジェンダーでは服について一方から他方へ、性別について一方から他方へ、となっています。

しかし、このシンプルな定義ですと、宴会の余興で反対の性の恰好をしている場合、お仕事でそうしている場合(お笑い芸人をはじめ、歌舞伎役者、宝塚のスターなど)、趣味でそうしている場合の区別がわかりません。

もちろん、「広義のトランスベスタイト」の意味ではこのようにお仕事で異性の服装を身にまとっていらっしゃる方も含まれるでしょう。

しかし、最近の特に性的マイノリティに関する定義では次のようにかなり限定的なものになっています:

トランスヴェスタイトは異性装者であり、異性の服装を身につけることで性的興奮を感じるセクシュアリティです。

「自分らしく生きる」ウェブサイトより

この定義では、宴会芸の服装やお仕事での服装を排除して、「(反対の性の服装をすることで)性的興奮を感じる」とされています。

ここで重要なのは、トランスジェンダーとの関連です。

例えばMtFのトランス女性の場合、「性的興奮を感じる目的で」女性の服装を身に着けているわけではありません。

彼女たちは性自認(自分の心の性)が女性だから、女性として自分を表現するために女性の服装を身に着けているのです。

別の言い方をすると、トランス女性やトランス男性は生まれたときに割り当てられた性別とは反対の服装をすることで自分らしくいられる、その服装が自分らしさを表現できるのです。

ここで急いで付け加えなければなりませんが、「トランスジェンダーであれば異性の服装をする」とは必ずしも言えません。みながそうする、そうできるわけではありません。

トランスジェンダーだけれどもさまざまな理由で反対の性の服装を身に着けられない人もたくさんいます。

さらにXジェンダーのように、トランスジェンダーというおおきなくくりの中には入りますが、必ずしも反対の性と一致することを望まない、自分は男でもあり女でもある、男でも女でもない、わからないという人たちもいます。

「戸籍上の性別とは反対の服装をしているから~だ」とか「トランスジェンダーだから~だ」ということは言えません。


参考資料

Merriam-Webster Dictionary ウエブ版 「transvestite

画像はPixabayより