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リモートワーク歴11年の奇跡と軌跡

Webナイト宮崎 Vol.9 のLTネタとして当日即興で話した内容なんですが、いろんなことを走馬灯のように思い出す良いきっかけになったので、忘れないうちにここにも書いておこうと思ってキーボードを叩いています。

2009年に会社の本店(といってもこの時ほとんど個人でやっていたので、要は自宅)を愛知から岡山に移転しました。それまでは、愛知のクライアントのところに頻繁に訪問しながら様々なシステム開発を請け負っていて、それを家庭の都合で急に「会えなくなるけど仕事だけ続けさせてください」ってお客様のところにお願いしに行ったわけです。今思えば、よく信じて許してくれたな、と思います(感謝)。

その後、試行錯誤しながら、メールを中心に据えつつ、2012年頃までにSkype、Subversion、Cybozu Live(現在はサービス終了)という構成に落ち着いて行った記録が残っています。ちなみに、2020年の現在も同じチームで継続していますが、SkypeはZoomに、SubversionはGitに、グループウェアはなくなって、TrelloとSlackの組み合わせに移行しています。

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今はリモートワークというかっこいい言葉がありますが、当時はなんと呼んでたか記憶が定かではありません。東京や大阪にはコワーキングスペースというのもあるらしいぞ、というくらいの感じだったので、実際は日がな一日家にいてコーディングしたりサーバのメンテをしたり、という状況でした。私は子供が小さかったこともあって、早朝4時ぐらいから仕事をして7時ぐらいに一旦切り上げ、家事をこなしつつ娘を保育園に送り出し、それから再び仕事を始めるというスタイルでした。コードやまとまった文章を書くのはこの3時間が勝負で、日中は電話に応答したり、事務作業を片付けたりするのに使っていました。通勤すらなく、かつ100%デスクワークの問題点は、あっという間に運動不足になってしまうことです。なので、なるべくランチは外に出たりするなど歩く機会を作っていたのですが、平日の昼間から住宅街を若い男性が一人で歩いているのは、傍目には怪しかったのでしょうね…2回ほど2人組の警察官に話しかけられた経験があります。

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リモートワークの「どこでも仕事環境が作れる」という利点を生かして実家に仕事を持ち帰って作業したこともあります。私の実家の父は全く新しいテクノロジーに無頓着でウェブやメールすら使ったことがありません。部屋で仕事をしているから、というのは伝えるのですが、それが外部と繋がっているイメージにどうしても繋がらないようで、「うちの息子は部屋に籠もってパソコンの前でぶつぶつ喋りながら何かしている」と心配を親戚に話していたことがあったようです。心配だけなら良いんですが、緊急対応中に食事が出来たぞ、と呼びにこられて、今手が離せなくてちょっと待って、と返すと、なんだその態度は!!みたいに険悪になってしまうこともあって、実家では無理!という結論に落ち着いています(^^;

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クライアントの環境でも似たようなことはあって、役員クラスの年配の方が(私の父ほどではありませんが)やはりあまりこういったテクノロジーに慣れ親しんでいないためか、先方の担当者とSkypeで通話をしていると、お前は何をやっているんだ、という風に偉い方が突然、パソコンの画面を覗き込んでくる(結果、カメラに大写しになる)ということが何度かありました。

子どもが乱入してくることもありました。今仕事中だから入って来ちゃだめだよ、と言っても物理的に侵入可能であれば子どもは必ず入ってきますし、赤ちゃんを別室に置き去りという訳にもなかなか行かないですよね。

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普段は保育園に預ける訳ですが、熱を出したりすると家に居なければならないため、どうしても色んなハプニングが起こります。軽いものであれば笑って許してくれたり、納期に響くような重い場合でも、一緒になんとかしてくれた相手に恵まれたからこそ続けられたと思います。感謝しきれません。

相手が何をやっているか分からないというのが、仕事を出す側(雇う側)の心理ですから、実際に顔を合わせて何かをやる以上の信頼関係が必要だと思います。しかし、真面目な人ほど、それが気になるので、逆に仕事をやり過ぎてしまうことになるリスクがあると思います。例えば、一緒に8時間、顔を突き合わせて会議しながら「あーでもない、こうでもない」とやっていたら、仮に完全な解決策が見つからなくても、お互い努力したことを分かり合えますが、自宅で8時間、本当に頑張ってもうまくいかなかったら、サボっていたと思われるんじゃないかと心配になりませんか?リモート中心になった頃は、ここが重荷になっていた気がします。うまく実装が進んでいる場合は良いのですが、そうでない時にどう説明したら分かって貰えるかで悩んでしまい、結果として夜も寝る直前まで仕事をしたり休日もずっと作業をしようとしてしまい、生活の全てが仕事になってしまいまっていました

納期に間に合わないプロジェクトに参加した経験のあるエンジニアなら、なんとなく分かって貰えるかな…無理を続けると自分の心身の健康は壊れるし、その他の人間関係もギクシャクしてきます。そうなると、仕事の生産性も上がらない、良いアイデアが出なくなるし、クライアントの要求は厳しくなってくるし、一気にガタガタっと負のスパイラルに陥ります。

子どもと遊ぶ時間、家族と話す時間、自分の好きなことに没頭する時間などをクライアントとの打ち合わせや大切な会議と同じくらいの優先度でスケジュールに入れるようにして、どの時間も同じように全力でそのことに向き合うようにしました。何もしない、と決めたら、余計な心配はせず、ひたすら何もしない!これはある種の精神修行ともいえるくらい難しい部分もあるかもしれません。リモートワークに限らずエンジニアとしてうまくキャリアを積んでいる人はこのバランスが良いイメージがあります。

発表の中でも紹介した書籍のリンクを最後に掲載します。

 僕らの会社で、全員が顔をあわせるのは年に3回だけ

大事なのは「今日なにをやりとげたか?」ということだけだ。
何時に出社して何時に帰ったかは問題じゃない

世の中には、100%いいことも、100%悪いこともない

(蛇足1)この文章の途中から赤ちゃん(7ヶ月)を膝に抱っこしながら Google Docsの音声入力を使って入力したものをnote(ここ)に貼り付けて書いています。後からキーボードで推敲してはいますが、かなりの精度で認識して文章にしてくれるようです。談話が得意な人なら、文字おこしとして実用的なレベルだと思います。

(蛇足2)今も赤ちゃん居るのに、10年前も子育て?とか、なんか時系列が合わないところがあるかと思いますが、人生3周目のためです。思えば長く生きたもんだ…。アイキャッチの写真は、当時の作業部屋から見える夜明けの風景。


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