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発電所の温暖化ガス排出、米政府規制を制限 最高裁

米最高裁、EPAの権限を制限

米連邦最高裁は30日、「発電所の温暖化ガス排出について連邦政府による規制を制限する」判断を示した。

石炭産地の南部ウェストバージニア州など野党・共和党の支持者が多い州の司法長官らは、米環境保護局(EPA)を相手取り、発電所のガス排出を規制する権限がないと主張していた。

最高裁がその訴えを認めた判断を示したということで、バイデン政権の脱炭素政策に痛手となることが予想される。

これは、今後の脱炭素・ゼロエミッションの動きに対して、大きな影響を与えると考えられる。

最近、Heartland Institute の Roundtableなどを見て、アメリカの専門家の話を見たり聞いたりしているが、「今日は良い日だった」と最高裁の判決を支持していた。

SCOTUS Lands a Knockout Blow on the EPA➡
https://www.youtube.com/watch?v=WwF26ta48g4

https://www.heartland.org/news-opinion/news/press-release-heartland-institute-praises-supreme-court-decision-reining-in-epa-power-to-regulate-carbon-dioxide-emissions?utm_source=ActiveCampaign&utm_medium=email&utm_content=Climate+Change+Weekly+%23439%3A+Hurricanes+Not+Increasing%2C+Despite+Warming&utm_campaign=CCW+438+%283%29&vgo_ee=tUH8MZqZe11oJolXQ5%2BMXYvy7T5YEJ8ohjC9vauJg30%3D

アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)とは


アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、ニクソン大統領時代に設立され、1970年に活動を開始している。市民の健康保護と自然環境の保護を目的とし、大気汚染、水質汚染、土壌汚染などが主な管理の対象として活動を行って来た。

業務の中で記憶に残っているのは、先ずは、CLean Air Actの策定、修正法の策定がある。また、自動車については、生産・販売する事業者は、EPAに自動車を持ち込み、当局職員による燃費テストを受けることが求められていた。また、市場に出回っている自動車を抜き打ちで検査し、基準に適合しているか確認し、適合していない自動車の調査・罰則を課すなど行っていた。

1992年からは、Energy Star という電子機器の省力化を促進するプログラムを実施している。

その他、加州シリコンバレー駐在時は、半導体工場からの土壌・地下水汚染などについてのEPAの役割なども聞いていた。

EPAのその後

EPAの当初のミッションは、大方許容できる範囲で達成していて、そうすると、組織の維持、Going Concernとして出て来たものが、1988年以降の国連を中心とした動きだしたムーブメントとの連携だと考えられる。

その中で、EPAも、Clean Air Actにはなかった、CO2を汚染物(Pollutant)などと称して、温暖化政策へと走り出した。日本との関係では、1997年のCOP3@京都があった。

COP3では、京都までアルゴア副大統領が乗り込んで来て、無理やり京都議定書を決め、最初から、米国は法律によって批准する意志もなかったため、その後議会で否決したという話は有名。日本は、議定書を順守するために、莫大の国費を失ったと言われている。アルゴア氏は、米公聴会の席で、CO2のことをContaminant(汚染物)だと言っていた。

オバマ政権下、EPAは2022年から2025年型車までの環境基準について技術的な評価を行い、2025年の規制値を1リットル当たり23.2キロメートルの燃費にするなどの規制を設定しました。また、発電所からのCO2排出基準などを決めている。例えば、石炭火力:IGCC 1.4 ポンド/kWH=635g/kWh

(註)IGCC= Integrated coal Gasification and Combined Cycle、先進的発電技術、それほどは普及していない。日本では三菱重工がEPCを行う。従って従来技術の発電設備では、この基準を到底クリアできない

(註)日本の先進的発電技術の開発ロードマップ

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現在、JPOWERが、広島県大崎で大崎クールジェンというプロジェクトを実施中。発電効率55%、CO2排出、590g/kWH、2025年目標。LNG火力では、発電効率63%、CO2排出、280g/kWH、2025年目標としている。

今後の影響について

今後のどういう影響があるのだろうか?
1.米国連邦政府の権限が制限されることにより、各州の政策がより優先される。ウエストバージニアなどの産炭州は、石炭作業従事者の意向を取り組む形の政策が打ち出される。

2.バイデン政権や民主党が進めている気候変動対策(温暖化対策)、『グリーン・ニューディール』にブレーキが掛けられる。共和党で気候変動を重要な案件だと思っている割合は、せいぜい30%程度なので、この最高裁の決定により、共和党の否定派の勢いが増すと考えられる。

3.秋の米国中間選挙の結果、民主党が大敗するという予想が濃厚であり、そうなれば、ますます、民主党が掲げ、推進しようとして来た環境原理主義的政策は頓挫するように思う。

4.ヨーロッパは、2021年から起きているエネルギー危機、エネルギー価格の高騰、エネルギー安全保障など、難しい局面に直面している。それに、パンデミックの後遺症の有無はよく分からないが、ロシア問題の先行きもはっきりしない。

ヨーロッパの自己矛盾と日本の追従姿勢

こうした中で、エネルギー、物価高、雇用などの問題を解決しようと、ドイツやオランダ、その他の気候変動推進主要国も、ロシア以外からの天然ガス調達先模索、石炭火力を稼働、原子力に目を向けるなど、大幅な方向転換を行っている。

2015年に採択されたパリ協定、それによる脱炭素、ゼロエミッション、カーボンニュートラルなどの動きも、一旦お蔵に閉じ込めて、急場を凌ごうという考えのようだ。

ヨーロッパの動きをよく言う人は、「ヨーロッパの動きは柔軟だ。それに反して、日本は、宣言したことを頑固に守ろうとしており、こういう時こそ欧州の柔軟さを学ぶべきだ」という。確かに、日本政府は、他の件でもそうだが、動きが遅い、自主判断できておらず、周りの顔色を見ているといったところだろうか。

ヨーロッパについて悪く言えば、「状況次第でどうにでも変化する。思想や哲学があるようで、やっていることから判断すれば、そういう高尚なものはなく、矛盾だらけ。自分の都合の良い理屈を並べ、他に強制する。やっていることは、植民地時代の発想ではないのか!?

そもそも、CO2は汚染物ではないのだし、炭素は、すべての「生きとし生けるもの」に不可欠な元素である。脱炭素という概念自体、基本的な欠陥概念である。

6月22日のニュースによれば、G7の結果を受けて日本は、バングラデシュとインドネシアで進めていた、2つの石炭火力発電プロジェクトの支援を中止するそうだ。

日本が中止すれば、中国が入って来て、安い発電プランを受注するという流れになる可能性が高い。当然、SOx、NOx、粉塵などをより多く排出し、CO2も沢山出して、発注元の政策目標をクリアすることはないだろう。それでていて、中国の影響力だけ強まるというのであろうか?

日本政府も、「省エネポイント、一部屋に集まって冷を取る、などなど」と国民に諭すようなことをせず、大局的な判断、全体を少し考えて欲しいものだ。

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