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掃除機の憂鬱 〜使ったことのないモノの視点

プロダクトデザインを学んだからなのか、マーケティングを生業としてるからなのか、ぼくは気がつくとモノたちの評価をしてしまう。

そして自分で使うものはミニマルでシンプルなものを好んでいる。

わが家にある掃除機は、充電式でサイクロン吸引の片手で持てるタイプ。ワイフがなんでも乱暴な使い方をする人で、車輪走行式の本体を持つモノだと、壁の角のあちこちにぶつけて、家やクリーナーくんを痛めてしまい、ぼくの心まで痛むのでワンハンドで扱えるものにした。

本当はダイソンのものが良かったのだけれども、またまたワイフが大きくて邪魔とか、なんでこんなに高いの?など文句を言うし、耳まで痛くなるのも嫌なので、シャープの安くてコンパクトなものに決めた。

ちなみに、ワイフなんて普段は言わない。むしろ虫唾が走るのだけれども、毎回、奥さんか嫁さんか配偶者か、ジェンダー問題など気にしながら呼称を迷っていたので、今日、いま、今後はワイフと書くことに決めました。笑

で、掃除機くんの話題に戻しますね。
当初は結構気に入って使っていたのだけど、ある時に致命的な欠陥に気づいてしまいました。

それは何かというと、数秒床から吸引口を離すと止まってしまうのです。そして、再接地して数秒しないと再起動しないのです。

家の中って結構ごちゃごちゃしてて、モノをどかしたり、少し平らでないところに溜まった埃なんかも吸い込みたいところあるじゃないですか。それができない。正確にいうと、センサーがついてるヘッド部分を外して、あまり美しくない接合部分を露出させて、ホースの先端を当てれば、埃を吸い込めます。

なんて不便なんだ。…。ワイフはそんな丁寧に掃除しないので、なんの文句も言わずむしろ気に入って使ってます。が、ぼくは腹立たしいです。

なんでこんな仕様になったのか、設計者の気持ちになって考えた。
たぶんこのタイプの一番の課題は電池の持ち時間なんだろうな。そこで、掃除してないと思われる地面にヘッドが接地してない(浮いてる)状態の時に、無駄な電力を使わないように設計したのではないかな。

というようなことを掃除するたびに思ってて、設計者を恨んだものだった。ぼくの掃除は全く快適ではない。

ある日のこと、TVを流し見していたら、いつの間にか通販番組が始まっていた。少し意識してみるとそこには同じような型のシャープ製掃除機を紹介していた。そして次の瞬間、ぼくは耳を疑った。

「全米で売り上げナンバーワン!」(TV通販のアナウンス)

え、まさか?
こんなに掃除体験をどん底に落とすクリーナーの兄弟が、アメリカでは絶賛されてるですと!?

実際、どういう基準でナンバーワンなのかは不明なのでそれはそうとして、ぼくはすぐに気がついた。

アメリカのように広い家では、細かいところ掃除したりしない。ずっと地面に接着した状態でゴミを吸い込み、広い家の中を移動する。その際にいちいちパワーオフするような細かい動作をしないユーザーが多い市場においては、電池を無駄に消耗しないことこそ命題なんだね。知らんけど。笑

そして3倍以上の市場を持つ米国に照準を合わせて設計されたものが、日本で流用されているっってことなのかも。そう思うと合理的な選択だと思えてきた。ぼくは自分の思い込みを恥じた。たぶん、新たな思い込みの始まりなんだけど。笑

本当のところはわからないけれども、いろんな視点でものをみる大切さを教えてもらえた。
これからはもう少し優しいまなこで掃除機くんをみてあげようと思う。

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