見出し画像

Excelで案件管理を行うようなシステムを作成してよいのか?

この度、私は以下のようなExcelの本を執筆いたしました。

Excelで“時短”システム構築術――案件管理の効率化を簡単に実現しよう!

Excelで“時短”システム構築術――案件管理の効率化を簡単に実現しよう!

この書籍ではExcelで案件管理の仕組みを作成する方法を解説します。

この書籍で、Excelで案件管理システムを構築しようと思った時、実は、私はまず不安と疑念に包まれました。Excelは表計算ソフトです。案件管理は計算ではないので、常識的にはプログラミングやデータベースソフトで作るものなので、成功することは難しいのではないかと思っていました。

しかし、実際にその仕組みを作成してみると、Excelは初心者にも優しいツールで、驚くほど多くのことを実現させることができました。この記事では、私が思った不安や課題、そしてExcelでシステムを構築する楽しさについてお伝えします。

Excelでシステムを作成していいかどうか、課題はいくつもあります。しかし、ぜひExcelの新しい可能性に目を向けてみてください。

Excelとはそもそも何ができるのか

Excelではどんなことができるのでしょうか。

Excelはそもそも表計算ソフトで計算が得意です。計算式をコピーして大量の計算を行ったり、集計を行ってデータ全体を見やすくまとめたりすることもできます。計算結果はグラフにまとめ見れば一発でどんな傾向があるのかわかります。

しかし、実際にはそのような操作より、一覧表を用意して、いつ入金されたかなどのチェック表として使うような、計算とは違う使い方が多いです。今回の案件管理もそうです。

Excelは本来、一覧表管理をするものではないと考えていますが、しかし、それは十分にExcelでできることのひとつで、世の中でもその使い方がされています。

私自身、どうしてもその違和感が拭えずにいました。しかし、Excelバージョン2007にテーブル機能が搭載されると、私の考えは一変します。テーブル機能はExcelで一覧表を管理する機能であり、データベースのように扱うことができるからです。

それまではExcelは計算として使いなさいとMicrosoftに言われている気がしました。正式に機能として一覧表管理に特化した機能が搭載されたので、そこで、Excelで一覧表管理をしてもいいのだと思えました。

なぜExcelでシステムを作成する道を選ぶのか

今回のような案件管理の仕組みを作成するには、Excelの他にも様々な方法があります。特に案件を管理するような一覧表を扱ってデータ内容を管理していくならAccessを思い浮かべるのが妥当です。Accessはデータベースソフトと言われ、一覧表を安全に管理できます。また、フォームという操作画面をオリジナルで作成でき、とても柔軟なシステム作成ができます。

もう一つの方法として、プログラムで作成するというのが挙げられます。こちらは自分の好きなようなものが好きなように作成できるという自由度があります。

それらに対し、Excelで作成するメリットはなんでしょうか。

プログラムでは、表示画面でさえ自分で作成しなければなりません。Accessも細かい設定をしないと案件管理くらいの仕組みは作成できません。このようにAccessやプログラムでは、作成するのに時間と手間がかかります。その代わりデータを安全に保管したり、完全に思い通りの仕組みを作成できたりします。

Excelはそれらの方法よりも手軽で、画面の用意もセルを表示画面や入力に使えば、特にそれらを作る必要はないのです。セルには入力規則を設定すれば誤ったデータを入力しない仕組みを作ることができます。

このようにExcelはセルを活用することで入出力をする仕組みを簡単に作れ、すべてのデータもテーブルに保管するようにすれば、VLOOKUP関数でテーブル同士を連携でき、またSUMIF関数のような集計関数を使えば、ひとつの画面にすべてのデータを集約することも簡単にできます。

このことから、Excelでこのような仕組みを作成していくことも選択肢には十分入ると思いました。

しかし、Excelは、結局はセルにデータや計算式が入るもので、万が一、無意識にキーボードを触ってしまっただけで入力されているデータを壊し、また、入力されている計算式が壊れることがあります。また、ネットワーク上にあるExcelファイルを一人の人が開いていると他の人は開けなくなります。このような十分考慮した作り方の選定が必要です。

自動化の要であるマクロ

Excelを使った自動化において、不可欠なツールがマクロです。マクロは、作業手順を録画して、その後再実行できるスクリプトとして保存することができる機能です。具体的な操作やデータ処理を自動化するために、マクロは頼りになる存在です。

マクロの記録はExcelが自動的にVBA(Visual Basic for Applications)コードとして保存します。VBAは、プログラミング言語であり、これを駆使することで、Excelの機能を自在に拡張できます。要するに、Excelの限界を超え、特定の業務プロセスやユーザー体験を最適化できるのがVBAの強みです。

ただし、マクロの記録だけでは、すべてのケースに適用することは難しい場合もあります。Excelの自動記録は、操作の流れを単純に再現するだけで、複雑な業務ルールや条件には対応できません。ここでVBAの登場です。VBAを使えば、独自のロジックを組み込み、データ処理やタスク実行の柔軟性を高めることができます。

しかし、マクロの記録を改造しようとすると、自動記録されたコードを解析する必要があるため、面倒な作業となります。最終的に改造できなかったということもあるので、そのような変更が必要な際には、ゼロからVBAコードを作成する方が効率的かもしれません。マクロの記録機能は、基本的な操作を自動化するのに向いていますが、複雑な自動化にはVBAの力が必要です。

マクロの記録とVBAの活用を検討する際、まずはExcelの標準機能を最大限に活用し、自動化できる部分を見極めることが大切です。それによって、より迅速なシステム開発が可能になります。

スピルの有効活用

近年のExcelの進化には目を見張るものがあります。その中でも、スピル(Spill)機能は、大規模なデータセットを処理する際に驚異的な効率を発揮します。スピルは、データの絞り込みや抽出を行うための新しいアプローチで、従来のフィルタリングとは一線を画します。

スピルを使用することで、数万行、数十万行といった膨大なデータを瞬時に処理できます。これは、大規模データの分析や報告を行う際に非常に便利です。スピルを使えば、データを直感的に操作し、必要な情報を迅速に取得できます。

また、スピルはExcelのテーブル機能と組み合わせて最大限に発揮されます。テーブルを使えば、データの整理や管理が効果的に行え、スピルを活用した一覧表操作がさらに容易になります。これにより、Excelはビジネスニーズに迅速に対応し、生産性向上に貢献します。

これらの新機能を駆使することで、Excelを使ったシステム開発が従来のイメージを超えて効果的かつ効率的に行えることが証明されました。

まとめ

Excelでのシステム構築に関する疑念や不安が初めにありましたが、実際に手を動かしてみると、Excelが初心者にも親しみやすく、驚くべきことができるツールであることが分かりました。この記事では、Excelでシステムを構築する際に私が直面した不安や課題、そしてExcelの新たな可能性に焦点を当てました。

Excelはもともと表計算ソフトウェアですが、テーブル機能やスピル機能など、一覧表の管理に特化した機能が搭載されています。これにより、Excelは一覧表管理を効果的に行うための強力なツールとして活用できます。

なぜExcelを選ぶべきかについても考えました。他の方法と比較して、Excelは手軽で使いやすく、特に画面の設計やデータ入力において優れた柔軟性を持っています。セルを活用することで入力規則を設定し、データを安全に管理できます。また、VLOOKUPやSUMIFなどの関数を駆使してデータを集約することも容易です。

自動化のためにはマクロが不可欠であり、マクロを記録することで基本的な操作を自動化できます。しかし、複雑な自動化が必要な場合にはVBAの力が必要となります。マクロの記録とVBAを組み合わせて、作業効率を向上させましょう。

最後に、Excelの新機能であるスピルについて触れました。スピルは大規模なデータセットを効率的に処理できる優れた機能であり、テーブルと組み合わせて活用することで、Excelはビジネスニーズに応える優れたツールとなります。

Excelでシステムを構築することは、その使い方次第で非常に効果的であり、新たな可能性を広げることができることが分かりました。ぜひExcelの新しい側面に目を向け、自分のプロジェクトに活かしてみてください。Excelはあなたの強力な味方となることでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?