[さめメアSS] プロポーズの言葉をキミに

「おはよう、メア」
背後からの声に、深い藍色の髪の少女が振り返った。メアと呼ばれた少女の視線の先には、中性的な顔立ちをした、白銀に輝く髪の少女が微笑んで佇んでいた。
「今は夜だぞ。いつまで寝てるんだ、ウタ」
軽くため息をついて、メアが少女を見つめる。メアの鋭い視線を意に介さずに、ウタと呼ばれた少女がのんびりとした口調で答えた。
「ごめんね、でもこれだけは言いたくて。それより、どう? 髪。白くしちゃった」
メアはむっとしてウタをにらみつけた。
「我は気づいていたぞ。…黒髪は絶対だから、って言ったよね? でも 似合ってる。ウタ、我は今すぐにでも…お前を 奪い去りたい そう、思ってる」
メアが一歩、また一歩と距離を詰める。心なしか赤みの差した頬に、左右で色の違う瞳が映えて輝いている。ウタも表情を緩めて、柔らかい笑みを浮かべた。
「いくら何でも気が早くない?それに、この姿で会う前から、ボクはメアのものだったと思うんだけどな」
「でも ちゃんと言葉にして欲しい…」
少し手を伸ばせば触れてしまえる距離で、互いに相手の瞳から視線を逸らせずにいた。
「もう、メアはかわいいな。メア、好きだよ」
メアの表情が露骨に不満げになる。少しだけ上目遣いで、メアが拗ねたように答える。
「そこは、愛してる、だろ? 我さ ウタのこと 死ぬまでかわいがってやるから、ウタも…」
「ごめんね、メア。愛してるよ」
ウタがさらりと答える。それでもやはり照れがあるのか、ウタの顔もわずかに上気して見えた。メアは少しだけ唇を緩めたが、それでもまだ不満が残っているようだった。
「足りない」
「愛してる」
「それだけ?」
メアの顔がウタに近づく。ウタは少しためらって、それから覚悟を決めて息を吸った。
「何度言えば分かってくれるの。ボクは死ぬほど君を愛してる。メア。言葉になんてとてもできないよ」
予想以上に真剣な声に、メアは思わず顔を逸らした。耳まで赤くなっているのが分かる。
「ごめん、そんな風に言われると、さすがに 照れる…。ちょっと物足りないと思ったから からかってやろうと思って…」
「ふふ、分かってるよ。でも、さみしい思いをさせちゃったみたいだから、改めて」
ウタの手がメアの頬に触れる。メアがはっとしてウタを見つめると、ウタが手を離した。メアが少し落胆したような表情でウタを見ると、ウタは手を胸に当てて口を開いた。
「宣言。ボクは毎日君を大切にするよ。メア。愛してる。ずっとね」
それを聞いたメアはそれまで以上に顔を赤くして、声にならない声を上げた。しばらくの間照れと格闘して、メアは何とか言葉を絞り出す。
「ずるい…」
「誰彼構わず口説いてるメアよりはまともだと思うんだけどな」
ウタがからかうように答える。
「それならなんで我より手馴れてるんだよ…。もしかして ウタもいろんな人口説いてるんじゃないのか…?」
「そんなわけないじゃん。メアだけだよ」
「いきなり いなくなったりしないよな…?」
「メアが珍しく弱気だ。もしかして、メアの心はもうすっかりボクのものかな?」
メアは瞳に涙を浮かべながら非難するようにウタを睨みつける。
「わかってるくせに…。我の心は ずっと前に ウタに盗まれてるんだぞ」
ウタがメアを撫でながら言う。
「ふふ。やっと素直になったね。ボクは永遠に終わらない、メアだけの泥棒だよ。ずっとメアの心だけを盗み続けてあげる」
「なあ、ウタ。抱きしめていいか…?」
メアが甘えたような声を出す。
「本当に今日は素直だね」
「お前の…ウタの 匂いが好きなんだ。ウタの 体温を感じたい。なあ、駄目か?」
「そんな風に言われて、断れるわけないじゃない。ほら、おいで」
ウタが広げた腕の中にメアが収まる。メアが腕をウタの背に回す。
「あのな ウタ。ずっと言おうと思ってたんだが、その…」
そう言ったきり、ウタの腕の中でメアがもごもごと何かを言おうとしている。それを察したウタがやさしい声で尋ねる。
「ねえ、メア。その先はボクに言わせてくれないかな」
目が合うように体を少しだけ離す。

「メア、ボクと結婚してください」



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12/29 配信での [たった今考えたプロポーズの言葉をキミに捧ぐ]でのお二人の言葉が元ネタです。配信は以下。近々アーカイブ消えるとのこと。

配信で出た言葉は以下。これを極力自然になるように少しアレンジして組み込んでいます。先にアーカイブ見たい方は注意。




うた「僕は永遠に終わらない君だけの泥棒だよ」
メア「愛してる、だろ? 君を死ぬまで可愛がってやるよ」
うた「何度言えば分かるの 僕は死ぬほど君を愛してる」
メア「僕は気づいていたよ 黒髪は絶対だからって言ったよね 君を奪い去りたい」
うた「宣言。僕は毎日君を大切にするよ」
メア「君の匂いが好きだよ 君の体温を感じたい」

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