「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」を読んで

所感
働き始めて12年目、様々な経験を積んできた中で、常にこのギブ&テイクの人間関係には助けられもしつつ、苦しめられてもきたと感じている。
学生時代は、本書の中でのいわゆる「テイカー」がいたとしても、関係を絶ってしまえばいい。
ただし、ビジネスの世界ではそうはいかない。「テイカー」ともうまく関わっていかなければいけないし、その時の自分のスタンスも悩ましいものであった。

自分自身を振り返ると、どちらかと言えばギバー寄りの人生を歩んできたように思えていたが、一方でどこか「このスタンスって損しているよな」と迷いを感じるところも多かった。
おそらくそんな迷いを感じる時点で、自分はマッチャーだったのかもしれないと思いつつ、「成功するギバーになるために気をつけなければならないこと」はとても身にしみた。
特に、今自分がやっている仕事の「他の人への良い影響とは何か?」を考え続けることは、ギバーとして自分の気力を向上させる上で非常に大切、と改めて感じることができた。

最後になるが、この本の特に素晴らしいところは、
実験や調査といった客観的な事実をもとに、「ギバーが最も成功する」、ということを証明していることである。
この手の本によくあるような、「著者というたった一人の人間の体験」に基づくものではないため、こうした結果が非常に信頼でき、納得できるものとなっている。

以下、読書メモである。


PART1 あなたは、まだ「ギブ&テイク」で人生を決めているのか ~いま与える人こそ、幸せな成功者となる

• シェーダー(起業家)とホーニック(ベンチャーキャピタリスト)の例。「心では君を選べと思っても、頭では別の投資家を選べ(人がよすぎて厳しいことを自分に言ってくれない)」
• テイカーは自分を中心に考えるのに対して、ギバーは他人を中心に考え、相手が何を求めているのかに注意を払う。家族や友人に対してはギバーになれる人が多いが、こと仕事に関してはそううまく振舞えない。
• たいていの人はビジネスにおいて、与えることと受け取ることのバランスを取ろうとするマッチャーになろうとする。
• 統計的には、ギバーはきわめて業績が低くなる傾向がある。一方で、もっとも成功するのもギバーである(テイカーとマッチャーはそこそこの成功)。
• ギバーは成功から価値を得るだけでなく、価値も生み出す。これがテイカーとマッチャーとの違い。

• リンカーンの例。利己的でなく、自己中心的でなく、うぬぼれない大統領。国家の利益のため、自分の勝ちを他人に譲る姿勢。結果的に過去の政敵から支援を上けることができた。
• 組閣の際も、「イエスマン」を中心にして自分の権力を固めるのではなく、自分より知名度も学歴も経験もある人間を入れた。結果的に全員を味方につけることができた。
• ただし、常に与えることが必ずしもすべて成功するわけではない。時間軸を変え、ギバーであることは100メートル走では役に立たないが、マラソンでは大いに役に立つ、という考えを持つことが肝要。

• 現代、サービス部門が発展するにつれ、多くの人々がギバーとして人間関係や評判を築いたサービス提供者を重視するようになっている。
• チームでの活動が重視されるほど、ギバーが力を発揮する。

• 人を助けたい、という考え方は各国共通でどの人も本来持っている価値観である。
• 自らの戦略すらもライバルに共有するような、敵に塩を送る行為の源泉は、「関係者全員が得をすべきだ」というギバーもおり、ときにリスクをともなうが、その代わりに大きな利益をもたらすこともある。

• 成功するギバーは以下の4要素を持っている。
人脈づくり:新しい人と関係をつくり、これまでの人との結びつきを強める
協力:同僚と協力し、彼らの尊敬を得られる働き方
人に対する評価:才能を見極めてそれを伸ばし、結果を出す力
影響力:相手に自分のアイデアや関心ごとを支持してもらえる手法

PART2 「名刺ファイル」と「フェイスブック」を見直せ ~ギバーの才能

①「ゆるいつながり」という人脈づくり
• 人脈には主に3つのメリットがある。「個人的な情報」「多種多様なスキル」「権力」である。
• 人脈は人間関係が持つパワーをもとに機能しているので、ギブアンドテイクのやり方を理解する上では強力な柱である。
• ギバーもテイカーも幅広い人脈を作ることができるが、ギバーはそのネットワークを通してはるかに長続きする価値を作る。利他的に振る舞うほど、人間関係からさらに多くの恩恵が得られる。
• テイカーは上の者にはおべっかを使い、下の者にはどう思われようと気にしない。自分に全く利益をもたらさない人間をどう扱うかで、その人がどんな人間かがはっきりわかる。
• 多くの人間はマッチャーであるため、テイカーが権力を振りかざして人々を冷遇すると、そうした正義にもとる行動を許さない。
• テイカーを懲らしめようとするのは、仕返しではなく、「正義」の問題である。

• テイカーの特徴は、
1自分のことで頭がいっぱいなので、「私たち」より「私」を多く使う。
2自分が優れた人間だと考えているため、報酬が他者より遥かに多くても気にしない。
3年次報告書における自分の写真の大きさが圧倒的に大きい。
• 現代社会では、SNSが発達したこともあり、テイカーの行動が比較的わかりやすくなるようになった。大抵の人はFacebookのプロフィールでテイカーかどうかがわかる。
(実物以上によく見える写真、やたら多い友人など)
• ギバーは毎日小さな親切を積み重ねて、ネットワークを構築していく。
• ギバーの代表格であるリフキンは、「受け取るよりはるかに多くを与える」ことがテイカーやマッチャーとの違い。
• 助けてくれた人にお返しするどころか、テイカーとマッチャーはしばしば先を見越して、近々助けてもらいたいと思っている人に親切にする。(時間軸の意識)
• 一方で、ギバーは時間軸を気にしないため、与えたことのお返しが結果的に数年後になることもありうる。
• テイカーやマッチャーのようなギブアンドテイクは、ギブした相手に対して「恩着せがましい親切」と捉えられ、豊かな人間関係ではない取引、というように捉えられがち。
• また、マッチャーは、受け取ることを期待して与えるため、助けてくれそうな人にだけギブする。これでは人間関係は狭いままである。
• なお、研究によっても、広く弱いつながりの方が利益をもたらす可能性が高いことがわかってきている。
• マッチャーは、テイカーには仕返ししようとするが、逆にギバーにはきちんと報いようとする。結果的にギバーは「なぜか運に恵まれる」状態となる。

• 広く弱いつながりを構築すれば、休眠状態のつながりがおのづと発生する。このつながりは、活動状態のつながりより大きな利益を生む可能性が高い。
これは、休眠していた期間で互いのアイデアや能力が向上しているからである。ただし、休眠したつながりを復活させるためには、ベースとなる信頼感が存在する必要がある。
• テイカーはブラックホールのように周囲の力を吸い取ってしまうが、優れたギバーは太陽のように周囲に知識や経験、機会といったパワーを注ぎ続ける存在である。
• ギバーの真の目的は、「どのようにネットワークを作り、そしてネットワークから得をするのは誰か」ということに関して、人々が抱いている考えを根っこから変えること、である。(ネットワークは自分のためだけでなく、すべての人のために作るもの)
• ギバーのネットワークは、「Pay Forward(恩送り)」であり、人々にギバーとしての行動をする背中を押している。結果的に、この行為は「ゼロサムゲーム」を「ウィンウィン」に変えている。
• テイカーは自分を偉く見せて有力者に取り入るためにネットワークを作る。一方でマッチャーは、人に親切にしてもらうためにネットワークを作る。
• また。ギバーの行動は周囲に伝染する。
• インターネットの発達によって、テイカーである代償も、ギバーである利益も、両方が増幅される傾向がある。


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