那智勝浦町昔懐かし話 第21話

第21話『祭り囃子がきこえる』
 
いつも書いている話は過去形の物が多いが、今回の話しは現在も続いている勝浦の伝統のお話です。
 
「オーレンヤ、ホウランゲー、ヨヤサノサッサ、ヨイヨイヨヤサー」かけ声に合わせて太鼓を叩く。トントコリンノトン、トントコリンノトン。旧勝浦(1区から6区)の勝浦町民なら口ずさめるし、太鼓のリズムも刻めるほど有名なかけ声である。そう勝浦八幡神社例大祭の櫂伝馬のかけ声である。今年も櫂伝馬や子供神輿の練習が始まっている。前にも書いたが僕ら男の子は小学生の時は子供神輿、そして中学生の時は、櫂伝馬の漕ぎ手になるのが僕らの誇りだった。
「おい、タケちゃん。おまえら中学生になったさか、櫂伝馬でるか」中学3年生の先輩から声をかけてもらい僕とナカシャと山ちゃんは櫂伝馬に出ることとなった。僕らの中学生の時の櫂伝馬は、大勝浦(1区)、脇仲(2区・3区)、小坂・神明(4区)、北浜(5区)、築地(6区)、そして保存会のあいゆう会の6隻があったと思う。僕ら脇仲は、約1週間前より毎日夕方練習があり観光桟橋から乗り込み勝浦湾内を2時間くらい漕ぎまくる。そして最後にホテル浦島前で海に飛び込み、浦島で風呂に入って帰るという練習だった。本番は赤のよれよれの膝までの衣装に、さらし、そして白パン(僕らはロンパンと言っていた)で神社境内などで、木の杖に餅に見立てた綿をつけた棒を片手に餅つきの唄を披露しその後櫂伝馬に乗り込んだ。祭りは子供神輿や少女達の踊り、山伏等、そして大人神輿のひとつ大黒さん(担ぎ手が顔を真っ黒に塗り、大黒天を乗せた神輿を担ぎ町中を練り歩く。今はあまりしないが観光客や町内の見物客の顔などに炭を塗りたくる。酒に酔っているので家の中まで入ってくる。僕ら子供はわざと炭を塗られるのが誇りだった)、そして2つめの大人の神輿は、夕方クライマックスでバスターミナルあたりから神輿ごと海に飛び込む。町を練り歩き最後にバスターミナルの所に来るのだが、なかなか海に飛び込まない。見物客はいつ飛び込むのか、待ち遠しくなるだが、その気持ちが最高潮に達したときに海に飛び込む。見物客の歓声が響く。その海に飛び込んだ神輿にロープを掛け櫂伝馬で引っ張り合う。そこが一番の祭りの見せ場だ。その櫂伝馬の漕ぎ手に僕らは、中学3年間なれた。今夜も遠くから聞こえてくる。
「オーレンヤ、ホーランゲー、ヨイヤノサッサ、ヨイヨイヨヤサー。」
トントコリンノトン、トントコリンノトン。
                            第21話おわり

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