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異常降雨:枕詞「気候変動」は正しい?

近年、大雨が降ったりすると、ニュースの冒頭に「気候変動による」といった枕詞がつくことが多い。これに対しては、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏などが、気象庁などのデータを引用しながら、反論されている。温暖化で豪雨は増えたのか? – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute (ieei.or.jp)

今回紹介する新しい論文は、降雨時間解像度の変化を考慮しない記録のために、「異常降雨に関する多くの研究が大きな影響を受けている」ことを示している。

Water | Free Full-Text | Effect of Time-Resolution of Rainfall Data on Trend Estimation for Annual Maximum Depths with a Duration of 24 Hours | HTML (mdpi.com)
 
 時間分解能が粗い降雨データを使用すると、1日の最大降雨量を大幅に過小評価することになる。
 
Heartlandによるレビューでは、研究者たちが、イタリア中部にまたがる、39の代表的な気象観測所のデータを過去100年にわたり調査した結果を報告している。 
Public More Concerned about Energy Prices than Climate Catastrophe (heartlanddailynews.com)
 
その中で、記録システムと観測点が時代とともに変化した結果、過去の降雨量が過小評価されるようになったという問題を見つけている。
 
もし、過去の異常気象において、記録された降雨量が過小評価され、実際の降雨量より少く記録されているとしたら、「ここ数十年起きている異常な降雨量の増加は、実際は、それほどでもなかったのだ」という事にもなる。

古い降雨記録は、通常 1日という粗い時間分解能を使用しているが、新しい記録では 1時間単位または 分単位の分解能を使用している。時間分解能の変更による誤差を補正すると、トレンドの符号が、正から負に変化することが多い。
 
この論文の表5では、39の異常降雨のトレンドの平均が、補正前は+0.029mm/yr、補正後は0.049mm/yrであることが示されている。つまり、イタリアの年間最大24時間降雨量は温暖化によって減少しており、増加しているわけではない。
 
従って、時間分解能が粗いことを特徴とする降雨データから傾向分析を行う場合は、常に補正を行わねばならない。気候変動により極端な降雨量が異常な速度で増加しているという主張は、再考されなければならない。


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